健康・医療

《秋は腸が砂漠化する?》便秘悪化&放っておくと大腸がんリスクも 「砂漠腸」をもたらし、悪化させる“3つの生活悪習慣”や“予防策”を医師が解説

便秘の女性
秋の便秘の理由は、腸が水分不足で“砂漠化”しているから(写真/イメージマート)
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気温の高低差で体温調整が難しい秋は、便秘に悩む人が増えるという。主な理由は、腸が水分不足で“砂漠化”しているから。放っておくと、慢性的な腸内環境の悪化をもたらし体や心の不調を招く恐れも。あなた、腸がカラカラの乾燥状態かもしれませんよ!?

まずは腸の状態をチェック!

下記の項目に6個以上あてはまった人は、腸がカラカラ状態。さっそく本企画を読んで腸内環境を改善しよう!

□小食だ
□野菜はあまり食べない
□果物はあまり食べない
□外食が多い
□水分の摂取量が少ない
□1日3食摂らない
□朝食を摂らない
□食後、下腹がぽっこり出る
□食事量は多くないのになかなかやせない
□ダイエットをしても下腹は凹まない
□お腹がすっきりしない
□体が重く感じる
□便が出ても爽快感がない
□便秘気味だ
□体を動かす習慣がない
□ストレスを感じることが多い
□汗をかきやすい

腸の状態をチェック
腸の状態をチェック
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腸の水分が失われ便秘が悪化

腸の砂漠化について、便秘に苦しむ患者を多数診察する医師の松生恒夫さんが解説する。

「摂取した水分はほとんどが大腸に届き、便などで排出されると思っている人が多いのですが、それは間違いです。たとえば2リットルの水を飲んでも、便とともに排出される水分はわずか40mlほど。しかも、急に気温が低下したことで水を飲む回数が減り、腸に水分が届かず、排便時に必要な水分がさらに減少し、より便が硬く、排出しづらくなります」(松生さん・以下同)

松生さんの患者をみても、1日の中の気温差が10℃くらいあると、便秘がひどくなる人が増えるという。

「しかも、年齢を重ねるほど、のどの渇きに鈍感になってあまり水分を摂らないばかりか、腸の動きも弱まるので悩む人が増えることを実感しています」

下記の「消化・排泄のシステム」をみると、1日に、腸管(食道、胃、小腸、大腸)に入る水分量は約9リットル。その内訳は、約2リットルが食事や飲料など口から入る水分で、残りの約7リットルは消化液となる。

消化・排泄のシステム
消化・排泄のシステム
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「この水分がどう使われるかというと、なんと98%以上(約8.9リットル)が小腸と大腸で吸収され、排便に回るのは2%足らず。前述のように、いまの季節は腸内が水分不足状態となりやすく、便が硬くなって停滞してしまうのです」

「砂漠化」が進むと大腸がんのリスクも

「本来、大腸の中は泥状の『食べかす』で占められており、S状結腸で初めて固形の便になる。しかし、腸の水分が不足すると、泥状の食べかすがS状結腸手前の大腸内で固形化し、排出できずに漂ってしまう。イメージとしては、干からびた食べかすが腸内にバラバラにたまっている…。砂漠化した腸とはそんな状態です」

「砂漠腸」になる要因は、いくつかある。

「1つは、食欲不振やダイエットで食事量が減ることによる水分不足です。食が細ることで食物繊維の摂取量も減少するため、便の量も減る。すると、ますます排出が困難になります」

もう1つは「腸冷え」だ。日本気象協会によると、10月に入っても厳しい残暑が戻る日が見込まれているが、気温差に加え、急に寒さを感じる日が増えてくると、“腸の秋バテ”で血流が低下し、腸が冷えてしまうという。

「その状態が続くと、便秘や腹部の膨満感に加え、大腸内にガスがたまり、胃を圧迫して胃炎や逆流性食道炎を引き起こすことも。冷えることで蠕動運動も低下して、便がたまって砂漠化が進行します。

肥満ではないのに下腹部だけぽっこりと出た体形になるのも特徴です」

単なる便秘と放っておいてはいけない。

「この状態が長期にわたれば老廃物が腸内にたまり、最悪の結果として大腸がんを引き起こす可能性も考えられます。便秘に悩む女性は大腸がん罹患リスクが高く、がん死亡要因のトップですから注意が必要です」

腸の砂漠化
腸の砂漠化は放っておいてはいけない(イラスト/はまさきはるこ)
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少しでも不調を感じる人は、すぐに腸を潤す対策を施す必要がある。

「砂漠化をもたらし、悪化させる生活“悪”習慣は3つ。

まず、不規則な生活。朝食を抜いたり、睡眠不足が続いたりすると腸のリズムが乱れます。1日3食規則正しく食事できる生活を送ることが望まれます。

次にストレス。強いストレスは腸の動きを鈍らせます。つらいときは、リラックスモードに入りやすい音楽を聴くなど、ゆったりと過ごすことをおすすめします」

3つ目は運動不足だ。夏の間、涼しい室内にばかりいた人は腸の働きが弱くなっているため、涼しくなったこの時季は、積極的に体を動かそう。また、毎日湯船につかってお腹を温めることも心がけたい。

秋に腸が“砂漠化”する要因

・発汗などによる水分不足

発汗などによる水分不足
発汗などによる水分不足(イラスト/はまさきはるこ)
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・食が細くなる

食が細くなる
食が細くなる(イラスト/はまさきはるこ)
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・屋内と屋外の温度差

屋内と屋外の温度差
屋内と屋外の温度差(イラスト/はまさきはるこ)
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砂漠化を予防するためには、これらの悪習慣を絶つとともに腸内環境を改善してくれる食べ物を摂ることだ。

