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《福祉は本当に苦しい》杉良太郎「被災地で“ありがとう”を求めない」高校生に伝えた「人間を知ること」の意味

高校生に語りかける杉
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「初めて刑務所を慰問したのは、皆さんと同じくらいの、15才の時。この人は罪を犯したんだと一目瞭然なほど、怖い顔をした人たちが700人くらい集まっていて。アコーディオンで伴奏してもらって歌いながら、足がガタガタ震えていました」

60名の高校1年生にそう語りかけたのは、杉良太郎。7月9日に東京・文京区の郁文館高等学校でBSフジ特番『杉良太郎の人生感-明日を生きるヒント-』(8月3日21時より放送)の公開収録に臨み、質疑応答形式で講演を行った。今年81才になる杉はこれまで66年間、国内外問わず社会福祉活動に身を捧げてきた。冒頭で生徒から“61年間、芸能界の第一線で走り続けるコツ”を問われると「60才で芸能活動にひと区切りをつけて、今は主に国の仕事しかしていない」ときっぱり。そして「私は“福祉”や“チャリティー”ではなく『献身』と考えているんです」と、思いのたけを語った。

「なぜ、私財を投げうってまで福祉活動をするのかと、よく聞かれます。なぜですかと聞かれても、目の前に体の不自由な人、生活に困っている人がいたら見過ごせない。自分にできることは何かと考える。ひたすら自分に問い続けて、66年経ちました。

寄付をするために家も会社も抵当に入れて、それでも足りず、自分の身を抵当に入れて銀行から億のお金を借りたこともあります。老後資金はどうするのかと、銀行で止められました。やっとの思いで借りたお金が、明らかに誰かの懐へ入ってしまった、そう感じた出来事もあります。でも人間は“そんなもの”。いちいち責めない。ただ、自分のやるべきことに力を注ぐ。そうじゃないと、長く、献身は続けられません。死ぬまで続けるんだ、絶対にやり遂げるんだ、という意気込みも持たない。それがプレッシャーになってしまうからね。自然にわきあがる心に従うのみです」

社会貢献をする中での悔しい想いと、どう向き合ってきたのか。その質問には「福祉は本当に苦しい。ただ、悔しい想いはそれほどなかった」と答えた。

「被災地で“ありがとうと言われなかった”と、ボランティアをやめた人が何万人もいます。でも、それは求めてはいけない。私が被災地で必ず言うことは、『皆さん、頑張らないでください』というひとことです。頑張るのは私たちだから、皆さんはどうか頑張らないでほしいと。炊き出しをして、『今は心身をゆっくり癒して、頑張れるようになったら頑張ってください。今日はこういうものを持ってきたので、できれば食べてみてください』と伝えます」

ここでもやはり、「人間を知ること」が大事だと説く。

「ボランティアをして食べ物を差し出しているんだから、すんなりと受け取ってくれればいいのに、ではないんです。昨日まで普通に暮らしていた人たちが、被災して一夜明けたらホームレスになった。容易に受け入れられることではない。こちらが食べてほしくても、後ろを向かれてしまう。それは人間の心理ですよ。だから自分がしゃがんで、下から“どうぞ”と声をかけるんです。目の前の人の心を理解しようとすれば、自ずと行動も変わると思います」