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《刑務所のほうがマシ》おぼっちゃま高須克弥にこき使われた少女の話【第11話後編】『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』

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すべて想像の逆を行く男、高須克弥の破天荒な人生を描く連載『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』! 読めば悩みが全て吹き飛ぶ、そんなパワフルすぎる人生を、どうぞご堪能あれ。

第11話:美容整形と出会う話【後編】

 イマと登代子はこの息子が帰って来るとテンションが上がった。高須医院の看護婦は食事の時には皆が同じ食卓を囲むのだが、普段はメザシ1匹とキャベツの煮浸し、米、味噌汁しか出ない。しかしこの息子が帰って来ると、見たこともない豪華料理が並んだ。息子にいいものを食べさせたいという親心なのだろうが、従業員には「一切それらには手を付けてはならない」というお達しがあったため、ミユキはただ見つめるだけという地獄を味わった。

──きっと、おぼっちゃまはそんなことも知らないのだろう。

 遥か遠くで談笑する克弥の目が、ミユキと合うことは一度もなかった。

 それから4年後。おぼっちゃまが大学院を卒業して帰って来た。それまで小児科と産科しか無かった高須医院で、克弥はいきなり整形外科を始めた。始めたはいいが、それに対応できる看護婦が一人もいない。救急車が来ると克弥があれこれ指示を出すが、何を言っているのか誰も分からない。せっかちな克弥が「ここはアフリカか!」と癇癪を起こす。すると先輩たちは器具を取りにいくふりをして蜘蛛の子を散らすように消えていき、逃げるタイミングを失ったミユキだけがそこに残る。この時ついに克弥と目が合った。仕方なく克弥はミユキに指示を出すが、ミユキこそ一番分からない。

「これじゃ出来ない!」

 大声と共にメスや靴、腕時計が飛んでくる。それでも分からないものは分からないので黙っていると、克弥は一人で処置をやり遂げてしまう。癇癪は起こすが、すぐに醒めるようだ。そんな毎日の中でミユキは誰よりも知識を得ていった。整形外科の知識はもとより、高須克弥という男との接し方を学んだのである。

 克弥という人は意地悪なわけでも横柄なわけでもなく、分からなければ丁寧に教えてくれる。しかしその教えは1回までで、2回聞けば怒りだす。1回で理解出来ない人のことを本気で理解出来ないようだった。

「僕は1回手術を見たら、絶対に忘れないんだけどなあ」

──人類全員がそうじゃないわよ。

 ミユキはもちろん言葉にはできないので、半端ない集中力で克弥の指示を覚えた。そして覚えることで、ますます克弥から必要とされるという負の連鎖に陥った。

高須医院の従業員たち。右から2人目がミユキ、4人目が克弥の母・登代子。(本人提供)
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 また克弥は誰よりも働いた。朝一番早く診察室にやって来て、一番遅く帰る。診察室の電気がついていると誰も帰ることが出来ないし、帰ったとしても寮が敷地内にあるので何かあれば呼ばれる。実に迷惑な話である。克弥が来る前までは私生活はないにしても、夜は寝ることが出来た。それが今では、

「来る救急車は1台も断るな」

 との指示で24時間体制である。刑務所だってもう少し寝かせてくれるだろう。

 また有り難くないことに、開設したばかりの整形外科にはなぜか救急車がよく来た。ミユキの夜間高校の同級生には救急隊員が多く、

「なんで高須医院にばかり来るの?」

 と聞くと、真相が明らかになった。

「ああ、それは院長がこっそりタバコをくれるからね」

 当時高かった外国製タバコを、「またよろしくね」と賄賂として渡していたのだというから、おぼっちゃまのくせに策士というか、抜かりがない。

「一刻も早く辞めなくてはならない」

 この時、ミユキは初めて、しかも本気でそう思った。高須クリニック開業の3年前の話である。(第12話につづく)

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【プロフィール】
家守鷹主(いえす・たかす)/テレビ局プロデューサーとして高須克弥氏と出会い、十数年来の友人。今回、その人生を小説として描きたいと依頼したところ、高須氏は一言“YES”と快諾し、ペンネームも命名。かくして、希代の人生物語が幕を開けた。

高須克弥(たかす・かつや)/1945年、愛知県生まれ。医師(美容外科、整形外科、形成外科。学位は医学博士)。2018年に自身の全身がんを公表(発病は2014年)。

※女性セブン2026年9月3日号