健康・医療

《ジェネリック薬・知っておきたい問題点》「先発薬より安価で同じ効果」のはずでも細かい点では“まったく違う”…コスト削減競争による品質不正やずさんな管理の実態

ジェネリック薬の問題点とは(写真/PIXTA)
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先発薬と“同一”効果でありながら3〜7割も安いジェネリック薬。日本の製薬会社が作っているものだし安心して使いたい──そう考えていたら危険だ。ジェネリック薬の半分以上は“外国産”といってもいいほどで、その品質には疑問が残る。この不都合な真実から目を背けるべきではない。

「これ、いつもの薬と違いませんか?」

今年8月、皮膚科に通院している主婦・Aさん(43才)は、薬局でもらった塗り薬を見て薬剤師にこう尋ねた。出てきた薬のパッケージが、それまで処方されてきたものと違っていたのだ。

「いつも使っていた薬が勝手にジェネリック薬に変えられていたんです。いつものがいいと言ったんですけど、“いまはジェネリック薬しかないんです”と言われ……。そもそも、私が指摘しなかったら何の説明もなかったかと思うと、ぞっとします」(Aさん)

医療費削減を目指す厚労省は昨年10月から先発薬を希望する場合、患者の自己負担額を引き上げるなど、ジェネリック薬への切り替えを推進。それでも、希望すれば先発薬の処方を受けることはできる制度だが、現場では「薬不足」を理由にしたジェネリック薬への変更の強制が起こるケースも。薬剤師の長澤育弘さんが言う。

「増大する医療費を削減するためにはある程度、ジェネリック薬に置き換えなければなりません。しかし、何の説明もなく勝手にジェネリック薬に変えたり、患者に選択肢が与えられないというのは極めて大きな問題です。なぜなら、現状ではジェネリック薬にすると薬の効き目が変わったり、想定していない副作用が出る可能性があるからです」

コスト削減競争が品質不正に走らせる

ジェネリック薬は、先発薬を開発した製薬会社の特許の有効期限が切れた後に販売される、先発薬と同じ有効成分、品質、効き目、安全性が同等な医薬品である。そもそも先発薬を作り出すためには、治験により人に投与した場合の安全性や薬の効き目を検査するなど、長い年月とお金がかかる。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが説明する。

「薬の価格を決めるのは厚労省で、先発薬の場合は創薬コストを考慮して高い薬価が設定されています」

一方、ジェネリック薬は、先発薬の作り方をまねるだけなので、研究開発コストがかからず、安い値段で薬を製造することができる。有効成分が同じでありながら、なぜ効き目が異なるのか。長澤さんが解説する。

「ジェネリック薬は、メーカーの判断で原料の仕入れ先や、成形に使う材料が先発薬と異なります。また先発薬と違い、大規模な治験を行っていない。『生物学的同等性試験(BE試験)』といい、先発薬と同等の範囲内の効果があれば売っていいことになっています。同等の範囲内であればいいということで、先発薬と違い、効き目にわずかな差が生じても売ることができる。

また、カプセルや錠剤に使うコーティング剤を変更している場合でも治験を行っていないので、想定していないアレルギー反応や副作用が出る可能性が否定できません」

ジェネリック薬の基本
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つまり“同じ効果を持つ”とされていても、実際、細かい点では“まったく違う”のだ。長澤さんが続ける。

「血糖降下剤や一部の精神神経用薬などで、ジェネリックに変更後、患者が血糖値の変動や精神的な不安定さを訴えるケースがあります。薬の溶け方が変わり、吸収速度や効果が先発薬とは違うことが原因だと思われます。また、貼付薬の場合は、はがれやすさや皮膚への刺激といった使用感が変わることで、継続使用を断念する人もいます。

先発薬では起きなかったアレルギーやじんましんを訴えるケースもある。おそらく、有効成分以外の添加物やコーティング剤が変わったことで吸収量が変化し、効果が不安定になったのが原因だと思われます」

さらに深刻なのは、ここ数年頻発しているジェネリック薬の品質不正だ。

2023年、業界最大手の沢井製薬では、ジェネリックの胃薬のカプセルの溶け方を検査する試験で、2015年以降、不正行為をしていたことが発覚。ジェネリック医薬品業界で中堅の小林化工では、15年以上にわたり国が承認していない手順でジェネリック薬を製造。その結果、水虫薬に睡眠導入剤の原料が混入し、服用した人が意識障害になる事故が発生した。これにより、2人が交通事故で死亡している。

こうしたメーカーによる不正行為が相次ぐ理由には、業界が置かれた構造的な問題があるという。

「ジェネリック薬も厚労省に価格を決められていますが、安価で設定されることが多く、メーカーが儲けを増やそうと思うと製造コストを削減するしかない。

このコスト削減競争が、一部のメーカーを品質不正に走らせています」(室井さん・以下同)

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