健康・医療

腸を若返らせる食品と菌活を医師と食のプロ11人が解説 加齢で腸内環境が悪化すると便秘や肥満、免疫力低下、生活習慣病、認知症のリスクも 

お腹
腸を若返らせ、健康に保つための「最強の食品」と「究極の菌活」とは?(Ph/photo AC)
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私たちの腸内には、100~1000兆個、約1000種類もの細菌がすみついている。加齢とともに腸内環境が悪化すると便秘や肥満、免疫力低下、生活習慣病、認知症のリスクが高まる。腸を若返らせ、健康に保つための「最強の食品」と「究極の菌活」とは。腸内環境を整え、老化を予防する「食品」と「菌」を、専門医と食のプロ11人が全力回答してくれた。

腸を若返らせるには3つの要素が必要

腸は「第二の脳」ともいわれ、全身の健康状態に影響を与える。あらゆる研究では、腸内環境のバランスが崩れて悪化すると、便秘や下痢といった不調にとどまらず、認知症や生活習慣病など全身の病気につながることが明らかになってきた。辨野腸内フローラ研究所理事長で腸内細菌学者の辨野義己さんが解説する。

「偏った食事や加齢によって、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が減り、悪玉菌が増えやすくなります。特にビフィズス菌は、老化で減少しやすい。腸には全身の7~8割の免疫細胞が集まっていますが、悪玉菌が増えて腸内環境が悪化すると、免疫細胞の働きが低下。悪玉菌が出す有害物質が腸粘膜で吸収されて全身を回ると、さまざまな病気を引き起こすのです」

過度なストレスや不規則な生活によっても、腸の老化は進むといわれる。腸を若返らせるには3つの要素が必要だと話すのは、ナビタスクリニック川崎院長の谷本哲也さんだ。

「まず大事なのは、腸内にさまざまな種類の細菌が共存している『腸内細菌の多様性』です。善玉菌が酪酸を多く産出すること、腸粘膜の炎症が少ないことも条件になります。酪酸は大腸のエネルギー源として働き、腸のバリア機能を強化して、腸内環境を整える働きをします」

では腸を若返らせるために、どんな食品や菌が必要なのか。専門家11人に、腸を若返らせるために役立つ「最強の食品」と「菌」を徹底取材した。

◆教えてくれた識者

以下11人の医師と食の専門家に、腸を若返らせる「最強の食品」と「菌活」を最大10個挙げてもらい、1位を10点、2位を9点、3位を8点、4位を7点、5位を6点、6位を5点、7位を4点、8位を3点、9位を2点、10位を1点として集計。10点以上の項目をランキング化した。

石原新菜さん(イシハラクリニック副院長)、金丸絵里加さん(管理栄養士・料理家)、川本徹さん(犀星の杜クリニック六本木院長)、工藤あきさん(消化器病専門医)、佐藤桂子さん(さとうヘルスクリニック院長)、佐野こころさん(医学博士)、谷本哲也さん(ナビタスクリニック川崎院長)、福田千晶さん(医師 健康科学アドバイザー)、辨野義己さん(辨野腸内フローラ研究所理事長/腸内細菌学者)、真野わかさん(腸セラピスト/日本養腸セラピー協会会長)、望月理恵子さん(管理栄養士/健康検定協会理事長)

がん細胞を抑制し、腸の免疫機能を整える

専門医と食のプロから圧倒的な支持を得た食品は、1位の「ヨーグルト」だ。管理栄養士の望月理恵子さんが言う。

「ヨーグルト」
1位は「ヨーグルト」(写真/PIXTA)
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「便秘が続くと腸内に悪玉菌が増殖するため、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が豊富なヨーグルトを食べることで便秘解消が期待できます。整腸作用が期待できるオリゴ糖や、オリゴ糖が含まれるはちみつで甘みを加えるといいでしょう。食物繊維が多いナッツやドライフルーツを加えるのもおすすめです」

同じく発酵食品の「納豆」(2位)、「キムチ」(7位)も多くの票を集めた。イシハラクリニック副院長の石原新菜さんがこう語る。

「納豆は納豆菌と腸内細菌のエサになる食物繊維を同時に摂れるすぐれもの。血液をサラサラにするナットウキナーゼやビタミンB群、鉄分も豊富で、たんぱく質も摂れる最強食材です」

