
時折吹き抜ける潮風で、厳しい残暑に一時の涼を感じる神奈川県内の古刹。その一角に立つ立派な墓石の前に、故人が生前に愛飲したシャンパンのボトルが置いてある。色あせたラベルが供えられてからの月日を物語り、その傍らには、1脚のシャンパングラスが寂しげに転がっていた──。
ここには、昨年9月3日に亡くなったピーコさん(享年79)が眠っている。ピーコさんの関係者が静かに口を開く。
「亡くなってからちょうど1年が経ちましたが、お寺に一周忌法要の連絡は、誰からもなかったそうです。弟のおすぎさん(80才)は施設に入っていると聞いていますし、準備する人がいなかったからでしょう。おすぎさんはピーコさんのお墓参りすらできていないようなので、法要があっても足を運ぶのは難しかったでしょうね」
おすぎはピーコさんにとって唯一の肉親。そしてこの寺院は、おすぎとピーコさん家族や親族たちの菩提寺である。
「2人ともお墓参りを大切にされていて、以前は家族の命日やお彼岸の時期になると、墓花を手に2人そろってよくお墓参りに見えていました。その光景を見ていただけに、いまの状況はとても寂しく感じるんです……。ピーコさんとおすぎさんにはお子さんがいないので、お墓を守る人がいない。いずれは合葬ののち合祀する形で“墓じまい”をすることになるかもしれません」(寺の関係者)
合葬とは墓から骨壺を取り出し、他人の骨壺と一緒に供養すること。合葬後は一定の期間を経て、骨壺から骨を取り出し複数の遺骨と一緒に埋葬する。これを合祀というが、継承者のいない墓は最初から合祀されることもあるという。

「おすぎとピーコ」のユニットで人気を博した2人だったが、最後は寂しい別れだった。
70代半ばでともに認知症を患い、一時は支え合おうと横浜市(神奈川県)にあったおすぎ名義のマンションで同居したものの、けんかが絶えず別々の施設に入所した。
「症状の進行が速かったのはおすぎさん。ピーコさんが亡くなったときには、兄の死を理解することができないほどでした。葬儀では喪主を務めましたが、参列することはできませんでした」(おすぎの知人)
おすぎは現在、当初入所した施設から、神奈川県内の温泉地にある施設に移った。
「おすぎさんには、身の回りの世話をしてくれる旧知の男性がいます。温泉地は、その男性のゆかりの土地だそうです。かつて暮らした思い出の横浜市からも、ピーコさんや家族が眠る菩提寺からも距離のある場所ですが、穏やかな生活を送っているようです。
旧知の男性とは別に成年後見人もついているので、墓問題もそうですが、財産などは成年後見人が対応することになるとみられています」(前出・おすぎの知人)
5分早く生まれたピーコさんは、いつもおすぎを気にかける弟思いの兄だった。芸能界での華やかなイメージとは真逆の寂寥の一周忌だったとしても、弟の平穏な暮らしに目を細めていることだろう。
※女性セブン2025年9月18日号