
テレビ番組の内容がネット上で炎上することも日常茶飯事な昨今。女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子さんは、『探偵ナイトスクープ』での炎上騒動について、強い怒りを感じたという。オバ記者が、思いの丈をぶちまける。
「何度も深呼吸して怒りと血圧をコントロールした」
「うかつにテレビなんかに出ちゃダメ!」って、大人より先に子供たちに教えた方がよくないか?と言いたくなったのが、バラエティー番組『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)の騒動よ。
1988年に始まった長寿番組で、関西を中心に大人気なんだってね。一般人から寄せられた相談・依頼を、お笑い芸人が探偵役になって解決するというもので、今回の依頼人は小学6年生の男の子。彼には5人の弟・妹(0~10才)がいて、両親が仕事で家を空けている間は、食事の準備や赤ちゃんのおむつ替えなどをしているという。
《正直、長男やるの疲れました。生まれてから長男しかやったことがないので一日だけでもいいので次男になりたいです》という依頼内容で、彼がふだんから行っているという家事・育児を、霜降り明星・せいやが“一日長男”となって引き受けた。それがけっこうな仕事量で、母親が帰宅する頃にはヘトヘトになった。せいやが任を終えて玄関の扉を閉めたそのとき、家の中から、「米炊いて、7合!」と母親が長男に命じる声が聞こえてきたシーンで、VTRが締めくくられている。

そりゃあ、そんなシーンを見せられたら、視聴者の脳内には「毒親」とか「虐待」という文字が点滅するわよ。なんたって、その母親も長男も顔出しで、内容はドキュメンタリーという体なんだから。そして当然のこととして、番組宛てに苦情の電話やメールが届いた―だけじゃない。母親を特定して、「長男はヤングケアラーではないか」とSNSで攻撃する輩がわんさと現れた。で、さすがに朝日放送も見逃し配信を停止。番組のウェブサイトでは《取材対象者やご家族への誹謗中傷、詮索、直接の接触は、厳にお控えいただきますようお願い申し上げます》と異例の注意喚起がされたんだって。
あの、読者の皆様、血圧、大丈夫ですか? 私は何度も深呼吸して、怒りと血圧をコントロールしたよ。テレビ局がウェブサイトで「誹謗中傷をするな」って、そりゃあないって。火をつけた人が火消し役もしてみせて大騒ぎすることを「マッチポンプ」ということを、誰か教えてやってよ。
小6の児童を巻き込んだ朝日放送の罪深さ
でも、私が本気で怒ったのはそこじゃないの。
ネット民の本人攻撃が激しくなるにつれて、朝日放送はとんでもない告白をしたのよ。そもそも、番組に寄せられた依頼の原文は、《家族8人みんなで家事や育児を協力しあって頑張っているが、他の兄弟よりも僕が一番頑張っている。他の家族の子供と比べてどうなのか調査して欲しい》だったんだって。実際のところ、家事と育児を担当している父親が乳幼児を残して外出することはなく、母親が「米炊いて、7合」って声を上げたのは「番組の編集・構成上の演出でした」って、あのねぇ!
正直な話、私は、テレビ番組はなんでもかんでもガチで作るべきだなんて思っていない派よ。演出でもやらせでもどっちでもいいんだけど、その目的は、まずは出演者を守るため。次は番組を面白くするため。もちろんやっていいことと悪いことはあるに決まっているわよ。
今回もそうだけど、こんなことが起こると必ず「本人に承諾を得た」とテレビ局は言う。なら聞くけど、どう説明したの? テレビに出たらどうなるか、あらゆる想定をして話したの? さらに今回の朝日放送の罪深さは、小6の児童を巻き込んだことだよ。もし、今回、“演出”した大人の事情を、「いずれ大人になればわかるんだから」と思っているなら、とんでもないよ。
と、寒中に頭はカッカしっぱなしだけど、もうひとつ、言いたいことがある。こんなことがあるとすぐに「ヤングケアラーだ」と騒ぎ立てるけど、どんな家に生まれようと、子供は親に振り回されるのよ。
私もそうで、小6のとき、ちょうどいま頃の季節に、母親から「中学に入ったら部活はやるな。早く家に帰ってこい」と命じられたの。内職に勤しんでいた母親は2才に満たない弟の世話を私にさせようとしたのよね。ところがそれに反対したのが怒鳴るしか能がない義父で、誰かが口を開けば家の中に不穏な空気が流れる。
結局、そのときは母親が働くことをあきらめて、私はバレー部に入部した。その代わり、高校2、3年生のときは毎日、弟の保育園の送り迎えをしたの。家庭の事情はどこにでもある。その中で子供は、戦うところは戦い、あきらめるところはあきらめる。家庭はそんなところと思っているんだけど違うかしら。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2026年2月19・26日号