
幕末の歴史が息づく京都・金戒光明寺の静かな境内で、撮影を控えた2人は固い抱擁を交わした。9月22日放送の時代劇スペシャル『無用庵隠居修行10』(BS朝日)で初共演する、水谷豊(74才)と里見浩太朗(89才)だ。同作は2017年から水谷が主演を務め、年に一度放送されてきた時代劇シリーズ。節目となる10作目に里見がゲスト出演する形だが、大ベテランの初共演が“いまさら”になったのには深い理由があった。
時代劇は地上波のレギュラー枠から姿を消し、NHKやCSの専門チャンネルが主戦場となっている。理由は莫大な制作費がかかることだ。
「現代劇とは異なり、時代考証に沿った大掛かりなセットが必須。エキストラを含む全てのキャストにカツラや衣装が必要で、とにかくコストがかさむんです。それなのにスポンサーが付きにくい。電子機器や自動車などの商品を劇中で使用して宣伝することはできませんから、時代劇を“広告媒体”として考える企業が限られてしまうんです」(テレビ局関係者)
厳しい逆風のなかで、大ベテランの2人はそれぞれ特別な思いを抱いていた。
「『相棒』(テレビ朝日系)のイメージが強い水谷さんですが、実は斜陽の時代劇に長年危機感を抱いていて、どうにか盛り上げたいと考えていました。そんな水谷さんと、“ミスター時代劇”こと里見さんを引き合わせたのが、『無用庵〜』の監督を務める吉川一義さんです。監督が長年親交のあった里見さんへオファーしたことで共演が実現しました。
水谷さんは里見さんとなら時代劇の未来を切り開けると感じたのかもしれません」(前出・テレビ局関係者)
国民的ドラマ『水戸黄門』(TBS系)シリーズで主人公・水戸光圀役を長年演じてきた里見にも、共演すべき理由があった。
「時代劇への思い入れが強い里見さんは、地上波から姿を消した現状を『本当に寂しい』と漏らしていました。水谷さんとの共演を通して、時代劇の素晴らしさをもう一度伝えたいと並々ならぬ覚悟で撮影に臨んだようです。なかでも台本4ページに及ぶ長ぜりふをワンカットで演じきったシーンは、時代劇の真髄が凝縮された圧巻の仕上がりだとか。その姿に水谷さんは、“時代劇の火を消してはいけない”という思いを強めたそうです」(前出・テレビ局関係者)
2人が作り上げる時代劇の幕は上がったばかりだ。
※女性セブン2026年7月30日・8月6日号