健康・医療

《いま「運動していない人」ほど期待大》「夏の冷え・だるさ」を解消! 50歳から始める「おうち筋肉づくり」と「朝たんぱく」の習慣 

ウォーキングしているシニア
筋肉のつくり方の基本は歩くこと。ほかにもストレッチや体幹を鍛えていきたい(写真/PIXTA)
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夏なのに体が冷える、だるさが続く、むくむ…そんな症状を抱えているあなた。それは夏バテではなく「夏の冷え」が原因かも。放っておけば、さまざまな不調につながる冷えを改善するカギは筋肉をつけることにあった。筋肉の減少が顕著になるとされるのは50才。だからこそ、50才からの筋肉づくりが必要なのだ。

埼玉県在住の主婦・野口葵さん(仮名・49才)がこう漏らす。

「毎日の暑さに負けて、冷房をつけた部屋で長時間過ごし、食事もそうめんやそばといった冷たいものばかり。アイスクリームやビールに手が伸びる回数も増え、体の重だるい感じがずっと抜けなくて、とてもしんどいです」

猛暑が続き、野口さんのように冷房の効いた室内にこもって冷たい飲み物や食べ物を摂ることが増えたという人は多いはず。

その結果、だるさや食欲不振といった夏特有の不調に悩まされる女性は少なくない。イシハラクリニック副院長の石原新菜さんは「夏こそ体が冷えやすい」と話す。

「夏はエアコンや冷たいものの摂りすぎによって血管が収縮し、血行不良になる人が増えます。冷えはむくみやコリの原因になる上、代謝や免疫力の低下を招いて不調を引き起こすので、軽視してはいけません」

順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科教授の谷本道哉さんもこう指摘する。

「寒冷地の冬は寒さと豪雪のため、その地域に住む人々は外に出なくなって活動量が減り、体が弱ってしまうという問題が以前から指摘されていました。同じことが猛暑による家ごもりのせいで夏にも起きています」

命に関わる病気も遠ざけられる

それを解決するカギが「筋肉」だ。筋肉の重要な働きの1つに、熱を作り出す作用がある。

「体温の約40%は筋肉によって作られており、安静時であっても常に熱を生み出し続けています。だからこそ、冷えには筋肉をつけることが大事なのです。また、体温が上がれば免疫力も高まるので、感染症にかかりにくくなりますし、がんの発症を抑えやすくなることも期待されます。筋肉をつければ基礎代謝も上がるので、太りにくい体にもなるのです」(石原さん)

同志社大学スポーツ健康科学部教授の石井好二郎さんが続ける。

「筋肉は水分を多く含む組織です。加齢によって筋肉量が減ると、体内に保持できる水分量も少なくなりやすいため、筋肉量を維持することは脱水予防の一助になります。筋肉が保てているということは、同年代の人と比べて多くの“うるおいを保てる器”を持っているということになるのです」

さらに、筋肉は命にかかわる重篤な病気をも遠ざけてくれる。

「多くの研究で、握力が強い人は死亡率が低く、心疾患や糖尿病になりにくいという結果が出ています。特に病気になった場合の死亡率でその差が顕著です。握力が強い人は病気になっても生き延びるということ。

握力と全身の筋力、筋肉量は関係しているので、筋力、筋肉量が多い人は病気になりにくいと言えるでしょう」(谷本さん)

石原さんも筋肉のメリットをこう言い添える。

「筋肉を保持しているということは日常的に運動している証であり、糖尿病や高脂血症、高血圧症、肥満などの予防や改善に役立ちます。これらの生活習慣病を予防できていれば、その先にある脳梗塞や心筋梗塞、アルツハイマー型認知症といった命にかかわる大きな病気も遠ざけられるわけです」

谷本さんが続ける。

「糖質を上手に燃やせるかどうかは健康で若い体の維持にとても重要です。それがうまくできなくなると糖尿病になってしまう。筋トレをすれば、血糖値を下げるインスリンの感受性が改善することがわかっており、糖質をうまく燃やせる体に近づける。糖質をうまく燃やせれば慢性炎症や抗酸化作用にもいい影響を与え、これはすなわち、老化を抑え、若々しい体を保つ一助になります」

石井さんも「筋肉を維持すれば、健康と要介護のはざまの虚弱な状態である『フレイル』の予防になる」と話す。

「筋肉を維持することはフレイル予防の重要な柱の1つです。筋力が低下して外出の機会が減ると、社会とのつながりが失われやすくなります。社会とのつながりの喪失は『フレイルドミノ』の最初の入り口です。

そこから活動量や食欲の低下、低栄養、サルコペニア、さらなる筋力低下へと続く『フレイルサイクル』につながる可能性があります。筋肉を維持して動ける体を保つことは社会とつながり続け、この悪循環を防ぐ上でも非常に重要です」(石井さん・以下同)

体温を調節し、老廃物の排出を促すといった機能の維持にも、筋肉が深くかかわっている。

「運動を始めてから汗が出始めるまでの時間は加齢とともに遅くなりますが、同年齢でも筋肉量が多い人の場合は発汗機能が高いことがわかっています。また、排尿や排便のコントロールには、骨盤底筋や括約筋もかかわっています。これらを含め、筋肉を維持することは、高齢になっても自立度の高い生活を送る上で重要です」

筋肉のメリットはまだまだある。

「高齢者は暑さやのどの渇きを感じにくく、発汗など体から熱を逃がす機能も低下するため、室内でも熱中症に注意が必要です。運動習慣は、発汗や皮膚血流による体温調節機能を保つ助けになります。ただし、熱中症予防の基本は、暑さを感じなくても室温を確認し、エアコンを使い、こまめに水分を摂ることです」

