料理の不思議なところは、同じレシピで作っても、作る人によって味が違うこと。家庭でおなじみのメニューも、プロの手にかかると驚くほどおいしいんです。その理由は、具材の切り方や下ごしらえ、混ぜるタイミングや火加減など、ちょっとしたコツを知っているかいないかにあります。
家庭料理の代表格、煮物や煮魚も作り方次第で、もっと美味しくなりますよ。料理研究家・瀬尾幸子さんが、素材の味わいをギュッと凝縮した煮物料理の基本とレシピを教えてくれました。
「料理は手間をかけた分だけおいしくなるとは限りません。毎日食べる家庭の料理は、手間をかけずに少ない調味料で作ることも、繰り返し食べたくなるポイントに。素材の味を生かした、シンプルだけど飽きのこない味こそが、ごちそうです」(瀬尾さん・以下同)
どのコツも決して難しくないのにいつもの料理が激変する、“プロのひと工夫”をお試しあれ!
【1】煮魚は魚にぴったりサイズの鍋で煮る
「ぴったりおさまる鍋を選び、魚が半分浸るくらいの煮汁で煮るのがコツ。大きな鍋で煮ると、たっぷりの煮汁に魚の旨みがどんどん流れ出し、いちばんおいしいところを捨てることになります。煮すぎるとパサパサになるので、骨つきなら10分、骨なしなら8分を目安に加熱します」
【2】魚は酒入りの冷たい煮汁から煮る
「酒をたっぷり入れた煮汁に魚を入れて煮始めると、煮汁が沸騰するときに酒のアルコール分と一緒に魚のくさみも抜けていくため、煮魚がおいしく仕上がります。強火にかけ、煮立つまでは蓋をしないでおきましょう」
【3】落とし蓋は鍋よりひと回り小さく重みのあるものを使う
「少ない煮汁を食材に効率よく回すために必要なのが、落とし蓋。アルミ箔などで代用せず、ひと回り小さいほかの鍋の蓋を使うのがおすすめです。適度な重みがあるので、煮汁が全体に回りやすくなります」
【4】魚は目が白くなるまで焼く
「魚は目の周りがいちばん水分の多い部分。魚を一尾丸ごと焼くときは、目が白くなれば火が通っている証拠。ここが焼けていれば、身が生焼けなんてことにはなりません」
【5】煮物の具材の量は鍋の2/3がベスト
「煮物をおいしく作るには、鍋の大きさも重要。具材は鍋の3分の2程度がベストです。具材が少なすぎると煮汁の蒸発が早く、煮ムラに。多すぎると具材に火が通りにくく、鍋の上下で味にムラが出てしまいます」
【6】煮物にだしは使わない
「“だしを使えば何でもおいしくなる”と思い込んでいませんか?肉などのたんぱく質を使った煮物は、具材から旨みが出るのでだしは不要。だしを使わないことで各素材が引き立ち、食べ飽きない味になります」
【7】甘辛味の基本はしょうゆ2:砂糖1
「甘辛味の煮物の味付けは、しょうゆ2に対して砂糖が1と覚えておきましょう。野菜、肉、魚と具材が変わっても同じ割合です。調味料が最小限でも、具材が変わればでき上がりは違った味わいに」
◆料理ごとの<しょうゆ:砂糖>の比率
・煮魚<2:1>
・煮物<2:1>
・牛丼<2:1>
・きんぴら<2:1>
【8】じゃがいもやかぼちゃは強火で短時間煮る
「煮崩れしやすいじゃがいもやかぼちゃなどは強火にかけ、短時間で仕上げます。強火で煮汁を煮立て、あくをとった後も、ぶくぶくと泡が立つくらいの強火で煮て大丈夫。煮立った泡が落とし蓋の代わりになり、煮汁が全体に行き渡ります」
【9】火を止めてから4~5分おくと味が染みる
「煮物は煮上がって、冷めるときに味が染みます。煮上がりは具材の外側にしか味が付いていなくても、煮汁を鍋底から4cm程度残した状態で火を止め、そのまま5分程おくと、具材が煮汁を吸って味が中まで染み込みます」
「金目鯛の甘辛煮」レシピ
ここまでのコツを使って金目鯛を煮てみましょう。旨みが凝縮された煮汁を絡めながら味わって!
《材料》(2人分)
金目鯛(切り身)…2切れ
しょうが(せん切り)…8g
A[酒・水…各1/2カップ しょうゆ…大さじ2 砂糖…大さじ1]
きゅうりの塩もみ…適量(塩の目安は、きゅうり4本に対して小さじ1)
《作り方》
【1】金目鯛は皮に切れ目を入れる。
【2】【1】としょうが、Aを鍋に入れ、強火にかけて煮立ったら、落とし蓋をする。落とし蓋の隙間から煮立った泡が見えるくらいの火加減で8~10分煮る。器に盛り、きゅうりの塩もみを添える。
「肉じゃが」レシピ
いつもの肉じゃがも、コツを使えばもっと美味しくできますよ。煮汁を吸ったホクホクのじゃがいもが絶品!
《材料》(3~4人分)
じゃがいも…2~3個(400g)
玉ねぎ…中1個
牛小間切れ肉…120g
にんじん…1/2本
A[しょうゆ…大さじ3 砂糖…大さじ1 1/2]
《作り方》
【1】じゃがいもは皮をむきひと口大に、玉ねぎは1cm幅のくし形に、にんじんは5mm幅のいちょう切りにする。
【2】鍋にじゃがいも、玉ねぎ、にんじん、牛肉の順で入れる。Aと水(分量外)をひたひたに入れて強火にかける。
【3】煮立ったらあくを取り、そのまま全体が煮立つくらいの火加減で20分くらい煮る。煮汁が鍋底から4cmくらいになったら火を止める。
【4】肉じゃがの上下を返し、5分くらいおいて煮汁を染み込ませる。
教えてくれた人:
「がんばりすぎず、毎日作れる料理」を雑誌や書籍、テレビなどで提案。初心者や料理が苦手な人でもおいしく作れるレシピが人気。
撮影/豊田朋子
※女性セブン2020年12月10日号
https://josei7.com/
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