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《防災のプロが教える「防災リュック」に用意したいもの》水や食料は半日から1日分でも充分、「1回分の着替え」や「モバイルバッテリー」も入れておくべき 

本当に必要な防災グッズとは(写真/イメージマート)
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「災害は忘れた頃にやってくる」というが、忘れる暇もないほどに全国各地で地震や豪雨などの自然災害が絶えない。規模の大小はあれど日本に住んでいる限り、自然災害から逃れることはできない。不安を軽減してくれるのは平時の備えだ。現場を知るプロが選定する「本当に必要な防災グッズ」を紹介する。【前後編の後編。前編から読む

防災リュックに入れておくべきもの

災害時に必要なものを詰め込んだ防災リュックは、ホームセンターやネット通販でも販売されている。自宅を離れ、避難所に向かう際に必要だが、防災アドバイザーの岡部梨恵子さんは入れておくものは最小限で構わないと話す。

「防災リュックが重すぎて、東日本大震災で津波が来たときに走れず、流されてしまった人がいました。

避難所に着くまでの間を生き延びることができる、半日から1日分の備えがあれば充分です。ペットボトルなら夏場は500mlを2〜3本、食料はブロックタイプの栄養調整食品など手軽に栄養がとれるものを入れておきましょう」

食料のほか、1回分の着替えも入れておくのが望ましい。備え・防災アドバイザーとして活動する、ソナエルワークスの高荷智也さんが解説する。

「着替えやタオルを濡れないようにビニールに詰めて、入れておくべきです。豪雨の後、服が濡れたままでいると気化熱で体温が奪われ、夏場でも凍死するリスクがある。両手が自由になる雨具としてレインウエアや、防寒のためのアルミブランケットも推奨します」

防災講師・防災コンサルタントの高橋洋さんが入れているのはモバイルバッテリーだ。

「太陽光で充電できるモバイルバッテリーがあれば、停電時でも安心してスマホが使えます。災害時にスマホを懐中電灯の代わりにする人がいますが、電池の消耗が早まってしまいます。大事な通信手段を充電切れにしないために、コンパクトな懐中電灯も入れておくべきでしょう」

モバイルバッテリーがあれば停電時でも安心してスマホが使える(写真/イメージマート)
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防災リュックは、廊下や玄関など逃げ道になる場所に置くようにする。

「わが家はマンションで、玄関から逃げることが想定されるため、玄関のシューズボックスの上に置いています。基本的に玄関の目立つ場所が最適と思いますが、置き場がない場合は玄関に近い部屋に置くようにするといい。くれぐれも押し入れの奥には入れないでください」(岡部さん)

防災用品には使用期限や消費期限があるが、点検はどのタイミングで行えばいいのだろうか。高橋さんが、効果的な方法を伝授する。

「備蓄していた食料が、消費期限切れだったという話はよく聞きます。9月1日の防災の日、3月11日の東日本大震災の日など、決まった日に期限を確認する習慣をつけたいものです。または、テレビで災害のニュースを耳にしたら、意識するよう心がけましょう」

家具転倒防止器具や非常食、衛生用品が売れ筋

防災用品をまとめてそろえるなら、ホームセンターに足を延ばそう。近年の防災意識の高まりで品ぞろえも豊富だ。全国に259店舗をかまえるカインズでは、店内でスタッフのアドバイスを受けながら品物を選ぶことができる。同社広報の田部井快さんに売れ筋の商品を聞いた。

「日頃の防災の基本となるのが、被害の拡大を防止する道具と、長期間にわたって保存できる非常食です。壁に穴を開けずに家具の転倒を防止できるポールは、賃貸住宅にお住まいのかたにもおすすめです。割れた窓ガラスが飛び散るのを防ぐ防災フィルムや、養生テープもニーズがあります。

カップラーメンや缶詰を備えているかたは多いと思いますが、手軽に補給できるごはんや、長期保存が可能でワンハンドで食べられるようかんなどの非常食も需要が高いです。また、ランタンやシュラフなどのキャンプ用品をそろえておけば、普段はアウトドアを楽しめるうえ、災害のときにも活用できます」

ペットを家族の一員として考える人が増え、ペットと一緒に避難ができる折り畳み式のキャリーも人気だ。

ペットと一緒に避難ができる
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また、非常食と並んで需要が高いのが衛生用品。田部井さんが言う。

「断水の際に欠かせないのが非常用トイレ。水なしで使えるドライシャンプーもあります。カインズでは、防災準備に役立つ情報をまとめた『防災BOOK』を店内で配布しています」

カインズで売れ筋の防災グッズ25を表にまとめたのでぜひ参考にしてほしい。

救助が来るまでの間は、家の備蓄か、避難所にある防災用品で乗り切りたいが、物資が不足することはままある。そんなときは、身の回りの品物を上手に活用したい。高荷さんが言う。

「ビニール袋やゴミ袋は非常用トイレで用を足す際にも使えますし、ゴミをためるうえでも便利。防災リュックに入れる防災用品は、あらかじめビニール袋で包んでおくといいでしょう」

日用品の中でも特におすすめなのが、居間や台所にあるウエットティッシュだ。

「断水したときや、配水管が壊れて手を洗えない場合に役立ちます。体をきれいにできるだけでなく、災害時はこまめに手を拭かないと感染症にかかりやすい。

アルコール入りは手の消毒に、ノンアルコールは体を拭く用にと使い分けると安心です」(岡部さん)

日頃から防災意識を高めておけば、有事の際に慌てずにすみ、自分や大切な人の命を守ることにもつながる。9月1日の防災の日を前に、備えを見直したい。

本当に役立つ防災グッズ
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本当に役立つ防災グッズ
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(前編から読む)

※女性セブン2025年9月11日号

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