健康・医療

難聴を放置していると認知機能が低下!? 「認知症になりにくい耳の作り方」を名医が伝授!対策は「ペットボトル呼吸法」と「ももあげ」

難聴の女性
難聴が原因で認知機能がみるみる低下してしまう…(写真/PIXTA)
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「テレビの音や家族の会話が聞こえづらいけど、老化だからどうしようもない」――。75才以上の女性の約7割が難聴というデータがあるが、「仕方がない」と放置するのは危険だ。難聴が原因で認知機能がみるみる低下するという。そこで、“最大リスク“を予防する究極の生活習慣を伝授! いますぐ生活習慣を改善して、「認知症になりにくい」耳をつくりたい。

難聴の主因は血流の悪化による酸素不足

国立長寿医療研究センターの調査では、75~79才の女性の難聴有病率は67.3%、80代以上では73.3%と高い数値が示されている。

目と耳の治療に特化した治療院「日本リバース」院長の今野清志さんが、加齢で聴力が低下するメカニズムをこう解説する。

「高齢になると、自律神経が乱れたり、胃腸のぜん動運動がうまくいかなくなることで、血流が悪くなります。それに伴い内耳のリンパの流れが悪くなり、音を捉える聴神経が痛む。それが続いて、難聴になってしまうのです」

難聴の主因は血流の悪化による酸素不足だという。

「血の巡りが悪くなると、酸素を体の隅々まで届けられなくなる。耳への酸素供給が足りなくなると、脳への情報伝達が滞り、聞こえづらくなります。

加齢で呼吸に関する筋力が低下して、酸素の摂取量が減ることも大きな要因です。50代を超えると4割、60代で7割減といわれています」(今野さん・以下同)

酸素不足を防ぐために今野さんがおすすめするエクササイズが「ペットボトル呼吸法」と「ももあげ」(次頁イラスト参照)だ。

「『ペットボトル呼吸法』を続けることで、体全体に酸素を取り込める腹式呼吸が身につきます。この方法で腹式呼吸を習慣化し、聞こえづらさが解消したという患者も多いです。

有酸素運動である『ももあげ』は、心肺機能を高めて血流がよくなるほか、さまざまな生活習慣病の予防にも役立ちます」

好きなドラマがイヤになったら危険信号

どれだけ予防に努めても老化には抗えず、耳が聞こえづらくなってしまう人は少なくない。そのまま難聴を放置してしまうと、認知症を発症する可能性がどんどん高まってしまうのだ。

医学雑誌『ランセット』でも飲酒や喫煙などと比べて難聴が最も認知症に影響が大きいという報告がある。

過去に約3万人の認知症患者を診療してきた認知症専門医でおくむらメモリークリニック理事長の奥村歩さんが、難聴と認知症の関係性をこう語る。

「患者さんが『耳が聞こえない』と言う場合、音が聞こえていても、言葉の理解ができていないことがあります。人間は耳の奥にある脳の側頭葉で『聴覚理解』をしているのですが、この側頭葉が萎縮することで、言葉が理解できなくなる。難聴の傾向がある時点で、すでに脳が萎縮している可能性があるんです」

聴力の維持は認知症リスクを減らすうえで重要な要素となっている。認知症予防には「人とのコミュニケーション」が最も効果的だというのは奥村さんだ。

「2020年に医学雑誌『ランセット』で発表された論文では、『趣味・人とのつながり・運動』によって、認知症の発症を40%減らせるというデータもあります。適度な運動が健康にいいのはもちろん、ひとりで黙々と取り組む趣味ではなく、人と楽しめる囲碁や将棋、麻雀などが効果的です。

急に趣味を見つけるのが難しい場合は、スーパーの販売員さんなど、見ず知らずの人と立ち話をするのもいいでしょう。1分でいいので、1日で3人と話せたら上出来。自分の耳に他人の声を入れることは毎回同じ内容にならないのが、脳へのいい刺激になります」

人とのコミュニケーションに重点を置くことは、認知症早期発見のきっかけにもなる。初期の自覚症状として挙げられるのは「聞き返しの増加」と「同じことを何度も話す」だ。

「これらは認知症の早期発見につながる症状です。他人の話が聞こえていても言葉の意味がわからない場合もあれば、その反対に、周りから物忘れと思われていたが実は聞こえていなかったというケースもある。老化による聴力低下だと思っていたら、認知症だったというおそれもあるので、注意が必要です」(奥村さん・以下同)

新聞や雑誌、本を読むことや、楽しみにしている朝ドラや大河ドラマの視聴を止めてしまうのも典型的な初期症状だ。

「認知機能が落ちて話の筋が追えなくなると、外国語に接しているような気分になってしまいます。認知症を発見するきっかけとして、男性は相撲、女性は歌謡番組ばかり見るようになったら要注意と考えられます。これらのように、話の筋がわからなくても楽しめるものだけを見るようになると、認知症の始まりと疑うきっかけになります」

社交性を失い、引きこもりがちになったら危険信号だと、奥村さんが続ける。

「井戸端会議を好きな人が参加しなくなったり、友達とよく行っていた趣味のカラオケやゲートボールの集まりを避けるようになると、怪しいですね。趣味自体は楽しめても、合間の世間話が外国人と話しているようにわかりにくくなって、足が遠のいてしまうんです」

五感を研ぎすませて耳の力を補おう

補聴器などを利用して聴力を維持するのも認知症予防の一手だが、たとえ聴力の老化があっても「耳の力」を補う刺激を脳に与え続けることが大切だという。

「聴力以外の五感を研ぎすませることも耳の力を補うことにつながります。視覚、嗅覚、味覚、触覚を生かした脳に対する刺激が、認知症の予防に役立ちます。例えばアルバムの写真を見て『こんなことがあったね』と話し合ったり、さんま焼きやにんにく焼きのような香りの強い食べ物を食べたりすることで、脳にいい影響を与えることもできます」(今野さん)

この五感を使った刺激とコミュニケーションのあわせ技は、さらに効果的だ。

「ボケる前に、長く話さなくても気持ちが通じるような人間関係をつくっておくことが重要です。視覚的情報であるニコッと笑った表情で気持ちが伝わったり、肌の温もりが感じられるスキンシップなど、五感でつきあえる人間関係は、“他者とのつながり感”を強めてくれます。これが“自分らしさ”を見失わないこと、ひいては認知症の予防にもつながります」(奥村さん)

人間関係の構築にも「耳」の力は重要だ。名医が教えるエクササイズや習慣を身につけて、認知症にならない「耳」をつくろう。

難聴と認知症を防ぐエクササイズ

ペットボトル呼吸法

ペットボトル呼吸法
ペットボトル呼吸法(イラスト/黒木督之)
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《ポイント》あごがあがらないように注意

【1】500mlのペットボトルの底に、直径1.5mm程度の穴を3つ開け、立った状態で背筋を伸ばしてボトルをくわえる。穴を大きくすると負荷が減るので気をつける。

【2】鼻から息を吸ってお腹を膨らませたら、6秒以上かけて口から息を吐き、お腹を凹ませる。これを1日5セット行う。慣れたら1日50セット以上を目指す。

ももあげ

ももあげ
ももあげ(イラスト/黒木督之)
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《ポイント》ももをできるだけ高くあげる

両手を腰に添えて立ち、ももを片方ずつ交互に各50回あげる。ももは90度以上を意識して、できるだけ高くあげること。ふらついてしまう場合、椅子や机、棚などにつかまって行う。

※女性セブン2026年1月29日号

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