税務申告しづらい金品が預けられている
母子家庭で育った山崎被告は、短大卒業後の1999年に三菱UFJ銀行に入行。テニスを共通の趣味とする資産家の元夫との結婚生活は子宝に恵まれなかったものの、金銭的には何不自由ない暮らしだったはずだが、事件発覚後に離婚を余儀なくされ、職だけでなく家族も失った。
そんな彼女が裁判で多くを語ったのが、四半世紀にわたって勤務した銀行への愛着だった。
「被告人質問では、『私はこの銀行に関しては25年働いて好きだった』と発言。『UFJは客と社員を大事にする銀行です』とも語り、あふれる“UFJ愛”を隠しませんでした。借金苦に陥った際、個人再生を選択したのも、自己破産したら銀行で働けないからだったそうです」(前出・全国紙社会部記者)
しかし、当初は「銀行の金には絶対に手をつけない」というポリシーがあった山崎被告も、追い詰められた末に、禁忌を破ってしまう。

背景には貸金庫特有の事情も垣間見える。
「あくまで一部の話ですが、銀行の貸金庫には、税務申告しづらい類の金品が預けられるケースもあるという実情があります。顧客としてはいちいち記録に残したくないので貸金庫を利用している面があり、銀行側も何が入っているか正確に把握しにくく、顧客の自己申告だけで中身を証明するのは難しい。そうした裏事情についても、業界に詳しい山崎被告は計算していたことでしょう」(金融業界関係者)
顧客からの申し出があるまで山崎被告の犯行に気づかなかった三菱UFJ銀行は、事件を機に貸金庫業務からの撤退を含め検討。現状では、業務は継続するものの、現金の保管は禁止する方針を打ち出している。
「信頼回復を急ぐ三菱UFJ銀行ですが、今回の貸金庫事件が発覚したのと同時期に、新潟支店の行員が顧客から約4000万円を搾取し、今年6月に起訴されたことも明らかになりました。
法廷では『私のような悪人ひとりのために、UFJを悪く思わないでください』という山崎被告の訴えも飛び出しましたが、大手銀行として、一度失った信頼を回復するのは容易ではないでしょう」(別の捜査関係者)
ちなみに、顧客から盗んだ金品を山崎被告が弁済する見込みはないという。
※女性セブン2025年9月18日号