がん治療は遺伝子という新たなフェーズに
治療法の進展や薬の開発で生存率の向上や、部位ごとの生存率の差が縮小することはどこまで期待できるのだろうか。小川さんは、「がん治療は、部位ではなく遺伝子という新たなフェーズに変化している」と指摘する。
「がん種ごとの治療法というよりは原因となる遺伝子やメカニズムを解明し、そこに治療の照準をあてていくことが進められています。部位ごとの生存率は今後も重要ではあるものの、治療戦略として今後、新しい薬剤が出てきたときに部位ごとの差はかえってわかりにくくなるかもしれません。
患者さんが多ければ多いほどデータが集まり解析が進むので、乳がんや肺がんなどは遺伝子異常が見えやすくなり薬の開発もさらに進むことが考えられます」

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女性特有のがんについても希望があると小川さんは続ける。
「乳がんや子宮がんなどは多少進行したとしても、以前に比べて薬の治療効果が高まっています。そこまで悲観しなくていい場面が増えているといっていいでしょう」
室井さんも言い添える。
「卵巣がんにはリムパーザという新しい薬が登場し、高い有効性が報告されています。
今回の集計対象は2015年までですが、2015年以降にも肺がんの分子標的薬であるEGFR阻害薬やALK阻害薬が登場している。遺伝子診断も発展し、どの薬がどんな人に効くのかという技術も向上していますから、生存率は今後も向上していくことが期待されます」
百聞は一見にしかず。254万人の症例が示す確かな「数字」から、学ぶことは多い。がんとともに生きる時代、私たちにできることはまだまだある。

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※女性セブン2025年12月18日号