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《目標は108才の“茶寿”まで舞台に立つこと》加藤茶を支える妻・綾菜が実現した1日6g減塩でもおいしい食生活 栄養士と研究を重ね、集大成「万能 氷だし」が完成

加藤茶を支える妻・加藤綾菜
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 国民的スター・加トちゃんこと加藤茶(82才)の夢は「108才の“茶寿”まで舞台に立つこと」。その夢を叶えるため、妻・綾菜(37才)は、透析療法を受ける寸前だった夫の食事と運動、生活習慣のすべてを変えた。その結果、血圧は正常値に。結婚生活15年をかけて綾菜が学び、挑戦し続けたことに健康長寿のヒントがあった。【前後編の後編。前編から読む

1日の塩分6gの減塩食は最難関

 パーキンソン症候群と食道破裂の2度の入院で、綾菜は医師から、「もっと節制し、減塩を徹底するように」と言われる。

「度重なる病で加トちゃんは、心臓も腎臓も弱り、透析療法を受ける寸前でした。減塩食はそれまでも作っていたつもりでしたが、不充分だったんですね。

 加トちゃんはとても前向きな人なので、『人工透析か、そんな人生もいいんじゃない』なんて、のんきなことを言うんです。そこがいいところでもあるのですが、これは私がもっとがんばらなければと、奮起しました」(加藤綾菜・以下同)

 塩分濃度の測定器を買ってすべての食事の塩分濃度を測り、1日6gの塩分量を徹底することにした。しかし、懸命に減塩料理を作っても、月1回の定期検診のたび、数値は悪くなっていく。こんなに努力をしているのになぜ……。その原因はすぐにわかった。

「加トちゃんったら、味が薄いからって、こっそりしょうゆをかけていたんです。しかも、私がいないときの食事はここぞとばかりに好きなものを食べていたようで(笑い)。

 深夜にコンビニエンスストアにこっそり行き、菓子パンやせんべいなどを大量に買って食べていた、なんてこともありました。そりゃあ、楽しみにしている食事が味気なければ、仕方がありませんよね」

「だし」にこだわるとぐっとおいしくなった

 綾菜はそれでもあきらめなかった。減塩でもおいしい食事を作りたいと、入院していた病院の調理室に行き、管理栄養士に料理を教わったり、病院の掲示板をチェックして、減塩料理の講習会があれば参加したりした。常にアンテナを張り巡らせて、情報を集めた。

「最終的には、総合健康産業都市拠点のひとつ『北大阪健康医療都市』の医師や専門家を紹介してもらい、そこに通って減塩料理を勉強させてもらいました。

 そこで教わったのが、単に塩分を減らしても食べてもらえない。旨みがなければ減塩食は続かないということ。そこで、栄養士で料理家の田村つぼみさんと一緒にだしの研究をすることにしました」

 だしの中にさまざまな食材を入れて味に深みを出そうと、甘みのある玉ねぎを入れたり、しょうがやかつおぶしを入れたり……。加藤の出身地である福島県では、温まるからとみそ汁に酒粕を入れていたと聞き、コクを出すために酒粕も入れた。

「研究を重ね、4年前に集大成ともいうべきだしが完成しました」

「万能 氷だし」の作り方
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 それが冷凍して保存しておける「万能 氷だし」だ。

「私としてはこれ以上ないおいしいだしが完成したと思ったのですが、それでも加トちゃんは最初、食べてくれませんでした。でも、人の舌は1週間で慣れると聞いたので、『1週間だけがんばって』とお願いしたところ、少しずつ万能 氷だしを使った減塩食に慣れていきました。最終的には、『料理の腕、上げたね』とほめてくれて……。もう感激しちゃいました」

 減塩料理を食べてもらうための工夫はそれだけではなかった。しょうゆをかける癖が直らないなら、あえてかけさせ、その分もっと薄味で作る。しょうゆ瓶の中身を減塩しょうゆにしておき、かつおぶしのスティックを入れてコクを出す。外食で好物のカツ丼が食べたいと言ったら、カツとご飯を別々に出してもらうようにしているという。

