《全身の健康に大きく影響する『目』の健康》特に怖いのは「緑内障」診断された人の9割は自覚症状なし 閉塞隅角緑内障はすぐに受診しないと数日から1週間以内に失明する恐れも

目のかすみ、疲れ目、老眼、見えにくさ──ちょっとした目の不調を放っておくと、大切な家族の顔や美しい景色などが見られなくなる。目が見えなくなることは全身の健康にも影響を与え、寝たきりになることもある。一生使う「目」を100年長持ちさせる方法を専門家に聞いた。【全3回の第1回】
「最近、スマホの文字がかすむ」「夕方になるとピントが合いにくい」といった不調は、“まぁ年だしな”と放っておきがち。「介護マーケティング研究所by介護ポストセブン」が4804名を対象に実施したアンケートでは、老眼を自覚している人はおよそ3人に2人。
だが、実際に老眼鏡を使っている人は「老眼を自覚している」人でも約半数にとどまる。都内在住の会社員・Aさん(51才)もそのひとりだ。
「スマホの小さい文字は見づらいし、最近は照明が暗いおしゃれなレストランだとメニューの文字がかすんでしまう。でも老眼鏡をかけるとなんだか年をとった気がして、抵抗があるんです」
遅かれ早かれ誰にでも訪れる目の老化。目のケアを怠っていると、そのスピードは加速すると話すのは二本松眼科病院副院長の平松類さんだ。
「日常生活が支障なく送れる期間を『健康寿命』といいますが、『目の健康寿命』は60才前後だといわれています。目の不調を放置していると日常生活を楽しみづらいし、一気に視力が落ちることもある。目の健康は全身の健康寿命をも左右します」
健康で幸せな人生100年時代を過ごすには、いかに目の健康寿命を延ばすかが大切になるのだ。
目の不調を放置すると体の機能が低下する
年齢を重ねるとどんな目の不調や病気が増えるのか。その代表は老眼や白内障、緑内障、加齢黄斑変性だ。札幌かとう眼科院長の加藤祐司さんが解説する。
「40才を過ぎると目のピントが合いづらくなって老眼になります。緑内障も40才以上から始まり、40才以上の5%は緑内障になっているというデータもあります。60〜70才くらいになると光がまぶしい、目が見えにくいといった白内障の初期症状が出てくる人が増える。70才頃になると網膜の中心部である黄斑が加齢とともに変性し、視界の中央部がゆがむ加齢黄斑変性が増加していきます」
女性に多いドライアイも、高齢になると増えると話すのは平松さんだ。
「原因のひとつは“涙の質”の悪化。老化に伴う目の機能低下とともに涙の質も低下します。女性特有の“冷え”も関係している。質のいい涙の表面には、上下のまぶたの裏側にあるマイボーム腺から油分が分泌されるので油膜が張っていますが、体が冷えると油分が固まり油分が分泌されにくい。油分が少ないと涙は蒸発しやすく、目の乾きを招きます。メイクなどでまぶたに炎症が起きることでも油分の分泌は減ります」
目の病気の多くはゆっくり進行するため、症状に気づきにくい。だが治療が遅れると失明することもある。
「特に怖いのは緑内障です。初期症状がなく、視神経が障害されることで視野が次第に狭くなり、ゆっくりと視野が欠けていきます。日常生活では両目で見ているので片目の視野が失われても気づきにくく、緑内障と診断されたときには手遅れになっていることもあります。緑内障と診断される人のうち約9割は、自覚症状がありません。加齢黄斑変性も放置すれば、視力が失われることがあります」(平松さん・以下同)

症状が突然悪化することもあるという。
「緑内障の中でも女性に多い閉塞隅角(へいそくぐうかく)緑内障の場合、急に眼圧が上がる緑内障発作が起きることがあります。頭痛や眼痛、視力低下を引き起こし、すぐに病院を受診しないと数日から1週間以内に失明する恐れもあるので、気をつけてほしい」
目の不調は全身の健康にも影響を与える。
「老眼をそのままにしていると眼精疲労になり、頭痛や肩こりが慢性化する人もいます。老眼に限らず見えにくい状態を放置すれば、目の機能が低下するアイフレイルにもなりやすい。
見えにくいと転んでそのまま寝たきりになったり、外出機会が減って体全体の機能が低下するフレイルにもつながります。人は外からの情報の8割ほどを目から取り入れているので、目が悪くなると認知機能が低下して認知症リスクが高まります」(加藤さん)
(第2回に続く)
※女性セブン2025年11月6日号