1分の片足立ちは53分歩くのと同じ

しかし、何もしなければ筋肉は加齢とともに緩やかに減少していく。

「筋肉は30才頃から減っていき、50才以降は筋肉をつくる能力が落ちることに、活動量が減ることも相まって急坂を下るように一気に減少していきます。女性の場合、女性ホルモンのエストロゲンが筋肉合成に関与しているため、閉経も筋肉減少に影響すると考えられています」(谷本さん・以下同)

加齢による筋肉の減少は避けて通れないが、対策はある。

「筋肉は何才からでも増やせます。下り坂を緩やかにするだけでなく、“V字回復”もできます。初心者は不安でしょうが、むしろこれまで運動していない人ほど筋トレ効果は高い。伸びしろが大きいんですよ」

50才から特に気をつけたい筋肉減少―では、具体的にどの筋肉を、どのように鍛えたらいいのだろうか。

「基本は歩くことです。全身の筋肉の約70%は下半身にあるため、下半身を動かすことが効率よく筋肉を増やすことにつながります」(石原さん)

谷本さんは次に鍛えるべき部位として、体幹の存在を挙げる。

「体幹といえば腹筋が思い浮かびますが、実は鍛えるなら背筋の方が重要。人体はつま先が前に出た前かがみの姿勢で、後ろから背筋で支えているからです。

鍛え方は簡単。椅子に座って足を開き、手を胸の前で交差させます。ここから、背中を丸めてお辞儀をするように前に倒し、背中を反らせて起き上がる運動を繰り返す。回数は10~15回程度、体力に合わせてやってください。このトレーニングは同時にお尻の大殿筋も鍛えられます」(谷本さん)

トレーニングと聞くと高額な器具を購入したり、ジムへの入会などハードルが高いように感じるが、背筋の鍛え方同様、自宅で簡単にできる種目は多い。

「下半身を鍛えるにはスクワットがおすすめ。最初は椅子に腰かけるように腰を下ろすスクワットを10回を目標に何日か続けて、余裕が出てきたら回数を増やしましょう。それがきつい人は、ひざを90度に曲げるもも上げを、30回を目安に行うといいでしょう」(石原さん)

石井さんは、自宅にある家具などをトレーニング器具として活用する方法をすすめる。

「夏は冷房の効いた涼しい室内で、壁に手をつく腕立て伏せや、安定した椅子からの立ち座りを行うのがおすすめです。軽い負荷でも、痛みのない範囲から始め、最後の数回を“ややきつい”と感じる程度に回数や姿勢を調整すれば、効果が期待できます。

できない日があっても大丈夫です。次の機会から再開すればよく、慣れてきたら上半身と下半身の運動を組み合わせ、回数や負荷を少しずつ増やしていってください」

なにより運動を特別なことではなく、暮らしの一部として取り入れる工夫が重要だ。

「テレビでCMが流れている間に片足立ちをするのをおすすめします。片足立ち1分は、53分間歩いたのと同じ負荷がかかるとされています。本来は3セットが理想的ですが、1セットだけでも効果があります」(石原さん)

トレーニングは筋肉が張るまで

谷本さんは、「日常生活における決め事が重要」と説く。

「たとえば、“食事の前に筋トレを必ず1種目する”と決め、それで習慣化を維持する。なぜ食事前がいいかというと、運動後の筋肉はインスリン感受性が高まります。すると、栄養が筋肉に届きやすくなるので、筋トレ効果も上がります」

効果的にトレーニングするには、知っておきたい注意事項がある。

「筋肉に張りが出て、いわゆるパンプアップ(トレーニング後に筋肉が大きくなる現象)した状態になるまで行うことが重要です。持久力のある遅筋だけでなく、速筋まできちんと使うことで、しっかり筋肉がつくからです。

パンプアップする手前でやめてしまうと残念ながら効果が低くなってしまう。できるだけ限界近くまで行い、筋肉が張る感覚を得られるまでがんばりましょう」(谷本さん・以下同)

ほかにもポイントがある。

「加齢に伴い、筋肉量が落ちるだけでなく、筋肉は硬く、伸びにくくなります。それを避けるためにはストレッチをした方がいい。体が柔らかくなると動きやすくなるので、快適な体にもなる。お風呂上がりなどに床に長座で座り、前屈をするのがおすすめです」

無理をしすぎないことも、長く続けるためのコツだ。

「初日から張り切りすぎないでください。筋肉痛が激しく出るからです。徐々に慣らしていくと自分のいいペースが見えてきて、筋肉痛も出にくくなる。あせらず、少しずつトレーニングを重ねていきましょう」

食事からの栄養も欠かせない。谷本さんは「朝食でのたんぱく質が不足しがち」と話す。

ゆで卵
筋肉を育てるためには食事も重要。いつもの食事にたんぱく質を少し増やすことを意識すると、バランスがよくなる(写真/PIXTA)
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「1食に20gがひとつの目安。昼・夜は特に意識しなくても摂れているので、朝にしっかりたんぱく質を摂ることを意識しましょう。卵や納豆のほか、水切りのギリシャヨーグルトはたんぱく質の含有量が多いのでぜひ活用してください」

具体的な食材選びについて、石原さんがアドバイスする。

「たんぱく質イコール肉だと思って食べすぎるとコレステロール値が高くなり、血液がドロドロになり動脈硬化が進む。なによりバランスが悪いので、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質を1対1で摂るといいです。現代人は動物性の食事が増え、植物性たんぱく質が減りがち。納豆を1パック足す、豆乳を200ml飲むだけでバランスが取りやすくなります。1食で一気に増やすのではなく、ちょこちょこ摂ると効果的にプラスできます」

適度な運動とバランスの取れた食事を日々の習慣として積み重ねていくことが、夏の冷えに負けない、いつまでも強くしなやかな体をつくってくれるのだ。

※女性セブン2026年9月3日号