
「住み慣れた自宅か、プロがそばにいてくれる高齢者ホームか」――人生の最期は、誰しもひとりで暮らすのは難しくなる。だからこそ、この“究極の選択”に悩む人は多いだろう。自分にとって、家族にとって最善の選択をするために必要な知識と準備について専門家に取材した。【前後編の前編】
自宅で「自分らしく過ごす」か、施設で「安全に暮らす」か
世界でもトップクラスの長寿を誇る日本でも、人生の最期の瞬間まで若々しく、元気でいられる人はほとんどいない。
自立して元気に暮らすことができるとされる「健康寿命」は、女性75.45才、男性72.57才。特に女性は、平均寿命である87.33才までは11年以上もある。つまり、長い人生の終盤は、誰もが人の手を借りて生きることになるのだ。その期間を「自宅」で過ごすか、「施設」で過ごすかは、人生最後の重要な選択と言えるだろう。
「“いままで通りの暮らしを続けたい”と自宅を希望する人が増えている」と話すのは、関西医療大学保健医療学部作業療法学科准教授の山田隆人さんだ。
「自宅なら家族やペット、地域のつながりなど、それまでの暮らしを保ったまま、自分のペースで生活できる。自分のアイデンティティーを保ちやすいのが、最期を自宅で過ごす大きなメリットと言えるでしょう」
だが加齢とともに体の機能が衰えると、そうしたメリットよりも、喪失感やストレスの方が大きくなるケースも少なくない。

「家の中の修理や日々の家事、電球の取り替えなど、どうしても人に頼らなければいけないことが増えて心理的負担が増えると同時に、介護する側の家族などにとっても“いつ終わるのかわからない負担”がかかり続けるというデメリットがあります」(山田さん)
一方、施設は「安心できる場所」で「頼るための場所」。「家族に迷惑をかけたくない」という思いに応えると同時に、お金を払ってサービスを受けるという割り切りがある。現段階では自立した生活が送れていても、“誰かがそばにいる安心感”を求めて入居しておき、いざ介護が必要になればサービスを受ける人も増えている。“自宅よりも圧倒的に安全性が高い”とも評されるが、デメリットもある。介護アドバイザーの横井孝治さんが言う。
「介護士のほか、施設によっては医師や看護師が常駐しているなど、緊急事態にすぐに対応してもらえる安全性が最大のメリットです。
ただし集団生活なので、自宅と比べると自由が少なく、家族や友人にも会いづらくなります。正月やお盆などに自宅に戻ることはできますが、迎え入れるために家族が払う労力はかなりのもの。施設内での面会で済ますことも増えます」
自宅と施設、どちらにも大きなメリットとデメリットがあり、安易に「最期は家で死にたい」とも「老後は施設に入るから大丈夫」とも言い難いのが現実だ。
人生最期に自分も家族も後悔しない選択のために、いま何を知り、どんな準備をすればいいのだろうか。
