
東京・代官山の住宅街にある『TACUBO』は、ミシュランで星を取り続けるイタリアンの名店。素材を活かした美食の数々は、多くの食通に支持されている。今回はシェフが家庭でも作れるレシピを特別に考案。オーナーシェフの田窪大祐さんが教えるパスタの極意やレシピ、矢島直樹さんが教えてくれた前菜レシピをチェックしよう。
イタリアンに欠かせないパスタの極意
『TACUBO』のスペシャリテといえば、ボロネーゼに代表されるパスタ料理。イタリアンの定番ながら奥が深い料理を、おいしく仕上げるポイントを聞いた。どれも家庭で簡単にマネできる、プロならではのワザばかり!田窪さんが伝授する。
パスタはたっぷりの湯でゆでなくてよし
「『パスタはたっぷりの湯で、泳がせるようにゆでる』というのは昔の話。泳がせるとパスタの表面が削れて、ドロッとしてしまいます。ゆでるときの火加減も、“ボコボコ”と沸騰させるのではなく、“ぐらぐら”程度でOK」(田窪さん・以下同)

家庭で作るならパスタは“テフロン”がおすすめ
「パスタには、表面がつるつるした質感のテフロンタイプと、ざらざらした質感のブロンズタイプの2種類があります。ブロンズタイプはドロッとした仕上がりになりやすいため、家庭では扱いが難しい。あっさりと仕上がり、いろいろなソースに合わせやすいテフロンタイプ(『バリラ』など)がおすすめです」
素材の味をしっかり引き出したら水を加えて、パスタに“だし”を吸わせる
「素材本来の味を活かせば、シンプルな調味でも豊かな味わいになります。そのためには、まず、食材を充分炒めて旨みを引き出すこと。その後水を加えて、旨みが溶け込んだ“だし”をパスタにしっかり吸わせると、味わい深く仕上がります」

ワンパンで作るならショートパスタ
「ワンパンで作るなら、ペンネなどのショートパスタを使うのがおすすめ。具材とパスタを一緒に煮込むと、パスタが煮汁を吸いがちなのですが、ショートパスタなら多少水分量が多くなってもおいしく仕上がります。加熱具合に神経質にならなくてよい点でも作りやすいですよ」

“おまじないの塩”で食材の旨みを出す
「野菜などの素材を加熱するときは、火にかける前にほんの少しの塩を振ります。こうすると、素材からほどよく水分が抜けて、旨みが引き出されるんです。厨房ではもはや当たり前のひと手間になっているため、 “おまじないの塩”と呼んでいます」
「くたくたブロッコリーとはまぐりのペンネ」のレシピ
はまぐりのだしとソース状のブロッコリーがパスタに絡む。
「具材とパスタを一緒に煮込むワンパンパスタは、具材の旨みをパスタにしっかり吸わせられるのがメリット。煮込む間にテクニック不要でソースが乳化してくれるのも、作りやすさのポイントです」(田窪さん)

《材料》(2人分)
ペンネ…100g ブロッコリー…140g はまぐり(またはあさり)…200g にんにく…4g (好みで)赤唐辛子…1本 塩…適量 オリーブオイル…10g(大さじ1弱)
《作り方》
【1】ブロッコリーは細かく刻み、にんにくはみじん切りにする。
【2】フライパンにオリーブオイル、にんにく、赤唐辛子を入れて火にかける。にんにくが色づいてきたらブロッコリー、はまぐりを加えてさっと炒める。
【3】水500ml(分量外)を加え、煮立ったらペンネを加えて袋の表記時間煮る。途中ではまぐりの殻を取り除く。
【4】水分量と塩味を調整し(水分が多ければ煮詰め、足りなければ水を適宜足す)、ペンネに均等に熱が入るように混ぜながら加熱する。
《Point》
具材は煮汁から出ないようにしっかりひたす。

「こうすることで、具材の旨みがしっかり煮汁に移ります」(田窪さん)

「水を足す際は、鍋中の温度が急に下がらないように少量ずつ加えて。可能なら、湯を足すのがベター」(田窪さん)
「マッシュルームのクリームパスタ」のレシピ
きのこの旨みを最大限に活かした濃厚ソース。
「旨みの強い食材を使えば、市販の調味料を使わなくても味わい豊かなクリームソースが作れます。パスタにしっかりだしを吸わせてから、生クリームを加えます。加えた後は加熱しすぎず、手早く仕上げましょう」(田窪さん)

《材料》(2人分)
スパゲッティ(ゆで時間9〜10分のもの)…150g まいたけ…50g しめじ…50g ブラウンマッシュルーム…50g 薄切りベーコン…25g 生クリーム…90ml バター…12g オリーブオイル…10g(大さじ1弱) セージ(またはローズマリー)…適量 チーズ(あればグラナ・パダーノ)…17g 粗びき黒こしょう・塩…各適量
《作り方》
【1】まいたけは食べやすい大きさにほぐし、しめじは小房に分け、マッシュルームは薄切りにする。ベーコンは5mm幅に切る。
【2】フライパンにオリーブオイルを熱し、ベーコンを入れてカリカリになるまでじっくり炒める。きのこ類をかぶせるように加え、しんなりするまでしっかり炒める。
【3】鍋に湯を沸かして1%量の塩を加え、スパゲッティを袋の表記時間より30秒短くゆでて湯を切る。
【4】【2】に水100ml(分量外)を加えてなじませ、【3】を加えてスパゲッティに煮汁を吸わせながら混ぜる。
【5】生クリーム、バター、チーズ12g、セージを加えて混ぜ、水分量と塩味を調整する(水分が多ければ煮詰め、足りなければゆで汁を適宜足す)。器に盛り、チーズ5g、粗びき黒こしょうをかける。
《Point》

「きのこは、水分が抜けてしんなりするまで炒めます。ここに水を加えたら、それが旨みたっぷりの“だし”になります」(田窪さん)