
どんな人であろうと、必ず最期の瞬間がやってくる。そのとき、残された者には「あのとき、ああすればよかった」という心残りが生まれる。完璧な別れ、看取りはないからこそ、少しでもそれに近づくために知っておきたい「知識」を専門家に聞いた。【前後編の後編】
最期まで自宅で過ごすために
悔いのない最期を迎えるには周囲のサポートが欠かせない。だが、時には周りの声が逆効果となるため注意が必要だ。『後悔しない死の迎え方』の著者で看護師の後閑愛実さんが言う。
「看取りで後悔しないためには医療者と患者やその家族が良好なコミュニケーションを取ることが大切です。ある調査では、終末期における医療者の思慮に欠ける言葉によって、患者の看取りが3.9倍つらくなるとの結果が出ました。理想の最期のためには周囲のスタッフを最善の味方にすることが必要になります」
多くの人が幸せに逝くために望む「自宅での死」や「痛くない死」はどうすれば実現できるか。鈴木内科医院の舛森悠さんはこう語る。
「最期まで自宅で過ごすことを望むなら、24時間対応をしてくれる、かかりつけの在宅医を見つけることが必須です。
加えて、24時間対応の訪問看護サービスを利用することも同じくらい大事でしょう」
日本の在宅医療は充実しており、患者宅を定期的に訪問して健康管理をするだけでなく、往診や投薬、治療やリハビリといった広い範囲をカバーする。

相性のよい在宅医を見つけることも大切だ。めぐみ在宅クリニック院長の小澤竹俊さんが指摘する。
「重要なのは病状を説明するだけでなく、当事者の話を聞くことができること。看取りは大切な人を失っていくプロセスなので、患者の思いと家族の思いをつなげる在宅医が必要です。医学的な情報を、知識の足りない患者や家族にわかりやすく伝えるコミュニケーション能力も求められます」
実際に在宅医を探す際、頼りになるのが地元の訪問看護ステーションだ。
「看取りや医療対応などを客観的に評価できるのは訪問看護の専門家です。地域の評判にいちばん詳しいのは地元の訪問看護ステーションなので、直接電話をして患者の状態や家庭環境などを伝え、“この地域に信頼できる在宅医はいますか”とストレートに尋ねてみる。複数の訪問看護師に尋ねて同じ名が挙がる在宅医は信頼度が高いといえます」(小澤さん)
訪問診療を利用する患者は介護が必要なケースがほとんどなので、ケアマネジャーに相談して介護ベッドやポータブルトイレなどの住環境を整備することも欠かせない。