健康・医療

とりあえず処方されがちな鎮痛剤や胃薬、風邪に効かない抗生物質、腎機能悪化の恐れがある降圧剤と鎮痛剤の併用…「のみ続けると体に悪い薬」「のみ合わせに注意すべき薬」リスト

のみ続けると体に悪い薬がある(写真/PIXTA)
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 インフルエンザが早くも「大流行」の兆しを見せている。病院にかかれば咳やのどの痛みをとるために薬が処方され、熱が下がらなければ解熱剤をのむ。しかし、その一錠はあなたの体を本当によくしているのだろうか──。

抗生物質を安易に使いすぎる日本人

 古来、日本では薬の有効性について知られてはいたものの、一般庶民が広く使うようになったのは江戸時代からとされる。以降、薬は生活に欠かせないものになり、消費量は世界でもトップクラス。“日本人は薬好き”と称されるほどだ。

 都内に住む会社員のAさん(43才)は、薬を“お守り”として常備している。

「昔から生理痛がひどく、片頭痛もあるので鎮痛剤は絶対にかばんに入れています。胃腸薬も欠かせません。両親も血圧やコレステロール値などが高く、かかりつけ医に定期的に薬を処方してもらっています。のめば体が楽になるのだからのまない選択肢はないんです」

 たしかに、痛みや高熱をがまんしても体に負担がかかるだけ。しかし、薬の効用よりもデメリットが上回ることもある。にもかかわらず、薬には本当は不必要なのに“とりあえず”処方されがちなものがある。その筆頭が抗生物質だと語るのは、薬剤師の堀美智子さんだ。

「風邪には抗生物質が効くというイメージを持つ人が多いと思うのですが、実際の風邪はウイルス性が多い。そして、抗生物質はウイルスには効きません。むしろ抗生物質は体内のよい常在菌も殺してしまうほか、下痢などの副作用を引き起こす場合もある。日本の医師は海外に比べて安易に抗生物質を使うので、世界的に問題視されているほどです」(堀さん)

何も考えずに薬をのんでいると体に悪影響がある(写真/PIXTA)
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 女性の場合、便秘に悩むケースが多く、整腸剤やビタミン剤をのむ人も多い。しかし、何も考えずに薬をのんでいると体に悪影響があると、薬剤師の長澤育弘さんが警鐘を鳴らす。

「便秘や下痢の予防、栄養補給のために、薬とセットでビタミン薬が処方されることがあります。ただ、過度な服用で体に害をもたらすビタミンがあるんです」

 気をつけるべきはA、D、E、Kの4種類だという。

「Dは女性がなりやすい骨粗しょう症の人に出されることが多いですが、のみすぎると尿路結石や胆石のほか、心臓疾患のリスクを上げます。ビタミンEは降圧効果があるので、初期の高血圧患者に処方されることもありますが、のみすぎると血液がサラサラになりすぎて出血しやすくなり、出血が止まらない紫斑病(しはんびょう)になる例もあります。市販のサプリメントでも多用は禁物です」(長澤さん・以下同)

効きすぎて認知症リスクに

 加齢とともに多くの人が気になるのが血圧だが、今夏には日本高血圧学会が血圧基準値を引き下げたことで、“高血圧患者”が増加。それにより、降圧剤を服用する人が増えた。しかし、この降圧剤こそ大きなリスクが潜んでいる。

「世界的に見て日本の高血圧の基準は非常に低い。今回の引き下げは製薬会社のためなのではないかと疑ってしまうほどです。降圧剤を使うと血圧が下がりすぎる恐れがあります。高齢者は基礎代謝が低いので、薬が効きすぎて低血圧から転倒、そのまま認知症になってしまうこともあります」

 堀さんも続ける。

「上手にコントロールする医師は血圧が高くなりやすい冬にだけ処方したりしますが、多くの場合は一度処方したらのみ続けることを推奨してしまいます。頭痛を訴える人が多いほか、血圧が下がりすぎてふらついたり、立ちくらみがしたりする場合もあるのです」

 ACE阻害薬には特に注意が必要だ。

「40〜50代の若年性高血圧に使われやすい薬ですが、副作用で、乾性肺炎という重篤な肺炎になる場合があります。痰がからまないのにやたら咳が出るなら、この副作用の可能性があるでしょう」(長澤さん)

自分がどんな薬をのんでいるか、おくすり手帳をチェックしよう(写真/PIXTA)
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 頭痛、関節痛、発熱など多くの症状を改善するために多用される解熱鎮痛剤。成分によって危険な副作用があるという。国際医療福祉大学病院教授の一石英一郎さんがこう語る。

「イブプロフェン、ロキソニン等の痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬=NSAIDs)には、長期間の使用で胃腸の出血、消化性潰瘍、腎障害などのリスクがあります。さらに、加齢に伴う腎・肝機能低下、血管壁・消化管壁の変化、併用薬(抗凝固薬・ステロイド・アルコール)などとの相互作用で出血リスクを増加させるほか、長期間の使用で慢性腎臓病進展、ひいては透析リスク増加の懸念もあります」

 痛み止めと並んでとりあえず処方されがちな胃薬も、その効果に比べると副作用の方が大きいかもしれない。

「消化を抑えるために胃酸を出ないようにするプロトンポンプインヒビターという薬があります。最近市販薬として販売された類似薬のなかには、胃酸を止めてしまうものがあり、消化が悪くなったり、胃酸を出す細胞が萎縮して、胃がんのリスクも上がると指摘されます」(長澤さん・以下同)

 こうした薬に副作用があるとなると、自然由来で体にやさしいイメージのある漢方薬を選べばいいというのは早計だ。

「腹痛や胃痛に効くといわれる芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)はドラッグストアで売っていますが、このなかに含まれる甘草には手足が脱力して血圧が上がったり、むくんだりするなどの副作用が指摘されます。漢方薬は副作用がなくて安全というイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません」

多剤併用で血液がサラサラになりすぎる

 年を重ねるほど不調や持病が増え、薬の量は増えていき、75才以上の高齢者の7割は、5種類以上の薬を併用しているというデータもある。薬ののみすぎが体に負担をかけるのはもちろん、そののみ合わせによって体に害を与えてしまう危険性も忘れてはいけない。

 特に降圧剤を服用している人は、ほかの薬とののみ合わせに気をつけたい。

「降圧剤と鎮痛剤を併用すると腎機能が悪化する可能性があります。また抗不安薬と降圧剤の併用でも、血圧が下がりすぎ、めまいやふらつき、倦怠感、集中力低下を起こすとされています」(一石さん)

 近年注目を浴びているジェネリック薬についても、安いからと安易に選んではいけない。

「主成分は先発薬と同じでも、メーカーによって製造方法や添加物が違います。ハンバーグ作りに例えると、使っている肉は同じだけどつなぎの卵や小麦粉、玉ねぎとこね方が違うイメージ。先発薬と全く同じもの、という認識は間違いです」(堀さん)

 先発薬にはない副作用が生じてしまうことも。

「製薬会社によって、使っている添加物などが違うので、先発薬で問題がなかった人に、後発薬でアレルギー反応が起こったり、副作用の出方が異なることは考えられます」(一石さん)

 医師に処方される薬から薬局で手にする薬まで、その一つひとつをきちんと見極めよう。

注意すべき薬のリスト
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女性セブン20251127日号

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