健康・医療

《高齢者が慎重に検討しなくてはならない“手術”》食道がんと胃がんの開胸・開腹手術は食事や会話などに支障が出る可能性、脳動脈瘤では“放置したほうがいい”ケースも

慎重に検討しなくてはならない手術とは(写真/PIXTA)
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 健康寿命の延伸が目指される中、あらゆる病気は早期発見、早期治療が是とされている。また、医療技術の進化によって、かつては治らなかった病気も、治るようになってきた。しかし、時に判断を間違えればその治療が寿命を縮めてしまうこともある。そこで高齢者が注意すべき手術や検診などについて専門家に取材した。【全3回の第1回】

 千葉県に住むAさん(52才)は3年前に胃がんと診断された78才の母に手術を受けさせたことを、いまも後悔している。

「転移はまだないということで、きちんと切除した方がいいという医師の言うことを疑うことなく、手術を選びました。手術自体は成功しましたが、胃の3分の2を切ってしまったことで、母の“食べる意欲”がみるみる低下。一度食べられなくなると、咀嚼や嚥下の力も衰えて、食べられる量ばかりか食べられるものも減ってしまった。体力が落ちて、社交的な性格だったのに家にこもるようになってしまいました。

 最近では認知症のような症状も見られるようになって、これも“手術の後遺症”だと思っています。後から調べたら、同じ手術でも内視鏡で行うものもあれば、薬や放射線で症状を緩和する方法もあった。高齢の母に無理に手術を受けさせずに、術後の状態も考えればよかったと、申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 Aさんが嘆くように、若い頃とは違い、臓器が老化し、体力も低下しているため受けるダメージには大きな差がある。年を重ねればなおさら、医療の選択は慎重に行わなければ、思いもよらない晩年を迎えることになりかねない。

逆に余命を縮めてしまうデメリットも

「高齢になると、手術で余命が延長するメリットよりも、逆に余命が短くなるデメリットが生じる場合がある」と指摘するのは、医療経済ジャーナリストの室井一辰さんだ。年をとるにつれて体のさまざまな部分が弱り、回復に時間がかかるため、手術が逆効果になるケースもあると続ける。

「体にメスを入れる手術は思ったよりもダメージを与えます。高齢になればなるほど、負担は大きい。合併症が起こるケースも珍しくなく、手術によっては術後のリハビリに手間がかかったり、結果的に回復に至らず、QOL(生活の質)が大きく落ちてしまう人も少なくありません。手術のメリットがデメリットを上回るのかどうかをしっかり検討して判断する必要があります」(室井さん・以下同)

 シニアにとってメリットよりもデメリットが上回りやすい手術として室井さんが挙げるのは、食道がんと胃がんの開胸・開腹手術だ。

「食道がんの場合、食道の一部を切除するため、食事や会話などに支障をきたすことがわかっています。胃がんも同じように、大規模な切除を行うことで消化機能が低下する。食事が困難になると筋力低下が進み介護が必要な状態になる可能性もあります。

 どちらのがんも早期発見できれば内視鏡による手術で切除を回避することができます。ステージが進んでいたとしても、手術を受けて延命効果がどれほどあるのか、平均寿命や健康寿命を鑑み、デメリットが大きいと判断できる場合は避けた方が心身への負担は軽くなると考えられます」

60才過ぎたら受けてはいけない手術
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 体の奥の方で大掛かりな手術が必要なすい臓がんも注意が必要だという。

「特にすい臓がんがほかの臓器や主要な血管に転移している場合は切除が難しく、術後の合併症や再発率が高いといわれています。放射線治療や緩和ケアなど別の選択肢も検討しましょう」

 がんのほかにも、慎重な検討が必要な手術がある。あえて“放っておいてもいい”というのが脳動脈瘤だ。

「破裂してしまえばくも膜下出血などになりますが、小さいものはそのままにしておいても問題ありません。手術をすることで体の負担が大きく感染症になったり、間違えて破裂してしまう可能性があったりする。放置した方がいいケースも多いと思います」

(第2回に続く)

女性セブン202635日号 

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