
すべて想像の逆を行く男、高須克弥の破天荒な人生を描く連載『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』! 読めば悩みが全て吹き飛ぶ、そんなパワフルすぎる人生を、どうぞご堪能あれ。
第5話:イエスなる出会いの話【中編】
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その後、克弥は名古屋市内の東海高校に進学。全国の秀才たちが集まる名門校で、初めての下宿生活である。祖母、イマから離れたことで克弥は思いっきり羽を伸ばした。どうせ開業医になるのだから医師免許が取れればどこの医大でもいいと考え、今までいじめられていた時間の全てを麻雀とパチンコに費やした。
高校生ともなればその興味の大半は異性となるのが真っ当だが、克弥はここでも逆だった。生まれた時から女性上位の家庭に育ったせいか、女の人は恋愛の対象ではなく、「崇める存在」だった。顔の好みもなく、セックスをしたいと思ったこともない。実に不健全極まりない高校生である。この原体験が恋愛に異常に淡白な性格を作った。

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高校卒業後、父の母校という理由だけで昭和医大に進学し、上京した。克弥同様、同級生たちも医者の子息が多く、「国家試験に受かればいいんだからそれまで適当にやろう」という空気が入学式から満ち溢れていた。その証拠に初回のクラスに行くと、教室は半分も埋まっていない。
──ここで合っているのかな?
不安に思った克弥は隣の席の女学生に聞いてみた。
「1年の一般教養クラスってここですか?」
「はい」
「…初回からこんなにサボってるんだ?」
自分より不真面目な学生がいることに克弥は喜んだ。その言葉に女学生が反応する。
「教授ちんちん」
「え? 教授のちんちん?」
克弥は改めてその女学生をまじまじと見つめた。ほっそりとした顔立ちに大きな目と美しい鼻筋を持ち、その下にはポテっとした可愛らしい唇がある。真っ直ぐに伸びた黒髪が花柄のワンピースの肩口に少しかかり、動く度にその髪先がかすかに揺れる。まさに絵に描いたようなお嬢様である。
そのお嬢様の口から出た、およそ似つかわしくない響きの単語に周りの学生たちも振り向く。しかし克弥の驚きは他の学生とは違うものだった。
「ちんちんって、君、もしかして三河?」
克弥は使わないが、この単語は何度も聞いたことがある。「コーヒーがちんちんだ」「親父の頭がちんちんだ」など、「熱い」から派生して怒っている状態をも示す方言だ。
「え? ちんちんって東京では言わないの?」
「言わない、いや、言うけど、その…三河の意味では言わないよ」
「三河じゃない意味って何? あ、やだ…そうなんだ」
春の優しい窓あかりが、はにかむ少女を包んでいる。克弥はその情景に見惚れた。
「でもよく三河って分かったわね。あ、もしかしてあなたも…」
「ううん、うんうんうん」
克弥は凝視していたことを知られるのが恥ずかしくて、食い気味で首を振り続けた。(後編につづく)
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【プロフィール】
家守鷹主(いえす・たかす)/テレビ局プロデューサーとして高須克弥氏と出会い、十数年来の友人。今回、その人生を小説として描きたいと依頼したところ、高須氏は一言“YES”と快諾し、ペンネームも命名。かくして、希代の人生物語が幕を開けた。
高須克弥(たかす・かつや)/1945年、愛知県生まれ。医師(美容外科、整形外科、形成外科。学位は医学博士)。2018年に自身の全身がんを公表(発病は2014年)。
※女性セブン2026年7月2日号