老後のこと、家族のこと、お金のこと、人間関係…生きていれば尽きることのない悩みや不安。一度考えだすと悶々と悩み続けてしまい、気づけばいつも悲しみや苦しみにとり憑かれ、負のループから抜け出せなくなってしまっている──そんな心の状態から解放される手段として、今“瞑想”が注目されている。一流企業の研修にも取り入れられているという瞑想の簡単なやり方を、精神科医の先生に教えてもらいました!
医師・藤井英雄が考える「1日10秒マインドフルネス」
私たち現代人は日々、多くの悩みやストレスを抱えながら生きている。そういったネガティブ思考から解放される手段として、今注目されているのが“瞑想”だ。中でも、いち早く着目したのは海外企業『グーグル』。2007年から社員研修に瞑想を取り入れ、ストレス緩和、集中力や人間関係の向上などを報告すると、『インテル』や『フェイスブック』『P&G』『アップル』なども導入したという。
しかし、瞑想と聞くと「怪しくないの?」という先入観を持つ人も多い。そこで、『1日10秒マインドフルネス』(大和書房)の著者であり、自身も40年の瞑想歴を持つ精神科医の藤井英雄さんにその効果を聞いた。
「瞑想は、古来から使われてきたテクニックで、仏教の中でブッダが悟りを得るために導き出した方法の1つです。ブッダは苦しみにとらわれる四苦八苦の世界から解放される手段として、瞑想にたどり着きました。それは、悩みや苦しみの原因は自分自身のネガティブな感情が生み出しているということ。瞑想を通じて、“今、ここ”という感覚に集中することで、悩みや苦しみの思考を解放できると悟ったのです」(藤井さん・以下同)
この教えが、宗教を超えて、やがて欧米に伝わり、ストレス対策として医学的に心理療法の中にも取り入れられるようになったという。
「これが、海外企業が注目する“マインドフルネス瞑想”と呼ばれるもので、今、世界中で話題になっているのです」
瞑想している時は「今、ここ」という現実に集中しているため、忘れたい過去や不安な将来といったネガティブなことを考えないようにできる。ただ、そういった状態を日々の生活の中で持続することはなかなか難しく、気づけばまた、いつものお悩みモードに戻ってしまう。
そこで、藤井さんは日常の中で1日たった10秒、エクササイズ感覚で行える“ながら瞑想”を提案している。
「食べる、歩く、音を聞く、なんでもよいので、“今、ここ”の感覚に10秒だけ集中してください。そして、余計なことは考えず、とにかく意識を“感じる”ことだけに集中させるんです」
瞑想のいちばんの効果は、悩みが減ること。ただし、瞑想によって悩み続ける思考を手放せるのは一時的である。
「ですから、その瞬間を増やしていくことが大切なんです。繰り返すことで自由を感じる時間が増えていきますよ」
どんな効果?時間は?瞑想のキホン Q&A
Q.どんな効果があるの?
「過去の悩みや将来の不安など、ネガティブな思考を手放すことができるため、余計な考えに振り回される時間が減っていき、今現在を自由に生きようと、前向きになることができます」
Q.どうやってやるの?
「瞑想というと目を閉じて行うものと思うかもしれませんが、大切なのは“感じる”こと。自分の呼吸や聞こえる音など、今この瞬間に起こっていることに意識を集中するだけでOKです」
Q.どこでやってもいいの?
「静かな環境の方が雑念が湧きにくく集中できますが、“今、ここ”に集中することが大切なので、電車の中で雑音を聞く、食事中によく噛んで味わうなど、感覚を澄ませばどこでも行うことができます」
Q.決まりのポーズはあるの?
「瞑想というと座禅をイメージする人も多いと思いますが、“ながら瞑想”は、椅子に座っても、歩いていても、家事をしながらでもできるのがポイント。日常生活に取り入れやすいので、1日何回でも行えます」
Q.長時間やった方がいい?
「修行僧になると1時間くらい行う人もいますが、初心者は1日10秒だっていいんです。慣れてきたら、3分、5分、10分とやる時間を増やしていくといいですね。長くやって疲れて続かなくなるよりも、毎日行うことが重要です」
Q.1日に何回行うといいの?
「心が悩みから解放される状態はあまり長くは続かないのが特徴。なので、できるだけ継続して何度も行うことが大切です。繰り返すうちに、その瞬間が増えていくのです」
この瞑想を行うことで、以下のように3段階で変化が得られるという。
瞑想による変化
【1】ネガティブな思考がずっと頭を離れない
悩みや不安が頭を離れず、気づくといつもネガティブな思考に陥っている。過去と未来にとらわれ、悩みを自分自身が生み出して苦しんでいることに気づけない。
【2】“今”に集中することで悩みを一瞬でも手放せる
今、目の前で起こっていることだけにシンプルに集中することで、過去の悩みや将来の不安から解放される。余計なことを何も考えていない瞬間を過ごせる。
【3】繰り返し行うことで悩む時間が減っていく
毎日瞑想を行うことで、余計なことを考える時間が減っていく。やがて、心が整い視野が広がって、今現在の自分に集中し、自由に前向きに行動できるようになる。
いつでもどこでも”10秒瞑想法”を実践
最後に、実践編として、いつでもどこでも10秒でできる瞑想法をご紹介。
「大切なのは“今、ここ”に意識を集中すること。そのためには、ブルース・リーの言葉のように、“考えるより、感じろ”。五感を研ぎ澄ましてください」
STEP1 「始めの宣言」をして気持ちを集中させる
「今から呼吸を感じます。スタート!」など、瞑想を始める前に宣言をする。1人なら声に出すとよい。始めの宣言をすることで、集中力を上げる効果がある。
STEP2 10秒間、その行動をとにかく感じまくる
宣言した行動に集中する。たとえば「呼吸を感じる」だったら、鼻から吸う息に集中し、温かさや音、においなどを細部まで感じ、心の中で実況中継してみる。
STEP3 「終わりの宣言」をして瞑想で得たものを実感
10秒経ったら、「ここから心が自由な状態で生きる。よし!」など、10秒間、瞑想できたことを宣言する。そうすることで意識的に瞑想の効果を持続できる。
イラスト/秋野純子
※女性セブン2018年12月13日号
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