健康・医療

《他のきのこにはない成分に注目》冷え対策、血糖値を下げる、腸活にも!「まいたけ茶」のパワーと作り方を解説

お茶を飲むシニア
注目の健康食材「まいたけ」の栄養素を手軽に(写真/PIXTA)
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うだるような暑さがようやく去り、食欲の秋がやってきた。つい食べすぎてしまったり、急な涼しさで体調を崩してしまったりするなら、いまが「旬」の最強食品を試してみては? 食べすぎの不調も寒暖差の不調も一掃してくれる、ひと粒で何度もおいしいスーパーフードをめしあがれ。

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秋の味覚の代表格であるきのこ類は、鍋料理や炒め物、炊き込みご飯、パスタなど、どんな調理法でもおいしく食べられ、しかも安価で家計の強い味方。食物繊維などの栄養素も豊富で、きのこ類を積極的に摂取することは整腸や免疫細胞の活性化、骨粗しょう症の予防、筋力の向上、メンタルの健康にも役立つとされる。

そんな中でも最強の健康効果が期待できるのが、ほかのきのこにはない“特別な健康成分”を持つ「まいたけ」だ。

きのこ界イチのスーパーフード

東京農業大学学長で「きのこ博士」としても知られる江口文陽さんが言う。

「きのこは全般的に低カロリーで、日本人に不足しがちなビタミンDや食物繊維が豊富に含まれます。特にまいたけはこうした栄養素を多く含んでいます」

管理栄養士の麻生れいみさんが解説する。

「ビタミンDはカルシウムの吸収を助けて骨粗しょう症予防になるほか、免疫力アップにも役立ちます。

それだけではなく、まいたけには血流と代謝を上げるナイアシン(ビタミンB3)も豊富。糖質、脂質、たんぱく質を効率よくエネルギーに変えることができるので、肥満予防や疲労回復にも効果が期待される。栄養指導を行う上で、日常的にきのこ類を取り入れると、空腹時血糖値や中性脂肪の改善が見られるケースもあります」

まいたけには、あらゆる栄養素の中でも「β-グルカン」という水溶性食物繊維の一種が多く含まれる。麻生さんが続ける。

「腸内で水分を吸収してゲル状になることで便通をよくするほか、善玉菌のえさになって腸内環境を整える働きがあります。

また、腸内で糖の吸収をゆるやかにすることで、食後の血糖値の急激な上昇を防ぎ、代謝調節酵素の『AMPK』を活性化し、中性脂肪や悪玉コレステロールの生成を抑える可能性も指摘されています」(麻生さん・以下同)

さらに、まいたけにはβ-グルカンの中でも「MXフラクション」「MDフラクション」という2種類の“特別な”水溶性食物繊維が存在する。

「前臨床報告がなされている段階ですが、『MXフラクション』は血糖値の上昇をゆるやかにし、糖の代謝効率をよくすることで、ダイエットや生活習慣病の予防に効果的だといわれています。同じくまいたけにしか含まれない『MDフラクション』は、免疫細胞を活性化させる働きが期待できます」

MXフラクションには脂肪の吸収を抑えて脂肪の蓄積を抑える効果も期待され、毎日の食事に取り入れることで太りにくく、やせやすい体になる。江口さんによれば、生のまいたけの摂取量の目安は、1日あたり30〜50gほど。

「ビタミンDやβ-グルカンはサプリメントなどでも摂ることができますが、サプリメントに頼りすぎると、副作用などの可能性もゼロではありません。一方、まいたけは食品ですから、よほど極端な量でない限り、食べすぎても健康への悪影響は極めて少ない」(江口さん)

料理にも使える万能茶

ビタミンDやβ-グルカンは、加熱したり煮込んだりしても壊れることはないので、どんな食べ方でも摂取することができる。だが、炒めたり、煮物にしたりするだけでは、その効果は100%にはならない。

「食品の栄養素は細胞壁の中に入っているので、一般的には冷凍したり、加熱したりして細胞壁を壊すことで、栄養素が体に吸収されやすくなります。

ところが、まいたけの細胞壁はとても強いので、冷凍したり、ただ加熱するだけではなかなか壊れない。せっかくMXフラクションやMDフラクションを食べてもしっかり吸収されず、そのまま排出されてしまいます」(麻生さん)

そこでまいたけの栄養素を効率的に摂れる最強の調理法が、細かく刻んでコトコト煮出す「まいたけ茶」だ。

「まいたけの中には猪苓(ちょれい)といって、古くから漢方薬として使われているものもあります。漢方薬を煎じるように刻んで煮出し、お茶のように飲むことで、まいたけの成分を効果的に抽出し、しっかり摂ることができるのです」(江口さん)

「まいたけ茶」の作り方
「まいたけ茶」の作り方
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つくり方は簡単。みじん切りにしたまいたけに水を加えて沸騰させ、弱火で30分ほど煮出すだけ。

「分量は、まいたけ約300gに対して水800ml程度が目安ですが、つくりやすさや消費量、味の好みなどに合わせて調整してください。圧力鍋を使えば、加熱時間は10分ほどでOK。炊飯器の加熱機能を使ってつくることもできます」(麻生さん)

ポイントは、グツグツ煮立たせずに、弱火でゆっくり煮出すこと。

「まさにお茶をいれるような感覚で、一度沸騰させてから火を止め、そのまま冷めるまでまいたけを浸しておくのもいいでしょう。煮出すことで変色したり、えぐみが出て気になるようなら、色の薄い白まいたけを使うのもおすすめ。色が異なるだけで、栄養素に違いはありません」(江口さん)

まいたけ茶の摂取量は、1日あたりカップ約2杯(400ml)程度。食前や食中に飲むことでより効果的に血糖値の上昇を抑え、肥満予防や食べすぎの防止にもなる。

さらにお茶として飲むだけではなく、煮出したまいたけ茶に塩こしょうを加えれば、うまみたっぷりの「まいたけだし」として、さまざまな料理に使える。

「そのままみそ汁やスープ、鍋のだし汁として使うのがおすすめ。具材に肉や魚を使えばうまみの相乗効果が得られ、減塩効果も期待できます。つくったまいたけ茶を製氷皿で凍らせておけば1か月ほどもつので、凍ったままカレーやリゾットに入れてうまみを底上げする調味料としても使えます」(麻生さん)

江口さんは「煮出した後のまいたけも、出がらしとは思わずに食べてほしい」とつけ加える。

「煮出した後のまいたけそのものにもβ-グルカンがたっぷり含まれているので、ぜひ残さず食べてください。みそ汁にしたり、いまの季節ならお米を炊くときの水にまいたけ茶を混ぜ、煮出したまいたけと一緒に鮭やごぼうなど好きな具材と合わせれば、おいしくて健康にもいい炊き込みご飯ができます」(江口さん)

おいしくて健康も手に入る、一石何鳥もの“最強グルメ”を試してみては。

※女性セブン2025年11月6日号

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