メリットがデメリットを上回るなら選択肢のひとつに
夫婦問題研究家の岡野あつこさんは「仮面夫婦は“フリ”に徹することが大切」と指摘する。
「仮面夫婦は必要な場面では親として、社会人としての役割を果たすという意味で〝夫婦のフリ〟ができる人たちです。だから夫婦としては冷めていても、自分たちに与えられた役割はこなすことができる。特に子供がいる場合、家庭内で父と母の役割を担うことが求められます。つまり家庭内でも必要な場合にはフリをした方がいい。
モラハラやパワハラ、DVなどの被害が生じたらがまんせず離婚すべきですが、互いに役割をこなして合理的にメリットを享受できれば、したたかな仮面夫婦は最強の関係になります」(岡野さん)

岡野さんが指摘する通り、許しがたい裏切りやDV、モラハラなど、夫婦の継続が到底難しい場合もあるだろう。そうした人たちが無理に仮面夫婦を選ぶ必要はなく、あくまで享受できるメリットがデメリットを上回る場合に選択肢に入るということだ。
その背景には、熟年離婚と同様、女性の自立もあるだろう。精神科医の樺沢紫苑さんが言う。
「共働きでお互いに日中は仕事をしているということなら、そもそも接触時間はほとんどないうえに、それぞれ収入があるから経済的な自由もある。家庭内で会話がなくても大きな問題はなく、仕事に行けば気持ちを切り替えられます。
仮面夫婦になろう、としてなっているのではなく、気づいたら仮面夫婦だったというケースが現代では増えているのではないでしょうか」
仮面夫婦は夫婦の終い方を示す選択肢のひとつになるというのは作家の井上ひさしさんと熟年離婚した日本子守唄協会理事長の西舘好子さんだ。
「夫婦はしょせん他人ですが、人はひとりでは生きていけません。昔と違って女性が自己主張できるようになった時代、何十年も連れ添った夫婦の形が老年期に変わるのは当たり前です。
さまざまな選択肢の中から自分たちが選ぶ仮面夫婦は自立した夫婦のひとつの形として、今後ますます増えていくでしょう」
老後を自由に自分らしく生きられれば、仮面の下の素顔はにこやかになるのか。


※女性セブン2026年7月23日号