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「裏街道だ」「それは医療事故でクビになった奴がやること」猛反対された美容外科の道【第13話前編】『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』

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すべて想像の逆を行く男、高須克弥の破天荒な人生を描く連載『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』! 読めば悩みが全て吹き飛ぶ、そんなパワフルすぎる人生を、どうぞご堪能あれ。

第13話:簡単には開業出来ない話【前編】

高須病院の従業員と。前列中央が克弥、左隣が母・登代子、右隣が妻・シヅ。ミユキは最後列の左から4番目。(本人提供)
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「こんな田舎にいたくない!」

 高須家親族会議の席で克弥は言い放った。そこにいる全員が“こんな田舎”で生きている人々である。イマ、登代子をはじめ、親戚一同が集まっている。シヅも、妹とその夫も亡き父の兄弟もいた。

 その親戚全員がなんらかの医者だった。妹は歯科医になっており、その夫は外科医だった。また父は男ばかりの5人兄弟の末っ子で、その4人の兄も全員医者だった。

「何が不満だん? かっちゃんの言う通り、高須病院を開いただら」

 登代子が克弥を宥める。

「僕が一生懸命やっても経営が成り立たないと言われる。早く治しても非難される。結局、ここには病気を治すよりも、保険金が欲しい貧乏人しかいないから悪いんだ!」

 故郷に対するディスりが凄い。

「はっきり言って、貧乏人にはうんざりだ! 僕は日本の保険制度を無視して、金持ちだけにいい治療をして感謝されたい!」

 これを聞けば「高須克弥とはなんと酷い人間だ」と思うだろう。しかし、克弥の名誉のために真意を翻訳するとこうである。

「健康保険がきかない自由診療こそ、患者の全額負担なので早く治せば喜ばれる。それこそが自分が求める医療であり、その分野で勝負をしたい。それには患者の所得が多い都会の方がいい」

 こう聞けば、言ってる事は極めてまともなのだが、何せ口が悪すぎて、おぼっちゃまの貧乏人差別にしか聞こえないのが、克弥の実に残念なところである。

「ほいで、そのいい治療ってのは何だん?」

 登代子が聞くと克弥は言った。

「美容専門の整形外科だよ」

 場が凍りついた。それまで「おぼっちゃまのわがままね、はいはい」と聞き流していた親族たちが真顔になる。当時はまだ「美容外科」という言葉もない時代で、言葉がないということは、医者として認められていないということを意味した。

「美容専門とはなんだあ!」

 父の兄、つまり克弥の伯父が噛み付く。彼らは“悪魔の松田5兄弟”と言われ、幼少の頃から相当なワルとして有名だった。そのうちの1人が口を開くと他がその後に続く。

「そんなもんは医療事故を起こして病院をクビになったハンパもんがやることだわ」

「お前はなんだん? 闇医者になるんかん?」

「そんな裏街道で生きてくんなら、高須の家から籍を外せ!」

 酷い言われようだが、実際当時の美容専門医に対する認識はこれが一般的だった。医療ミスやトラブルで医療業界に居られなくなった医者が、ラブホテル街などでひっそりとクリニックを開いているというのが実情だったのである。故に松田兄弟の反応も無理はないが、克弥はこの伯父たちが大嫌いだったのである。

 父の葬儀の場で、12歳の克弥に向かって彼らが言ったことを克弥は忘れていない。

「いいかん、今後はわしらを頼るなよ」

「金なんか貸さんでな」

「顔に泥なんか塗ったら承知しんでな」

 父を亡くした直後の少年にかける言葉ではない。この兄弟、ワルなのは素行だけでなく性格もそうだったのだ。

──こんな時だけ親戚ぶりやがって。

 克弥が口喧嘩を挑もうとした矢先に、登代子が窓際に走った。

「そんな胡散臭いもんになるなら、わたしゃ飛び降りて死んでやるでな!」

「どうぞ、どうぞ! でもすぐ治すよ」

 克弥は反射的に、登代子のいつものセリフに、いつもの返しをしてしまった。もはや伝統芸である。これで場の空気が少し変わったので克弥は説明を始めた。(後編につづく)

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【プロフィール】
家守鷹主(いえす・たかす)/テレビ局プロデューサーとして高須克弥氏と出会い、十数年来の友人。今回、その人生を小説として描きたいと依頼したところ、高須氏は一言“YES”と快諾し、ペンネームも命名。かくして、希代の人生物語が幕を開けた。

高須克弥(たかす・かつや)/1945年、愛知県生まれ。医師(美容外科、整形外科、形成外科。学位は医学博士)。2018年に自身の全身がんを公表(発病は2014年)。

※女性セブン2026年9月17日号