医師で健康科学アドバイザーの福田千晶さんも続ける。

「納豆やキムチなどの発酵食品は、菌が生きたまま腸に届きやすいといわれており、キムチは野菜なので食物繊維も一緒に食べることができます。同じく発酵食品の『ぬか漬け』(10位)も、ぜひ献立に取り入れてほしい」

3位、4位につけたのは、「きのこ類」「海藻類」だ。犀星の杜クリニック六本木 院長で消化器専門医の川本徹さんは、まいたけをすすめる。

きのこ類
きのこ類はローカロリーでダイエットにも効果的(写真/PIXTA)
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「きのこ類はローカロリーでダイエットにも効果的。中でもまいたけは、突出してビタミンDが多い。ビタミンDには腸粘膜の機能を整えて、免疫力をアップする働きがあります」

海藻は日本人にぴったりの食品だと話すのは、石原さんだ。

「日本人には、海藻を分解できる腸内細菌を持っている人が多い。海藻は栄養価が高いだけでなく、食物繊維のβ-グルカンは免疫を活性化し、昆布などに含まれるフコイダンは、腸で不要な脂質を吸着し、血糖値の上昇を緩やかにします。きのこや海藻をみそ汁に入れて、手軽に食べて」

ランキング上位に入った食品の共通点は、食物繊維が豊富なことだ。

バナナ
6位の「バナナ」も食物繊維が豊富(写真/PIXTA)
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「食物繊維は腸内細菌を活性化して、酪酸の産生量を上げる。酪酸にはがん細胞を抑制し、腸の免疫機能を整える重要な役割があります」(辨野さん)

アレルギー症状を軽減する乳酸菌

腸内環境を整え、若返らせるためには“美腸”のための菌を効果的に摂る「菌活」も重要になる。善玉菌を増やし、育てるためにはどのような菌が必要なのか。今回、最も票を集めたのは、「乳酸菌」だ。

「乳酸菌は腸内を弱酸性にして悪玉菌がすみにくい環境にしてくれる。免疫力を高めるだけでなく、アレルギー症状の軽減効果も期待できます」(医学博士の佐野こころさん)

2位につけたのは、「ビフィズス菌」。管理栄養士で料理家の金丸絵里加さんが解説する。

「主に大腸にすみつき、強力な殺菌作用を持つ酢酸を作り出すことで、悪玉菌の増殖を効果的に抑えます」

谷本さんが補足する。

「ビフィズス菌は、臨床エビデンスが豊富。慢性便秘の高齢者を対象とした研究では、排便回数、便の硬さなど便秘症状が有意に改善した。腸を若返らせる菌として最有力です」

5位の「麹菌」も腸内環境の改善に深くかかわっている。腸セラピストの真野わかさんが言う。

「みそや甘酒、しょうゆなどの発酵食品に含まれる麹菌は、日本の和食文化を代表する菌です。消化酵素を多く作り出すので、腸内での栄養吸収を促進し、腸粘膜の健康維持に役立つといわれます」

菌活の効果をより高めるためには、摂り方にも気を配ろう。さとうヘルスクリニック院長の佐藤桂子さんがアドバイスする。

「腸内細菌の多様性を増やすことを常に意識してほしい。特定の食品に偏らず、発酵食品、野菜、海藻、穀物など1週間に30品目以上を幅広く取り入れるといいでしょう」

ぬか漬け
発酵食品のぬか漬け(写真/PIXTA)
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玄米
玄米もおすすめ(写真/PIXTA)
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体にいい食品や菌は、一度に大量に食べるのではなく、少しずつ継続するのがコツだ。真野さんが言う。

「基本的に、食べた菌は定着せずに外に排出されるので、少しずつでいいので毎日食べましょう。死んだ菌は腸内で善玉菌のエサとなって腸内環境を改善するので、生きた菌にこだわる必要はありません」

日々、自分の腸に意識を向けることも忘れないようにしたい。

「排便後は便の量をチェックしてほしい。女性の場合、1日の理想量は200~250g。体重計をトイレの前に置き、行く前と行った後に測れば大体の重さがわかります。いい腸内環境なら、毎日適量が出るはずです」(辨野さん)

日々の積み重ねが腸の若さを左右する。早速、今日から習慣を変えてみよう。

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写真/PIXTA

※女性セブン2025年12月11日号