『愛の不時着』脚本家が手掛けた『星から来たあなた』は ”銀河史上最高のラブストーリー”

コロナ禍で『愛の不時着』や『梨泰院クラス』を見て久しぶりに韓国ドラマにハマり、「次は何を見よう？」と悩んでいる人も多いのでは？　そこで、韓ドラ初・中級者のかたにぜひ見てほしいおすすめのドラマを、長年、韓国エンタメを追いかけるライター・田名部知子がご紹介！

“不時着ロス” 、“ユン・セリ・ロス”のかたにぜひ見ていただきたいのは、ヒロインの愛おしさがたまらない『星から来たあなた』です。映画『猟奇的な彼女』のチョン・ジヒョンがちょっとおバカな大女優の役を演じ、『サイコだけど大丈夫』のキム・スヒョン演じる宇宙人と恋に落ちる、ロマンチック・ファンタジーコメディーです。

【目次】

＊　＊　＊

放送後は中国で国賓扱いだったキム・スヒョン

《あらすじ》

400年前、地球に落ちてきて以来、朝鮮の地に暮らす宇宙人のト・ミンジュン（キム・スヒョン）は、地球人と深くかかわらないことを信条として、自分の正体と超能力を隠しながら、400年間ひっそりと生きてきました。ところが、皮肉にも3か月後にようやく自分の星に帰れることになったとき、地球の女性と恋に落ちてしまいます。しかもその恋の相手は、“国民の女神”のトップ女優チョン・ソンイ（チョン・ジヒョン）だったのです――。

本作は、キム・スヒョンのラブコメ初主演作で、韓国が誇るコメディエンヌ、チョン・ジヒョンが14年ぶりにドラマ出演し、キャスティングと設定の壮大さから、“銀河史上、最高のラブストーリー”と話題になりました。

当時の「演技大賞」をはじめとしたあらゆる賞を総なめにし、本作出演後の主演2人の国内での広告出演料は、チョン・ジヒョンが25本で200億ウォン（約20億円）、キム・スヒョンが35本で300億ウォン（約30億円）と大幅に増加し、トータル500億ウォン（約50億円）に跳ね上がったと言われています。

日本でももちろん大人気の作品だったのですが、中国の動画サイトでは再生回数20億回を突破し、その年、習近平国家主席が訪韓した際に本作に言及したり、放送後にファンミーティングで中国を訪れたキム・スヒョンが国賓扱いだったほど、中国では社会現象となりました。

【見どころ1】絶対にありえない設定なのにグイグイ引き込まれる脚本の妙

【1】ありえない設定【2】愛し合ってはいけない男女の切なさ【3】爆笑シーン【4】手に汗握るサスペンス…という盛りだくさんの要素、そしてこれらをテンポよく混在させて見せていく手法は、『愛の不時着』によく似ています。というのもこの2作、パク・ジウンという同じ脚本家の作品なのです。

とはいえピンク・レディーの『UFO』じゃあるまいし、恋人が宇宙人だとか、愛すべき女性が38度線を越えて空から降ってきたとか、韓国ドラマの無茶ぶりも相当なものです。それを視聴者にバカバカしいと思わせることなく、1話からあれよあれよと引き込んでしまう脚本の力、400年にまたがる絡まる因縁や運命、随所に散りばめられた伏線とその回収が秀逸なのです。

韓国ドラマを初めて見る人におすすめの1作を聞かれたら、私は自信をもって、この『星から来たあなた』か『愛の不時着』を教えたいと思っています。

◆ヒロインは『愛の不時着』のユン・セリに通じる愛おしいキャラクター

ヒロイン、チョン・ソンイは一見強くて、キラキラとまぶしいほどに輝いていますが、ごう慢な振る舞いに隠れる寂しさや、自らの運命に立ち向かうりりしい姿は、『愛の不時着』のユン・セリに通じる愛おしいキャラクター。ヒロインの突き抜けた魅力と寂しさ、男は愛する女性を守り、女もまた、自分なりの方法で愛する男性をとことん守り抜くという点も共通していますが、この作家が本当に伝えたいことなのでしょう。

ヒットメーカーといわれるパク・ジウン脚本の作品は、宇宙人と国民的大女優（本作）、北朝鮮のエリート将校と韓国の財閥令嬢（『愛の不時着』）という奇抜な組み合わせ以外にも、本作のチョン・ジヒョンが人魚に、新韓流四天王の1人イ・ミンホが詐欺師を演じるラブストーリー、『青い海の伝説』も人気です。

【見どころ2】号泣シーンと爆笑シーンの振り幅がジェットコースター級

号泣と爆笑の数とその振り幅の大きさでいうと、私自身は『愛の不時着』より衝撃が大きかったのですが、特にチョン・ジヒョンのぶっ飛んだコミカルな演技には何度も大爆笑させられました。

チョン・ジヒョンは、『猟奇的な彼女』の破天荒でキレっぱなしのヒロイン役で、一躍トップ女優に名乗り出ましたが、今回のヒロイン・ソンイは、それ以上。見事なまでの壊れっぷりで、私たちを喜ばせてくれます。

実際、制作発表会でチョン・ジヒョンは、「チョン・ソンイは私の性格を極大化したキャラクター。すべて同じと言うと私が困るくらいそっくり」と話しています。

ソンイは一般常識が著しく欠けていて、見栄っ張りでごう慢だけど、実は傷つきやすくて寂しがり屋。ツイッターでのおバカな発言もしょっちゅうで、「プロポリス」を「プロポフォール（睡眠麻薬剤）」と言い間違い、「愛用している」と笑顔で言い放ち、マネージャーを真っ青にさせますが、なりふり構わずミンジュンへの思いを暴走させる姿は、愛おしくもあり、切なくもあります。