
なんでもかんでも値上げのいま、あえて値下げされる商品がある。なぜ、それが可能なのか、品質や味は保証できるのか──私たちの財布を助ける商品リストとともに、“救世主”の裏側を明かす。
物価高による家計へのダメージに終わりが見えない。帝国データバンクが国内の主要食品メーカー195社を対象に行った調査では、この5月に値上げされる食品は478品目。さらに今年10月までに値上げが決まっている食品はなんと1万4409品目もあるという。
日本人の主食である米もピンチだ。政府は3月末に備蓄米を21万トン放出したが、市場の米不足は解消の兆しすらない。物価高騰と品薄のWパンチを受ける家庭の食卓は、危機的な状況だ。
そんななか、商品を値下げするスーパーマーケットがある。東武ストアは月替わりで一部商品を値下げする『これ得!値下げ宣言』キャンペーンを展開。

業務スーパーも各都道府県の地域ごとに、一部食品の月間特売を実施し話題に。
そんな中、値下げしている商品で特に目立つのが、スーパーやコンビニエンスストアの独自のブランドである「プライベートブランド(PB)」だ。
イオンは「トップバリュ」の商品75品目の値下げを実施。西友も「みなさまのお墨付き」商品101品目の価格について、期限付きで値下げ、もしくは据え置きすると発表した。コンビニも動いている。ファミリーマートでは「ファミマル」の冷凍パスタ3商品の価格を、338円から298円に値下げした。
西友の広報室は、本誌の取材に対して「お客様の家計をサポートできるよう、今後も価格動向を見ながら値下げを検討してまいります」と回答した。値上げ時代への“対抗姿勢”がうかがえる。
意外な穴場はドラッグストア
しかし円安やインフレの影響で値上げが必要な時代に、なぜ値下げが可能なのか──ひとつは徹底したコストの見直しだ。
「冷蔵ショーケースに扉をつけて省エネによるエネルギーコスト削減やセルフレジ導入による店舗における生産性の改善、商品販売全体の利益からの価格還元などをしています」(前出・西友広報室)
ファミリーマートの担当者もこう説明する。
「ソースの配合や製造工程、量目などを見直して、値段を設定しました」

ファイナンシャルプランナーで1児の母でもある、芸人のフルマユコ(41才)はPB商品を積極的に購入しているという。
「PBには展開する企業が製造するのではなく、大手メーカーが製造を担当している商品もあり、品質や味に関して特に安心感が持てます。商品を選ぶときはパッケージ裏の製造者を確認していますね」
値段が安いとはいえ、消費者として気になるのはPBの品質や味だろう。流通アナリストの中井彰人さんが言う。
「例えばイオンのトップバリュは各社PBのなかでも長く販売しているブランドで、かなり前から開発がスタートしました。その間、品質は相当向上しています。実際、これまでPB商品を敬遠していた消費者でも、この数年の値上げによって試しにPB商品を購入し、“意外と悪くないんだ”と気づき始めました。
その結果、PBの商品開発にメーカー側もさらに前向きになり、コスパと品質が保証された商品が並ぶようになるという好循環が生まれています」
しかし、安いからといって、すぐに手を出すのは要注意だ。
「PBが安い理由のひとつに内容量がナショナルブランドより少ないことがあるので、どちらがお得かと悩んだときは『どちらがお得?計算機』というアプリを使っています。比較する商品の値段とグラム数を打ち込めば両方の単価がわかります」(フル・以下同)

時にはPBではない商品が安いことも。
「PBは常にお得と思われがちですが、お店で今日の目玉といった形で割引販売されているものがPBより安いこともあります。私はアプリやネットで近所のお店のチラシをチェックして、買い物をしています」
PB以外の商品が値下げできるのには、小売り側の“努力”が大きいという。
「コストについてメーカーと密に話し合っていますが、それだけではカバーできない。実際は利益を縮小してでも、客にアピールして店に呼び込みたいという実情があります」(中井さん)
中井さんが最近、注目するのは「フード&ドラッグ」といわれる業態だ。
「地方の幹線道路沿いにあるようなドラッグストアで、薬品や化粧品と同様に食品も多く販売している店舗のこと。食品を低価格で販売して客を呼び込み、メインの薬品や化粧品を買ってもらおうという戦略です。そのため、ナショナルブランドなど意外な商品が安く手に入る可能性があります」
家計の強い味方となる救世主をうまく見つけて、物価高と値上げのWパンチに対抗しよう。
※女性セブン2025年5月29日号