
パン、牛乳、サラダ油、砂糖──毎日食べているものが「毒」と言われたら誰しもドキッとするだろう。しかしそれは冗談ではなく、着実に体を蝕み続けているのだ。私たちの食生活に潜む4つの食品のリスクを知り、健康な体作りに励みたい。【前後編の前編】
私たちは、日々の食生活でいくつものことを気にしながら選び、口にしている。塩分が少ないもの、なるべく国産で、カロリーは低い方がいい、添加物が使われていないかどうか—にもかかわらず、知らず知らずのうちに“毒に蝕まれている”可能性がある。山梨県在住のAさん(52才・女性)が、自身の経験を語る。
「昨年の人間ドックでステージ1の大腸がんが見つかりました。運よく初期だったので、内視鏡切除で済みましたが、術後医師からは食生活の見直しをすすめられました。これまでの食事を振り返りながらいろいろ調べていると、毎朝パンを食べて、昼はうどんやラーメン、夜はパスタと、小麦を摂りすぎているのかもしれないと気づきました。
そこで半年間、小麦の量をぐっと減らしたんです。すると体重がするする減って、長年悩んでいた頭痛もなくなりました。自分では変なものを食べている意識がなかっただけに、こんなに体調がよくなるのかと驚いています」
小さな頃からアトピーに悩んでいたBさん(42才・女性)もこう続ける。
「あまりに肌荒れがひどくなってきたのと、40才を過ぎて太ってきたので大好きなスイーツを控えることにしました。体重はなかなか減りませんが、肌の調子がぐんとよくなってきた。そのうち食事の甘みが気になるようになり、料理でも砂糖を使う量が自然と減っていったんです。この間の健康診断では、医師から常々指摘されていた血糖値の値も改善されました」
戦後、日本人の食生活が大きく変化し「四毒」の摂取量が増えたことで、健康が損なわれ“現代病”をつくっていると説くのは、銀座エルディアクリニック院長で『四毒抜きのすすめ』の著者、吉野敏明さんだ。
「四毒とは、『小麦』、『乳製品』、『植物油』、『甘いもの』を指します。いずれも、日本人が歴史的に常食してこなかったものですが、現代では多くの人の食卓に日常的にあがっています。これらは日本人の体質に合わず、高血圧や糖尿病といった生活習慣病、心疾患、がん、アトピーやアレルギー、不眠などあらゆる“現代病”を招いているのです」
事実、食の欧米化や外国産の安価な小麦の輸入量が増えたことで米の消費量は激減。農水省の調査からは食用油脂の消費量が’60年代と比較して2倍になったことも報告されている。小麦や食物油、乳製品などいずれも私たちに身近な食べ物で、時には“健康食”としても推奨される食品にはどんな“毒”があるのか。
小麦に含まれるグルテンが自己免疫疾患リスクを高める可能性
吉野さんは「小麦に含まれるグルテンが自己免疫疾患リスクを高める恐れがある」と指摘する。
「慢性鼻炎やぜんそく、リウマチなどは自己免疫疾患の一種で、これは細菌やウイルスなど異物を排除する役割を持つ免疫系が本来の働きをせず、異常な働きをすることによります。この免疫の暴走を引き起こすといわれるのがグルテンです。
鼻の粘膜を攻撃して慢性鼻炎やぜんそく、皮膚の細胞を攻撃してアトピーに、大腸の粘膜を攻撃して潰瘍性大腸炎や大腸がんといったように正常な細胞が攻撃され、自己免疫疾患の症状につながります」(吉野さん・以下同)

そもそも、日本人はグルテンへの耐性が備わっていない人が多いと吉野さんは続ける。
「グルテン不耐症だと、細菌や異物を攻撃する白血球が、がん細胞ではなく正常な細胞に標的を変えるとも考えられています。
また、グルテンは腸内環境の悪化も招きます。腸の粘膜を刺激し細胞間の結合を緩めて必要な栄養分を取り込めず、逆に毒素を腸に招く“腸漏れ”を引き起こす可能性があるのです」
さらには、女性にとって悩みの種であるむくみにも影響を及ぼす。
「グルテンは、細胞膜にあり細胞内外の水分バランスを調整するアクアポリンというたんぱく質の働きを阻害すると考えられています。また、前述した通り、体内で炎症を起こすので血管透過性を上昇させて、血管の外に水分が漏れ出てリンパにもむくみが発生します」
最近では「グルテンフリー食品」の種類も豊富になり、一般的な小麦に比べてグルテンの含有量が少ない古代小麦やライ麦にも注目が集まっている。杏林予防医学研究所所長の山田豊文さんが言う。
「古代小麦やライ麦などは、麦類の中ではグルテンが少なめです。また米粉のパンや豆の粉を使ったパスタなども売られています。
パンやパスタがどうしてもやめられないという人は、まずはこれらのパンやパスタを試してみるのもいいかもしれません。ただし量と頻度には気をつけて。輸入小麦は残留農薬にも注意しましょう」