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《映画化決定》がんステージIVのママ「命の日記」が教えてくれた“幸せ” 「なんでもない、ありきたりな普通の日々こそ、かけがえのない時間」

 奇跡的な出産の瞬間を、将一さんが振り返る。

「妊娠27週の2020年7月、帝王切開で娘が生まれました。わずか980gの超低出生体重児でした。

“どちらかは助からないかもしれない”と言われていたので、本当に安堵したのを覚えています。産後2か月で転移した卵巣の摘出手術をしたのですが、腫瘍の重さは、娘の体重の約3倍でした」

 ほかの何ものにも代えられない、家族の時間を手に入れた和さん。だが、がんは無情にも進行を続け、容赦なく和さんを苦しめた。

 その間、和さんと将一さんは、決して生きることを諦めなかった。試していない治療法を求めて、いくつも病院を回った。

《2021年1月28日(木)

 遠藤さんに今日の結果を話したら、また説得された。選択肢の多い東京に行こう。

 職場の上司にも転勤の相談をし続けてくれているみたい。「そんなこと、できるの?」って聞いたら、「いまと同じ営業職は難しいけれど、可能かもしれない。だから、もう少し待ってて」と言われた。

 営業職、できなくなるんだ。ずっとやってきたのに。私の病気のせいだ。私のせいで、本来ならしなくていいはずの苦労をさせてしまっている。それなのに、遠藤さんは「大丈夫、すぐ挽回できるから」としか言わない。》

 体調の波が大きく、ベッドから起き上がれない日も増えていた和さん。それでも精一杯、できることを続けた。

《2021年5月31日(月)

 朝、娘にミルクをあげて、洗濯をして、掃除機もかけた。昼、テレワークで家にいた遠藤さんのために、ペペロンチーノに生卵を落としたパスタを作った。ぺぺ玉。ずっと、こういうことがしたかった。

 家族と同じ空間で過ごす。家事をする。娘をあやして、抱きしめる。些細なことだけど、ものすごく尊く感じる。》

 余命数週間と伝えられた中で、和さんは娘の1才の誕生日を、家族そろって迎えた。

《2021年7月10日(土)

 お座りした娘ちゃんの前に、ケーキを置いてみる。最初は不思議そうに見ていた。だけど、一口食べたらおいしいと思ってくれたのか、手づかみでバクバク。手も足も、顔も白いヨーグルトだらけにして、食パン3枚分をぺろっと食べちゃった。もう、食べ過ぎだよー!

 来年も、絶対にお祝いしたい。生きるぞ!》

衰弱してペンが持てなくても

 2021年9月8日、和さんは旅立つ。そのわずか10日前まで、和さんは日記を書き続けた。衰弱してペンが持てなくても、スマホのメモ帳に打ち込んだ。

 そうして綴られた和さんの命の日記が、今回、4年半の歳月を経て文庫化される。文庫には将一さんと娘の「それからの時間」も描かれている。最愛の妻、そしてママを失った2人がどのようにして前を向き、歩んできたのか。男手ひとつでの子育てはどういったものなのか。微笑ましくもあり、苦悩も感じさせるリアルな父娘の日々だ。

将一さんと娘の「その後の日々」が約1万8000字増補され、文庫化される
写真3枚

 この和さんが記した家族の物語の映画化も決まり、今年10月2日に公開される。和さん役を川口春奈(31才)、将一さん役は高杉真宙(29才)が演じる。川口は、病魔と闘いながら生き抜いた和さんを演じることに全身全霊で挑んだ。将一さんは映画についてこう明かす。

「愛すること、命をつなぐこと、ただ仲よく過ごすこと。どんなささいなきっかけでも構わないので、いま生きている実感を掴んでもらえたらうれしいです。遠藤和。こんな人もいたんだよ、と」

 和さんが遺したのは、悲劇の物語ではない。なにげない日常こそが幸せであり、尊いものであることを教えてくれる、「命の記録」にほかならない。

※女性セブン2026年6月18日号

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