リンパ球のT細胞が暴走してサイトカインストームが起きる
免疫細胞は目に見えないが、私たちがその働きを最も実感するのは、かぜやインフルエンザにかかったときだろう。発熱やのどの腫れ、痛みこそ、体が懸命に異物と闘っているサインだ。
「発熱や痛み、患部が赤く腫れるような症状は炎症といって、免疫細胞が働いている証拠です。熱が出るのは、ウイルスや細菌は熱に弱く、免疫も少し体温が高い方が活性化しやすいからです。39℃未満の熱なら、“免疫ががんばっている”と見守って、むやみに薬で抑えない方が治りは早い。
のどの痛みなどについては無理に耐える必要はありませんが、薬には副作用があるので、少しくらいならがまんした方がいいでしょう」(玉谷さん)
ただし、体を守るために欠かせない免疫機能でも、暴走すると自分自身の健康な細胞まで傷つけてしまうことがある。「サイトカインストーム」がその代表例だ。京都府立医科大学大学院医学研究科教授の内藤裕二さんが解説する。

「ウイルスなどに感染すると体内でウイルスと闘うための炎症性物質『サイトカイン』が分泌されます。サイトカインストームは、何らかの理由でリンパ球のT細胞が暴走してサイトカインが過剰に放出される状態のこと。
コロナ禍ではウイルスそのもので亡くなるよりも、サイトカインストームによる呼吸不全で命を落とした人たちが多かった。免疫の暴走を抑えるためには、免疫を抑制するステロイドを投与するしかありません」
免疫の攻撃と制御のバランスが崩れると、「自己免疫疾患」を発症する。
「免疫細胞が自分の体を『敵』と誤認して攻撃してしまうと、体のさまざまな臓器で自己免疫疾患が起きます。よく知られているのは関節リウマチですが、全身性エリテマトーデス(SLE)や潰瘍性大腸炎、自己免疫性肝炎などいくつもあります」(内藤さん・以下同)
アレルギーも同じ仕組みの延長線上にあるという。
「花粉や食べ物など本来は害のないものに対して、免疫が過剰に反応してしまうことで起きます。アレルギーは、リンパ球がIgEという抗体をたくさん作ることが原因です。はっきりした原因は解明されていませんが、体質や遺伝、生活環境などが原因で免疫のバランスが崩れていると考えられます」
免疫の働きは「多すぎても少なすぎても」体を傷つけるということだ。常に中庸を保つことが鍵になる。今後、制御性T細胞によって免疫の暴走を止められるようになれば、助かる命が増えるかもしれない。
(後編へ続く)
※女性セブン2025年11月27日号