健康・医療

「体にいい油」の使い分け方と摂り方 1日に摂るべき量や加熱しない方がいい油は?専門家が解説

さまざまなオイル
体に必要な油と使い方について知ろう(写真/PIXTA)
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「油は健康に悪くて太る」「できるだけ摂らない方がいい」といわれた時代もあったが、いまは「良質な油を積極的に摂る」「油不足は不調を招く」という。どんな油をどれだけ摂ればいいのか。“健康にいい油”の最新情報を調査しました。

油を含む脂質は、糖質やたんぱく質と並ぶ、人間の生命維持や身体活動に欠かせない3大栄養素の1つ。ただし、年を重ねるほどに食が細くなり、脂っこいものを控えるようになると、摂取量がどんどん減る人も多いだろう。

そんな状況を憂い「シニアこそ、もっと油を意識して摂った方がいい」と、油研究の第一人者で、慶應義塾大学医学部化学教室教授の井上浩義さんは言う。

「私たちの体を作る細胞は、油とたんぱく質で構成されています。油を摂る量が少ないとエネルギー不足で疲れやすくなり、細胞膜の働きが低下し、ホルモンの分泌が正常でなくなるなどの問題が生じます。良質な油を適切に摂ることは、むしろ健康のために必要なのです」(井上さん・以下同)

油は摂取過多も不足も健康に悪影響

油が不足すると、体にさまざまな不調が表れる。下記チェック項目の【1】~【4】は、肌や髪に表れるサイン。細胞膜の材料となる油が不足すると肌のバリア機能が低下し、肌荒れや乾燥、髪のパサつきなども起きやすくなるのだ。

【5】~【8】は、脳やメンタルに表れるサイン。脳の60%は脂質でできているため、油不足は集中力や記憶力の低下といった脳疲労を引き起こし、気分の落ち込みやイライラといった心の不調にもつながる。

【9】~【11】は、お腹に表れるサイン。油は腸の“潤滑油”となり、ぜん動運動を促す働きがあるため、油不足が便秘の原因のひとつとも考えられる。

【12】~【15】は、そのほかの体に表れるサイン。油は1gあたり約9kcalもある高カロリー食品。摂りすぎると皮下脂肪として蓄積されるが、逆に不足するとエネルギーに直結しやすく、疲労や免疫力の低下につながる。

「もちろん、油不足だけが不調の原因ではありません。チェックリストのようなサインが見られるなら、油の摂り方を見直してみるといいですね。『日本人の食事摂取基準(2025年版)』(厚生労働省)によると、『脂質の摂取量は総エネルギー量の20〜30%が目標』とされており、成人女性なら1日に約30〜50gになります。さまざまな加工品に油が使われることを考慮すると、1日に20~30g(大さじ2杯ほど)以内を目安にするといいでしょう」

あなたの体に油は足りてる?油不足度チェック

以下の項目で当てはまるものにチェックをつけ、合計数を数えてください。

【1】肌が乾燥しやすい
【2】肌荒れ・赤みが出やすい
【3】髪がパサつく・ツヤがない
【4】爪が割れやすい
【5】集中力が続かない
【6】イライラしやすい
【7】気分が落ち込みやすい
【8】物忘れが増えた気がする
【9】便秘になりやすい
【10】便が硬い
【11】食後に疲れやすい
【12】月経が不安定になった
【13】冷えやすい
【14】疲れやすい・だるい
【15】風邪をひきやすい

チェック項目が【0〜2個】油不足の可能性は低め

チェック項目が【3〜5個】油(特にオメガ3)が不足している可能性

チェック項目が【6個以上】油が不足しているので摂り方を見直す必要がある

※上記の症状が続く場合は、医療機関に相談すること

オメガ3はそのまま、オメガ9は加熱で摂る

「油の摂取による健康効果を期待する場合、油に含まれる脂肪酸の種類と調理方法、風味によって使い分けるといいですね」と井上さんは続ける。

「脂肪酸は炭素・水素・酸素が鎖状に結合した物質のことで、油の持つ健康効果を決める要素の1つです。

その中の必須脂肪酸は体内で作ることができないため食事から摂る必要があります」

必須脂肪酸にはオメガ3とオメガ6があるが、オメガ6系の油(サラダ油など)は加工食品に使われることが多く、摂りすぎると血管を傷つけ、動脈硬化を引き起こし、アレルギーやがんなどの原因になることがわかっているため、摂りすぎには注意が必要だ。