「とにかく、食べたいと言ったらダメとは言わない。そして、減塩を意識させないようにしています。丼物はご飯にたれがしみている分、塩分濃度が高いので、ご飯とおかずを別々に出してもらいます。そうするだけで塩分が30%カットできるんです」

 腎臓が弱い加藤のために、塩分だけでなくカリウムにも気を使っている。

「加トちゃんは果物が大好きで食後に必ず食べるのですが、果物にはカリウムが多く含まれているんです。腎機能が低いと、カリウムの排出能力も低下し、高カリウム血症のリスクが高まるので、わが家ではカリウムにも注意しないといけません。そこで試行錯誤の末、缶詰の果物を出すことに。缶詰だとカリウムがシロップに溶け出すので、果物自体のカリウム量が減らせるんです」

がまんさせるのではなく食べられる工夫を

 綾菜は、がまんさせるのではなく、加藤が食べられるよう工夫することを惜しまない。飲酒についても話し合い、飲む量を決めて少しずつ減らしていき、現在は月1〜3回、たしなむ程度だという。

 その結果、加藤の健康状態はみるみるうちに安定し、完全な減塩食生活を始めてわずか1年で、降圧剤をのんでも200mmHgあった最高血圧が正常値の120mmHgとなり、医師から「透析を」と言われなくなった。

「結婚当初よりも、82才のいまの数値の方がよくて、尿たんぱくやクレアチニンなど腎臓関係の数値もすべて正常になりました」

 いまでは加藤自身、減塩食や健康維持に積極的だという。

「減塩食にしてからまず、足のむくみがとれて、夕方になっても靴がキツくならなくなったと喜んでいました。それが成功体験になったのか、積極的に歩いたり、体を動かしたりするように。

 いまでは外食がしょっぱく感じるらしく、私が何も言わなくても、最初にサラダから食べるなど、自分で気をつけるようになってくれて、ありがたいですね」

 綾菜も、加藤にだけ減塩をさせまいと、自ら同じ食事をとっているという。

「減塩食生活は習慣化させるまでが大変ですから、ひとりでやらせない、家族で一緒にやる、というのが大切じゃないかと思います。

 私自身、1日の塩分量6gの減塩食生活を始め、1週間でむくみが取れて鎖骨が現れ、3か月で約10kgやせました。万能 氷だしを使ったとしても、最初から一気に減塩食に変えるのはきついので、塩分は舌を慣らしながら少しずつ減らしていくのがおすすめです」

 加藤の夢は、108才の茶寿まで元気に舞台に立つということだが──。

「減塩をしたり運動をしたりしても、加トちゃんの体をいま以上に健康にすることは年齢的にも難しい。目標は現状維持。それすら年々大変になっていきますから。それでも加トちゃんの夢を叶え、一日でも長く夫婦でいられるよう、これからも工夫を続けようと思っています」

 笑顔で語る綾菜の姿はもう“年若い妻”ではない。加藤の横に並んで共に人生を歩く、頼もしいパートナーだ。

※レシピや体操の参考文献/加藤綾菜著『加藤家の食卓 医師と栄養士の先生に長生きする食事の作り方を習いに行ってきたレシピ集』(アスコム)

彩菜おすすめエクササイズ(イラスト/ico.)
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(前編から読む)

【プロフィール】
加藤綾菜(かとう・あやな)/タレント。1988年広島生まれ。2011年『ザ・ドリフターズ』の加藤茶と結婚。YouTube「加藤家の日常」やさまざまなメディア、イベントに出演。「綾菜式減塩 万能だし粉」(60g1382円)発売中。著書に『加藤家の食卓 医師と栄養士の先生に長生きする食事の作り方を習いに行ってきたレシピ集』(アスコム)など。

女性セブン20251127日号

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