「腸内環境は、【1】腸にいい食品と食材、【2】腸管機能(腸の働き)、【3】腸内細菌叢(腸内フローラ)の3つの要素で成り立っています。これらが整って、初めて腸内環境が改善したといえます」

【1】を実践すると、必然的に【2】と【3】も向上する。まずは、【1】の腸にいい食品の摂り方を学んでいこう。

腸を「オアシス化」に導く食品

腸を潤すには水分を多く摂るのが第一。そこで、松生さんが推奨する腸に効果的な飲み物が「スーパーペパーミントティー」。ペパーミントティーにオリゴ糖とレモン果汁、しょうがを合わせたドリンクだ。

ペパーミントティーにオリゴ糖とレモン果汁、しょうがを合わせ
ペパーミントティーにオリゴ糖とレモン果汁、しょうがを合わせる
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「ペパーミント(日本ではハッカ)に含まれるメントールには、お腹にたまったガスを排出する作用があります。緊張を抑える効果もあるため、心身のリラックスにもつながります」

1日1ℓで腸が潤い元気になる!「スーパーペパーミントティー」レシピ

スーパーペパーミントティー
スーパーペパーミントティー
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≪材料≫1日分

湯…約1L ペパーミントティー(ティーバッグ)…1個 ※スパイスのミント、茶葉の場合は小さじ1 レモン果汁…大さじ1〜2 しょうが(チューブのもの)…1〜2cm分 オリゴ糖(市販のシロップ状のもの)…適量

≪作り方≫アイスでもホットでもOK

【1】1リットルの湯にミントティーを入れ、抽出する。

【2】ピッチャーやボトルに【1】のお茶を移し、レモン果汁、しょうが、オリゴ糖を加えてかき混ぜる。

出典:『スーパーペパーミントティーでお腹すっきり』(シロクマ社)

お茶に加えるレモンは、便秘薬にも配合されるマグネシウムなどのミネラル類が含まれ、血管を広げる作用も。また、しょうがには体を温め、腸管の動きを活発にする作用がある。

「そして、生きたまま大腸に届き、腸内で善玉菌であるビフィズス菌のエサとなるオリゴ糖は、積極的に摂ってほしいですね」

食べ物では、「水溶性食物繊維」や「発酵食品」がおすすめだ。

キウイは水溶性食物繊維が豊富
キウイは水溶性食物繊維が豊富
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「前者はキウイやスーパー大麦を、後者ならみそや甘酒、漬けものなどを摂るといいですね」

(※スーパー大麦とは、オーストラリアで開発された機能大麦で、通常の大麦の約2倍の総食物繊維が含まれる。大手スーパーやネットショップで購入できる)

これらの食材の効能について、管理栄養士の松田真紀さんに聞いた。

「食物繊維には、水に溶けやすい『水溶性食物繊維』と溶けにくい『不溶性食物繊維』があります。不溶性食物繊維はお腹の中で“かさ増し”されるため、水分不足の腸に入ると便秘が悪化してしまいます。野菜、豆類、穀類全般が不溶性のため『砂漠腸』で便秘気味の人がサラダばかり食べるのは逆効果だと思います。

一方の水溶性食物繊維は、『発酵性食物繊維』とも呼ばれています。善玉菌を増やし、腸の蠕動運動を促す働きがあるほか、悪玉菌の増殖を抑え、体脂肪の低減やエネルギー消費量の向上にも役立つといわれる『短鎖脂肪酸』も産生される。腸内環境の改善に最適な食品群です」(松田さん・以下同)

水溶性食物繊維は血糖値やコレステロール値を下げる働きもある。代表的な食品群はキウイやバナナ、オリゴ糖、麦類、海藻類などがある。

「発酵食品も善玉菌を増やして腸内環境を整える、腸活食品の代表格です」

ぬか漬けは伝統的な発酵食品の1つ
ぬか漬けは伝統的な発酵食品の1つ
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朝食に納豆や漬けもの、みそ汁を摂り、秋バテ気味のときは甘酒を飲んで疲労回復をはかる。かつての日本人の食生活は、理想的な腸活メニューなのだ。

甘酒はオリゴ糖が豊富で腸冷え対策にも◎
甘酒はオリゴ糖が豊富で腸冷え対策にも◎
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冷たいものも一工夫で「腸冷え」を防げる

冷えは砂漠腸の大敵。わかっていても、秋バテで食欲不振になりがち。つい、冷たい麺やサラダなどですませてしまう日もあるが…。

「冷たいものを食べるときは、体を温める食材を加えて『相殺』すればいいのです。

たとえば、きゅうりやトマトなどの生野菜は体を冷やすといわれる一方、消耗した体をクールダウンし、疲れを取ってくれる働きもある。何より水分が多いので、腸が渇いている人にはうれしい食材です。そのメリットを生かしながら冷えないようにするには、ぬか漬けやもろきゅうなど、体を温める発酵食品を組み合わせて冷えを補うのです。

冷たい飲み物なら、真水よりミネラルが入った麦茶や黒豆茶を。アイスコーヒーとアイスティーなら、体を冷やす作用が少ないアイスティーの方を選び、シナモンやしょうがを加えて補いましょう」

冬に砂漠腸を持ち越さないよう、腸に潤いを与えよう。

◆松生クリニック院長・松生恒夫さん

医学博士。5万件以上の大腸内視鏡検査を行ってきた腸疾患治療の第一人者。「腸の砂漠化」という言葉の生みの親でもある。最新著書に『スーパーペパーミントティーでお腹すっきり』(シロクマ社)。

◆管理栄養士・松田真紀さん

日本抗加齢医学会認定指導士。兵庫県神戸市で発酵デリ専門店「hakko matsuda slowfood okamoto」を経営する。

取材・文/佐藤有栄

※女性セブン2025年10月16・23日号

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