
日本の夏の風物詩といえば高校野球。炎天下での試合に対して、さまざまな意見も出ているが、女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子氏は何を思うのか・オバ記者が綴る。
夏の盛りにこんなに似合うイベントはない
「あのさ、モノには限度ってもんがない?」と言いたくてたまらない。何がって、8月5日に開幕した阪神甲子園球場での高校野球よ。この炎天下、テレビ画面には「不要不急の外出はおやめください」というテロップが流れているのに、高校球児は長ズボンとソックスはいて、投げる、打つ、走る。しかもグラウンドは風が通り抜けないスリバチの中だよ。
これをクーラーの効いた部屋で、ぐだぐだビール飲みながらテレビで見るのが夏のお楽しみ、という人がいて、私もあるときまではそう思っていたの。当たり前のことだけど、高校野球は高校3年生で終わり。「留年してもうひと夏戦う」なんてことが許されない。それこそガチの中のガチの勝負だから、勝てば飛び上がり、負ければ天を仰いで泣く。だからこそ、こちらもテレビを見て熱狂する。夏の盛りにこんなに似合うイベントはないんじゃないかしらと思っていたの。
が、ここ数年の夏の暑さはただ事じゃないって。40℃未満は猛暑日で、それを超えたら酷暑日というらしいけど、35℃を超えた日に外に出ると、「ヤバ!」と体が勝手に身構える。うちの近くの神田川をのぞくと、流れているのは水ではなくて熱い油に見えるものね。さらに歩き出すと汗が噴き出して、日なたに出るとクラッと立ちくらみがしそうになる。ほんと、テレビで流す熱中症警戒アラートはダテじゃないんだなって思うわよ。
こういうとき、大人たちはすぐに「やる、やらないは選手の意見を聞いて決めよう」と言うけど、何言ってんだかね。球児たちに聞いたら「やります。やらせてください」って言うに決まっているよ。その日を目指して少年野球の頃から試練の道を突き進んできたんだから。やっと47都道府県の代表校に選ばれたんだから。でも、高校生が自分の体の異変を試合の最中に感じられるかというと、まず無理だね。
69才の私が自分の体の声が聞こえるようになったのは、不整脈やら卵巣嚢腫やら、笑い事じゃ済まない異変が起きた50代からだもの。
炎天下の金管楽器って、凶器じゃないの?
心配なのは選手の熱中症だけじゃない。甲子園に出るような強豪校はブラスバンド部も選りすぐりの心技体の持ち主で、選手に負けず劣らずの試練をくぐり抜けてきているはず。しかし、そもそも炎天下のトランペットにトロンボーン、チューバにホルンの金管楽器って、凶器じゃないの? 大舞台で手元が狂って、いつケガ人が出てもおかしくないんじゃないか。
もっといえば、身の危険は選手やブラスバンドだけじゃないよ。アルプススタンドには、孫の晴れ舞台を見たいと、私と同世代の前期高齢者が大勢、日本各地からバスを仕立ててやってくる。

ってことは過半数が睡眠不足なのよ。甲子園の外野席には日陰となる場所がほぼないというではないの。いくらカチ割り氷を口に含んだって間に合わないって。
さらにさらに、心配をしだすと止まらないオバ。熱中症というと小まめに水分補給をしていれば大丈夫だと思われているけど、違うんだってね。長く炎天下にいると脳や臓器の温度(深部体温)が上がって、そうなると意識がもうろうとして、呼びかけに反応しない、おかしな返答をするなど、誰が見てもヤバい状態になる。こうなると待ったなし。即、救急車なんだけど、もしこれが集団で起きたらどうするよ。
もちろん高野連も対策はしている。昨年から大会史上初めて夕方に開会式を行い、そのあと午後5時半から1試合を行うそう。翌2日目は開会式に出た選手の疲労を考慮して、午後4時から2試合。2部制で1日4試合の日は朝の第1試合の後に観客を入れ替えて、午後の部は午後1時半から3試合を行うというの。
過去、選手に熱中症の疑いが多かった時間帯の試合を避けるためだって。それだけじゃない。出場している選手はサーモグラフィーで体温を測り、高い選手がいればケアするって言うんだけどさ。
なんでそこまでして真夏開催にこだわるのか、よ。集団で熱中症なんか出たらそれこそ開催そのものができなくなるよ。
悪いことは言わない。高校野球、100年の歴史だ、伝統だ、青春だなんて言ってないで、秋開催にしようよ、ね。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2026年8月20・27日号