ファッション

革のバッグのお手入れ|自分でできる汚れ落としテク&保管方法をプロが直伝

早くも衣替えのシーズン。今年の夏も35℃を超える猛暑日が少なくなかった。それだけに、日差しなどのダメージでバッグや財布などの革製品も“夏枯れ革”となっているため、衣替えの前に手入れは必須! 家で簡単にできる手入れ法はないものか…? そこで、テレビでも話題の革製品修復の匠に、家ケアの職人技を聞きました。

日焼け、色落ち…バッグは汚れている

日光による劣化、汗や日焼け止めの付着、日常使いでの疲労…。これ、すべて革のお話。

「ここ数年、真夏は予想以上の高温に見舞われ、湿気も多いため、日常使いのバッグなどに色落ちやべたつきなどのトラブルが頻発し、秋口には、多くの製品が店に持ち込まれてきます」

と、革製品修復職人の保科美幸さんは言う。

皮製品修復職人の保科美幸さん
皮製品修復職人の保科美幸さん。総合皮革製品洗浄修復研究所『二子玉川 美靴(びか)工房』のテクニカルディレクター。
写真16枚

一見きれいだからと、ケアをしないままクローゼットにしまい込んだら大変だ。変色やシミ、カビなどのトラブルで、翌年は使えない可能性だってあるのだ。

「高級バッグの手入れを怠り、翌年、捨てることになったり、修復に数万円のお金がかかる場合もあるのです。簡単に自分でできるケアがあるのに…」(保科さん・以下同)

保科さんがすすめるセルフケアは、コットンやハンドクリーム、ストッキングなど身の回りのものを活用する方法だ。しかも、ストッキングによる磨き作業は、実際に工房でも行っている。

「どの工程も慎重にやさしく行うことが基本。知識もなく保湿をすればいいとばかりに、クリームをたっぷり含ませた布でゴシゴシとこするなど、乱暴なやり方をするかたも多いのですが、それでは逆に傷やシミを作ってしまいます」

家ケアでは「カビ染み」などは落ちないので注意

また、革製品は羊や牛、鹿など素材によって性質が異なり、加工の仕方も違う。家ケアでは落ちない汚れや家ケアに適さない素材もあるので、事前にチェックしましょう。

■家ケアでは落ちない汚れ
・ドレッシングなどの油分
・ファンデーション、口紅
・マニキュア
・ワイン
・カビ染み
・ボールペンのインクなど

■家ケアに適さない素材
・エナメル素材
・スエードなどの起毛素材
・クロコダイルや蛇革といった爬虫類革など

「汚れを落とす前に、底面や内側など外から見えない部分に、台所用中性洗剤を薄めた液を染み込ませたコットンで軽く拭いてみましょう。保湿の前も同様に、目立たないところにハンドクリームの試し塗りを。この時、シミにならなければケアをしても大丈夫。シミになるようなら、プロに任せた方が安全です」

安全が確認できたら、次のステップへ進みましょう!

簡単!自宅でお手入れする方法

身近なもので落として、保湿して磨けば、ヨレヨレからイキイキに変わります。コットンや綿棒などが家にあれば、何も買い足す必要はありません。

すぐにできる保科流のケア法を5つのステップでご紹介します!

※Step1、2の工程はいずれも目立たない場所で試してから行ってください。

【準備するもの】
●台所用中性洗剤
●バケツ
●水
●コットン
●綿棒
●ストッキング

Step1. 汚れを落とす

革製品のケアというと、専用クリームでの保湿と思う人が多いが、

「天然の皮革は人の皮膚と同じ。いきなりクリームを塗るのはいけません」

と、保科さんは言う。

「肌の手入れをする時、メイクを落としてから保湿をしますよね。革製品も同様に表面の汚れを取ったうえで、クリームを塗るのがベスト。バッグや財布などを日常遣いしていれば、前述の汗や日焼け止めのほか、手垢、ほこりなどさまざまな汚れがついています」(保科さん・以下同)

汗やほこりがついたままクリームを塗る行為を繰り返し行うと、徐々に表面の油膜層が厚くなって固まり、最終的にはやぶれてしまうため、汚れ落としは重要だ。

「革の汚れは、コットンと綿棒、台所用中性洗剤で落とせます!」

(1)コットンに洗剤を染み込ませる

コットンが手に2枚のっている
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バケツ半量の水に、台所用中性洗剤を2~3滴垂らし、軽くかき回す。それをコットン2枚に染み込ませ、ギュッと握り、固くなるまで水を切る。

(2)コットンを2枚重ねてなでるように拭く

革製品をコットンで拭いている
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2枚重ねたコットンを指ではさみ、革の表面を拭く。コットンの繊維は細かく、付着した汚れを絡め取ってくれるので力はいらない。こするのではなく、なでるようにサッとひと拭きでOKだ。

(3)縫い目や隙間など細かい部分は綿棒で

綿棒で革製品のふちを拭いている
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取っ手の付け根や金具のフチなど、細かい部分は綿棒で汚れを取る。綿棒に溶液をつける必要はない。