「積極的に摂りたいのは、日本人に圧倒的に不足しているオメガ3系の油。α-リノレン酸、DHA、EPAなどの脂肪酸が含まれ、体内に入ると約30分で消化吸収されます。血液サラサラ、血圧を下げる、活性酸素の除去、脳を活性化、アレルギー症状の緩和といった効果が期待できます。えごま油や亜麻仁油、青魚に含まれる油が代表的で、加熱すると血管と血液を健康に保つα-リノレン酸の効果が損なわれるので、常温のものを生食するのが基本。みそ汁や炒め物など、できあがった料理にかけるといいでしょう」

もうひとつ、加熱しない方がいいのが、中鎖脂肪酸系の油・MCTオイルだ。

「加熱に弱いので、生食が基本です。同じ中鎖脂肪酸を含むココナッツオイルは酸化しにくいため、炒め油として使ったり、煮物などに入れても問題ありません。独特の甘い香りがありますが、慣れると癖になる味わいです」

加熱調理に使う場合は、オリーブオイルなどのオメガ9系の油がおすすめだ。

「オメガ9に豊富な脂肪酸・オレイン酸には、オメガ6のリノール酸の摂りすぎによる健康問題を解消する働きがあります。加熱調理には、オレイン酸を多く含むオメガ9系の油を選ぶといいでしょう」

オリーブオイルは種類によって香り・栄養・加熱耐性が異なるので、調理法によって使い分けるといい。またオメガ9系には風味の穏やかな改良菜種油・キャノーラ油も含まれる。

オイルの分布表
健康油を調理方法と風味により分類した図。どちらも摂取量が増えないよう控えめに摂るといい。選ぶ際の参考にしよう(イラスト/うえだのぶ)
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おいしい油が良質な油

「健康になりたいなら、オメガ3は毎日小さじ1杯ほど摂りましょう」と井上さんは続ける。

「ダイエットをしたい人、日々のエネルギー不足を感じている人の場合は、中鎖脂肪酸を摂る。日々の料理には、オリーブオイル、ごま油、米油のいずれかを使い、摂りすぎないように注意することが大切です」(井上さん・以下同)

加熱に不向きな油もあるため、使い分けるのがおすすめだ。

「かつてエクストラバージンオリーブオイルは加熱せず、生食にするのが推奨されていましたが、これは加熱して豊かな風味が飛んでしまうのを避けるためで健康効果への影響はほとんどありません。摂りすぎなければ、好きなように調理に使って問題ありません」

油を摂る際に、においが気になったり、胃がもたれる場合がある。

「食材を油で加熱すると食材のたんぱく質と結びつき、化学変化が起こります。香ばしい香りや色は食欲をそそりますが、酸化が進むと香りはいやなにおいとなり、油に粘りが生じます。胃に負担がかかり、もたれるのです。

開封したまま3か月以上経った油は酸化が進んで風味が落ちる。未開封でも直射日光が当たる場所に置いてあるなど、保存状態が悪ければ油は酸化し、劣化します。どんなに高価でおいしい油だったとしても、こうした油はおいしくないし、良質な油とは言えません。素直においしいと感じる油が健康にもよい油です」

韓国で美肌効果が話題の「オレショット」

オリーブオイルとレモン果汁を合わせた「オレショット」は、韓国の美容業界などで話題だ。

「オリーブオイルとレモンのビタミンCの相乗効果を期待してのことでしょう。コレステロール値の改善や維持、抗酸化作用による美肌や免疫力アップなどが考えられます。ただ、油の一気飲みにつながるので要注意。料理や飲み物にプラスして摂る方がいいと思います。牛乳に混ぜると、乳化作用でよく混ざります」

健康油リスト
料理にプラスして使う健康油
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健康油リスト
加熱して使える油など4種を解説
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◆教えてくれたのは:慶應義塾大学医学部化学教室教授・井上浩義さん

理学博士、医学博士。低分子医薬品からPM2.5などの環境物質まで、広範な研究分野を追究。食用油やナッツ研究の第一人者。

取材・文/山下和恵

※女性セブン2026年7月2日号