春の訪れに誘われて、首都圏を抜け出し北陸新幹線へ。東京駅から約1時間で、自然あふれる軽井沢へと到着します。向かったのは、軽井沢の地で、初めての西洋型ホテルとして創業した「万平ホテル」。

格式高い雰囲気と温かいおもてなしに迎えられ、大人の休日はスタート。クラシックホテルが大好きな旅行ジャーナリストの村田和子が、その魅力や軽井沢のおすすめスポットを紹介します。
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軽井沢の原点。旧軽井沢の森の中に佇む
豊かな自然に加え、駅前には大型アウトレットがあり、美術館、ホテルなども多い軽井沢は、首都圏から近いリゾートとして老若男女に人気です。そんな中でも、「万平ホテル」が佇むのは、古くから別荘地として開けた旧軽井沢の静かな一帯で、ゆっくりと自然を楽しむのに相応しい場所。新幹線を降り立ちタクシーに乗ると、段々と緑が濃くなり、木立の間に「万平ホテル」が現れます。

◆ヨーロッパの山岳リゾートを彷彿とさせるデザイン
ホテルの顔となっているエントランスのある建物は、1936年(昭和11年)に竣工した登録有形文化財のアルプス館。木造の建物はヨーロッパの山岳リゾートを彷彿とさせるデザインで、まるで海外のよう。

正装したドアマンに迎えられ中へ入ると、赤いじゅうたんに吹き抜けの階段、踊り場のステンドグラスが美しく、重厚な調度品は和洋折衷の品が揃っています。


憧れのアルプス館で、歴史を堪能
万平ホテルにはいくつかの客室棟があり、趣やお値段も異なります。「快適さ、歴史、値段」など、好みに応じて選択するといいでしょう。クラシックホテル好きの私は「泊まるなら、歴史をとことん堪能したい」と迷わずアルプス館へ滞在することに。


フロントや廊下などパブリックスペースにも、歴史の面影が至るところにあり、高まる気持ちを抑えつつ、案内に従い2階の客室へ。

ベッドスペースと組子ガラスで区切られたリビングスペースは、「床の間に掛け軸」と、ソファセットが共存する和洋折衷のスタイル。外を見れば、先ほどタクシーを降り立った場所が目に入ります。憧れの場所に自分がいるのを再確認して、思わずニッコリと笑みがこぼれます。



◆ジョン・レノンが家族で好んで宿泊した部屋も
今回は、家族のお祝い事での滞在。客室へ案内してくれたスタッフからは「おめでとうございます」という言葉と、「こちらの客室は、ジョン・レノンがご家族で好んで宿泊されたお部屋です。記念日をゆっくりお寛ぎください」というサプライズな言葉が!
残念ながら客室の指定はできないそうですが、記念日など特別なときには、伝えておくといいかもしれません。「万平ホテル」は、多くの著名人が訪れており、池波正太郎や三島由紀夫も執筆に訪れたといいます。

館内には、「万平ホテル」の歴史を物語るゆかりの品や写真の展示がある“史料室”があり、ホテル利用者は自由に見学が可能です。軽井沢以外にも、熱海や東京に「万平ホテル」があったこと、戦後はGHQに接収されていたこと、時代を超えて多くの著名人に愛されていることなど、さまざまな歴史を紐解くと、滞在も深みが一層増します。

軽井澤銀座商店会へは歩いて10分。自然と文化を楽しみたい
自然に囲まれ文化的な香りが漂う旧軽井沢。天気がよければ、軽井澤銀座商店会まで足を延ばしての散策がおすすめです。ホテルから木立を抜けると、上皇陛下と上皇后美智子さまが出会ったといわれるテニスコートがあり、向かいには軽井沢ユニオンチャーチが佇みます。

軽井澤銀座商店会には、飲食店やカフェ、土産物屋、ホテルで見た軽井沢彫りの工芸店などが立ち並び、上品な佇まい。ジョン・レノンが訪れたエピソードが残る店舗もあり、足跡をたどってみても楽しめそう。観光案内所は休憩スポットもあるので、情報を入手しがてら立ち寄ってみるのもおすすめです。

◆軽井沢の歴史を語るのに欠かせない「軽井沢ショー記念礼拝堂」
軽井澤銀座商店会の中心から外れますが、ぜひ訪れたいのが、宣教師アレキサンダー・クロフト・ショーが建てた、軽井沢ショー記念礼拝堂。宿場町から別荘地へと発展した軽井沢の歴史を語るのに欠かせないショーは、「万平ホテル」の歴史にも深く関わっています。



朝食は明るいテラスで優雅なひとときを
朝食はメインダイングのテラス席で頂きます。中庭を臨み朝日が差し込む中での朝食は格別! お好みの卵料理などアメリカンブレックファーストは絵にかいたような美しさで、優雅な朝の時間を堪能できます。



泊まるだけではなく、カフェや食事もおすすめ
格天井にレトロな調度品が素晴らしいメインダイニングは、昼夜ともに、フレンチのコース料理を提供。泊まるだけではなく、お食事やティータイムなどに訪れるのもおすすめです。


◆ジョン・レノンが作り方を教えたというロイヤルミルクティー
エントランス横のカフェテラスは、自然の移ろいを感じる特等席。ジョン・レノンが、訪れた際に作り方を教えたというロイヤルミルクティーを片手に、歴史に思いを馳せてみるのもいいのでは?



軽井沢は、春の芽吹き、夏の避暑、秋の紅葉はもちろん、梅雨時期も雨に濡れた新緑なども美しく、四季折々の自然が楽しめます。コロナ禍で固くなった気持ちをほぐし自然のパワーを頂きに、でかけてみてはいかがでしょうか。

【DATA】
「万平ホテル」
〒389-0102 長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢925
アクセス:北陸新幹線 軽井沢駅よりタクシーで5分(約2キロ)
https://www.mampei.co.jp/
料金: レギュラー(1泊朝食) 2名1室ひとり1万6000円(サ込・税込)~ ※アルプス館利用の場合 2万2000円(サ込・税込)~
「軽井澤銀座商店会」
http://karuizawa-ginza.org/
「軽井沢室生犀星記念館」(軽井沢町HP)
https://www.town.karuizawa.lg.jp/www/contents/1590985603807/index.html
教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん

旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年よりNHKラジオ『Nらじ』月一レギュラー。トラベルナレッジ代表。(https://www.travel-k.com/)旅ブログも行っている。(http://www.murata-kazuko.com/)
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