更年期は、誰もが通る人生のステージのひとつ。
約10年にわたる更年期の中間地点にあたるのが、閉経です。閉経といっても、ネガティブに考える必要はありません。更年期について正しく知るべく、閉経と更年期の関係や閉経のしくみなどについて、婦人科医で成城松村クリニック院長の松村圭子さんに教えてもらいました。
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更年期の期間を知るには閉経の確認が必要
更年期は、閉経を挟んで前後各5年、トータル10年ほどの期間のこといいます。自分の更年期がいつから始まったのかを知るには、最終月経を確認する必要があります。ところが、これはすぐにはわからないことがあります。
医学的には、最終月経から1年以上月経がないことを確認したあと、「閉経した」と判定するからです。「あのときがそうだったのね」と閉経時点を知り、そこからさらに5年過去にさかのぼったときが更年期の始まりになります。そのため、更年期症状が出始めてもすぐには更年期にはいったと気づかないこともあります。
女性のライフステージの中の更年期と閉経
閉経の説明をする前に、女性のライフステージについてお話しましょう。女性の一生は、下記の5つのライフステージに分けることができます。その流れを知ることで、更年期と閉経の位置づけが見えてくるでしょう。
・小児期(0~9歳) 女性ホルモンの影響がほとんどない時期です。
・思春期(10~18歳)初潮を迎え、女性ホルモンが急激に増えていく時期です。
・性成熟期(19~45歳) 女性ホルモンの分泌量が安定し、妊娠、出産に適した体になりますが、35歳頃から分泌量が少しずつ減り始めます。
・更年期(46~55歳)女性ホルモンのバランスが崩れて、やがて閉経。不調が現れる時期です。
・老年期(56歳~)女性ホルモンの分泌がほとんどなくなり体調も安定しますが、生活習慣病を発症しやすくなります。
閉経とはどういうこと?
◆卵巣機能が衰えて月経が完全になくなること
閉経とは月経がなくなることをいいます。更年期にはいると、自然の摂理として卵巣の働きが急激に衰えてきます。やがて女性ホルモンがほとんど分泌されなくなり、月経が完全になくなって閉経します。最後の月経があったときが、その人の閉経年齢です。
個人差は大きいものの、閉経前後のトータル約10年間は、ホルモンバランスの乱れによるさまざまな変化や不調が現れます。これが更年期です。
◆閉経の原因
女性は卵子のもとになる「原始卵胞」を持って生まれてきます。約200万個あった原始卵胞は排卵や自然消滅で消えていき、35歳くらいでは約2~4万個まで減少。その後も毎月1000個のペースで消失して、更年期を迎える40代後半から50代半ばまででほぼゼロになり閉経するのです。
◆閉経前に起こる月経の変化
40歳をすぎて更年期にはいると、女性ホルモンの分泌量が減って月経に変化が訪れます。規則的にきていた月経の周期が短くなったり、反対に長くなったり。月経周期が2~3か月に1回に減る人もいます。また、経血量も少なくなったり、大量出血したりと乱れがちに。かなり個人差がありますが、こうした月経の変化とともに月経回数が減少して、やがて閉経を迎えます。
◆閉経年齢には個人差がある
日本人女性の平均閉経年齢は50.5歳ですが、年齢には個人差があります。40代前半で閉経する人もいれば、50代後半まで月経が続く人もいます。更年期も閉経も女性の体に起こる自然な変化です。「いつ閉経するんだろう」と身構えていないで、おおらかに過ごすのがよいでしょう。
◆閉経後の出血
閉経直後は女性ホルモンの分泌が完全になくなるわけではなく、少し出血することもあります。たいていは問題ない場合が多いのですが、子宮がんなどの病気の可能性もあるので、念のため婦人科を受診してご相談されることをおすすめします。
見方を変えれば、閉経は負担からの開放
閉経して月経がなくなると、「もう女性として終わりかしら」と考えて落ち込む人がいます。しかし月経があることに価値を置くのはナンセンスです。考えてみてください。今や人生100年時代で、閉経を迎える50歳前後は折り返し地点。まだまだこれからです。
それに、月経がなくなるのは悪いことばかりではありません。月経痛やつらい月経前症候群(PMS)から開放されるし、旅行やイベントに出かけるときに「生理だから…」とスケジュール調整する必要もありません。さらには「もしも妊娠したら!?」と不安になることもないのです。気持ちをポジティブに持ち、閉経後の新しいステージを楽しみましょう。
教えてくれたのは:成城松村クリニック院長・松村圭子さん
まつむら・けいこ。1969年生まれ。日本産科婦人科学会専門医。成城松村クリニック院長。広島大学医学部卒業。広島大学附属病院などの勤務を経て、現職。若い女性の月経トラブルから更年期障害まで、女性の一生をサポートする診療を心がけ、アンチエイジングにも精通している。生理日管理を中心としたアプリ「ルナルナ」の顧問医。西洋医学のほか、漢方薬やサプリメント、各種点滴療法なども積極的に治療に取り入れている。著書に『10年後もきれいでいるための美人ホルモン講座』(永岡書店)、『これってホルモンのしわざだったのね』(池田書店)など多数。https://www.seijo-keikoclub.com/
構成/森冬生
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