
階段がつらい、立ち上がりに違和感がある──女性ホルモンの減少が原因のひとつともいわれるひざの変化に対して安静を保つべきか、動かすべきか。その最適解は「少しだけ動かす」こと。繊細なひざをいたわりながら、痛みを手放すための簡単セルフケアをすぐに始めよう。
ひざ痛を放置すると、状況は悪化するばかり
ひざ痛の主な原因は以下の4つ。
【1】骨の変形
【2】軟骨のすり減り
【3】筋肉の衰え
【4】靱帯や半月板の損傷
「この中で、中高年以降にもっとも多いのは、【2】の軟骨がすり減って骨が変形する『変形性ひざ関節症』です」と断言するのは、整体家の宮腰圭さんだ。
「いずれも老化現象ではありますが、人によって白髪の量が違うように、痛みや進行状態には個人差があります」(宮腰さん・以下同)
変形性ひざ関節症になりやすいのは体重の重い人や筋力が弱い人といわれるが、そうとも限らないという。
「太っていても骨が変形しない人もいれば、筋肉があるのに変形が進む人もいます。だから『これさえやっておけば安心』がないのが、ひざの難しいところです」
痛みが発症する理由は、「軟骨がすり減って骨同士がぶつかる」「骨にとげ状の突起(骨棘)ができる」「関節を保護する関節液が過剰にたまる」「関節を包み込み、関節液を分泌する滑膜に炎症が起こる」などによるという。

「初期症状として、動き始めや階段の上り下りで痛みが出ます。また、水(関節液)がたまると足をまっすぐに伸ばせなくなることも。中高年のひざ痛に無理は禁物。動きが難しい体操や負荷の高い運動はおすすめしません。とはいえ、まったく動かさないのも改善が望めない。そこで、痛みを感じたときにおすすめなのが『ひざストン体操』です。痛みが瞬時に消えるものではありませんが、つらさは和らぐはず。高齢者も簡単にできます」
痛くなったらまず10回「ひざストン体操」
足を少し開いてまっすぐ立ち、痛い方のひざをゆっくりと90度くらいまで上げる。手は下ろしても、腰に置いてもOK。

支えが必要な場合は壁の横に立ち、足を上げる側の手を壁に付けて行おう。

上げた足を、真下ではなく少し前方に軽くストンと「伸ばす」ように振り落とす。落とすスピードは自由だが、速すぎるのはNG。1と2を繰り返して10回行い、時間があれば朝昼晩、1日のうちに3〜5回行う。

「ストン」で痛みが和らぐ5つの理由
【1】ひざ関節に空間ができる
「足をストンと落とすことで、狭くなった関節内の空間を広げられます」
【2】ひざに集中している負荷が股関節と足首に分散する
「負荷を分散させる効果は非常に大きく、人によっては即効性があります」
【3】大腿四頭筋(前ももの筋肉群)を鍛える
「足の曲げ伸ばしは大腿四頭筋の筋トレになり、筋肉がひざ関節を守ります」
【4】大腰筋(腰椎と大腿骨をつなぐ筋肉)を鍛える
「上半身と下半身をつなぐ唯一の筋肉『大腰筋』の筋力が低下すると、上半身が不安定に。すると、ひざの動きも不安定になり、骨の変形が進行する。足をゆっくり上げる動作には大腰筋を鍛える効果があります」
【5】関節液の循環を促す
「ストンと足を伸ばして関節内に関節液が行き渡ると、曲げ伸ばしがラクになるだけでなく、多少なりとも軟骨の再生を促進する効果があるといわれています。この体操で、ヒアルロン酸注射をする必要がなくなった人もいましたよ」
痛みが強い日は行わず、途中でひざに痛みを感じたらすぐに中止すること。
「痛くない日に予防のために行えば、ひざをいい状態のまま維持できます。『ひざストン体操』で痛みが緩和しないときは、床から足がつかない状態で座り、ひざをゆらす『ひざブラブラ体操』をしてみてください。こちらも関節液を行き渡らせる効果があります」
ひざストン体操だけじゃない!「ひざブラブラ体操」
ダイニングチェアなど高さのある安定した椅子に座る。

足が床につく場合は、もも裏にクッションなどを敷き、足が床から浮くようにする。痛い方の足を上にして足首を組み、両手で痛い方のひざの皿を持ち、皿を浮かせるように軽く前方に押すようにひざを1分間ゆらす。これを1日に3〜5回行う。

<h2>O脚になってきたら骨の変形のサイン</h2>
加齢とともにひざが外を向いてガニ股になり、O脚になる人が増える。変形性ひざ関節症のシグナルだ。
「O脚になると、ひざの内側の骨(大腿骨とすねの骨)が接近し、ぶつかり合って軟骨が削れてしまいます」(宮腰さん・以下同)
「靴底の外側が減る」「つま先が外を向く」「重心がかかとの外にかかる」人は、まずO脚の改善が必要だ。
「それには内転筋が大事。上記の立ち方で筋力がアップすれば、接近した骨に隙間をつくることができ、痛みの軽減につながります」
体を動かしたい人は、水中や平地でのウオーキングはOKだが、踏み台昇降やランニングなどの跳ねる運動やひざをひねる運動はやめておこう。
「痛みが強いときの対処法は、アイシングがおすすめ。ポリ袋に氷を7〜8個入れてハンカチやバンダナ(タオル以外)で包み、『患部に2〜3分当てたら離す』を3回繰り返せば、半日程度は痛みが抑えられます」
これらを取り入れて、ひざを長持ちさせよう。
ひざ痛の悪化を予防する日常行動
【O脚を改善する立ち方】
つま先をまっすぐ前に向け、歩幅を少し開けて立つ。ひざの内側同士を近づけるように力を入れて10秒キープ×5回。1日に3〜5セット行う。

「衰えた内転筋(内ももの筋肉群)を鍛えることで、O脚の進行を予防します。信号待ちやレジに並んでいる隙間時間を利用して行いましょう。つま先はまっすぐか、内股気味にして、正しい重心も意識してみましょう」(宮腰さん・以下同)

【O脚を改善する歩き方】
靴底の外側がすり減るのは、O脚の典型的な現象。なるべく内側を減らすような「内底歩き」を心がけよう。

足の内側に意識を向けるうちに、かかとの外側にかかりがちな重心も矯正されてくるはずだ。
【ストレスをためない】
日常生活でストレスを抱えていると、ひざの痛みが強く出やすいという。

「通常、私たちは自動的に神経の感度レベルを中程度に抑えています。そうしないと、風が吹くだけで痛みを感じてしまうから。しかし、不安が続くと、危機感から感度のレベルを高めに設定してしまうため、痛みを感じやすくなるのです。ストレスをためないことも重要な対策です」
◆教えてくれたのは:整体家・宮腰圭さん

「骨と筋」代表。アカデミー骨と筋主宰。25年間で4万人以上を施術。380種類以上の体操を考案し「セルフメソッドの発明王」の異名も。著書は『ダイエット・イーティング〜食べ方を変えるだけでも痩せられる』(水と太陽出版)ほか多数。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2026年3月26日・4月2日号