Step 2. 保湿をする

汚れを取ったら、すぐに保湿を行う。溶液で濡れたことで、革の繊維の目が広がった状態になっているため、保湿成分が浸透しやすい状態に。そこで使うのは革専用クリームではなく、手の乾燥が気になった時に使用する「ハンドクリーム」だ。

「見た目が半透明でやわらかいタイプは伸びがよく、革になじみやすい。羊毛由来成分のラノリンが入っているものは、より保湿効果が高いのでおすすめです」

硬い感触で手のひらに塗り広げると白残りするものは、革になじみにくく、変色する危険もある。革の手入れには不向きなので使用は避けよう。さらに、保湿することで色落ちの応急処置にもなる。

「色が抜けた部分に油分を入れると濃い部分となじんで見えるため、革の退色が目立ちにくくなります」

(1)ハンドクリームは数回に分けて使用する

手にハンドクリームを乗せている
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30×10㎝の革に対してパール大が目安。クリームは塗る場所ごとに手に取って使おう。

(2)ハンドクリームは手にまんべんなく広げる

ハンドクリームを両手をこす合わせて広げている
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手のひらをこすり合わせ、ハンドクリームを両手のひら全体に広げる。

(3)こするのではなく、軽く押し入れる

革のバッグに押し広げるようにクリームを塗っている
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革をこするのではなく、手のひらの油分を革に移すような意識でポンポンと軽く押し入れていく。

(4)硬い部分には強く押し入れる

皮のバッグの角に手のひらを使ってクリームを塗りこんでいる
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バッグの角など硬い部分には、力を入れて油分を内側に押し入れる。

●お手入れするだけで違いは歴然

クリームでケアした部分とそうでない部分を比べている
右が手入れ後。油分を入れる前と入れた後ではつややかさに違いが!
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Step 3. 乾燥させる

皮のバッグを置いて乾燥させている
風通しのよい場所で1日かけて乾燥させる。横にした場合、半日たったら裏返そう。
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ハンドクリームで補った油分を革に定着させるには、時間が必要。

「日光が当たらない風通しのいい場所で約1日乾燥させましょう。自立するバッグは立てたままでいいのですが、やわらかいバッグはしわがよってしまいます。必ず寝かせ置きをしましょう」

Step 4. 仕上げる

ストッキングで革製品を拭いている保科さん
決してこすらずやさしく表面を磨く。「コットンやシルクなど、さまざまな素材で試行錯誤した結果、ストッキングにたどりつきました」と、保科さん。
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仕上げのつや出しに使用するのは、ストッキング。新品ではなく、はき古したものや伝線したもので充分だ。1足分を小さく丸めて使用する。

「決して力を入れず、やさしく表面を磨きましょう。表面につやが出たら終了。しっとり感が残っているくらいがベストです。べたつきを落としきろうとゴシゴシこすると傷になるので注意してください」

マットな質感の革製品であれば、つや出しをする必要はないため、余分な油分を拭く意識で軽くひと拭きすればOKだ。

Step 5. 正しく保管する

大切なものほど袋や箱に入れて厳重にしまいがちだが、湿気の多い日本では、かえって革を傷ませる結果に。

「天然の革には通気が必要。私のバッグは袋に入れず、ハダカの状態でクローゼットに保管し、外出時は家中のクローゼットの扉を開けています」

軽いバッグなら吊るして保管。立てる場合はブックエンドの活用を。付属袋に入れる場合は必ず口は開けておこう。

「ハイブランドの場合、箱がついてきますが、そこに入れて収納するのであればフタは取りましょう。その箱を重ねて収納する場合は、少しずつずらして互い違いに置くようにします。これで、通気を確保できます」

また、日光に当たると革は劣化する。窓の近くに保管する場合は付属袋や不織布に入れて、直射日光を避けよう。

おすすめの3つの保管方法

【保管1】吊るす

皮のバッグをガムテープの芯と一緒にS字フックにかけている
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S字フックに直接、取っ手をかけると重さで形が変形してしまう。軽いバッグであればS字フックに粘着テープの芯をかけて、その上に取っ手を提げよう。

【保管2】ブックエンドを活用

ブックエンドを活用してバッグを立てて収納している
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重量のあるタイプはブックエンドで支えると、型崩れやほかのバッグからの色移りを防げる。

【保管3】袋に入れるなら口は開けたまま

バッグに袋をかけているが、口をしめずに開けている
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日光が当たる場所や傷が心配などの理由で、袋に入れて保管する場合は、袋の口を閉めずに、通気を確保しよう。

●ストッキングは革ケアの必需品!

バッグの取っ手にストッキングをふわっと巻いているイラスト
写真16枚
皮のパンプスにストッキングに詰めた丸めた新聞紙を入れているイラスト
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つや出しのほか、バッグの取っ手にストッキングを巻いて本体がシミになるのを防いだり、新聞紙を詰めてシューズキーパーにもなる。

教えてくれたのは:保科美幸さん

総合皮革製品洗浄修復研究所『二子玉川 美靴(びか)工房』のテクニカルディレクター。その技術は「革製品修復職人」として、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』にも取り上げられたほど。工房への依頼は全国から殺到し、現在5か月待ち。

撮影/浅野剛 イラスト/スヤマミズホ

※女性セブン2019年10月10日号

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