更年期の症状は人それぞれ。そこで、今回はそのひとつである「ホットフラッシュ」についてクローズアップします。
突然顔や体がカーッと熱くなって汗が吹き出る、ホットフラッシュ。 では、なぜ更年期にそんな症状が起こるのか、婦人科医で成城松村クリニック院長の松村圭子さんにホットフラッシュのしくみと対策を教えてもらいました。
【目次】
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体温調整がうまくいかなくなるホットフラッシュ
急に顔や首が熱くなったり、頭がボーッとのぼせたりするホットフラッシュは、更年期の女性の約6割が経験するといわれています。1日に何度も大量の汗が出る人もいれば、上半身は熱いのに下半身は冷える“冷えのぼせ”に悩む人も。
ホットフラッシュの原因は他の更年期の症状と同様に、女性ホルモンの急激な減少による自律神経の乱れが原因です。自律神経の機能のひとつである体温調節は、血管を拡張・収縮することで行われています。ところが、自律神経の働きが乱れることで誤作動を起こしてしまい、放熱命令が突然出されることがあります。すると血管が拡張して血流が増し、汗が吹き出したり、顔がほてったりするのです。
◆不安や緊張が症状悪化を招く
更年期だからとわかっていても、このような症状はつらいもの。「人前で突然汗が吹き出たらどうしよう?」と不安を抱える人も多いでしょう。
自律神経はストレスに弱いですから、『ホットフラッシュが起きたら困る』という不安や緊張が、こうした症状をさらに悪化させることもあるんです。症状を気にして外出を控えるのは気持ちが落ち込むし、もったいないですよね。外出するときは着替えを用意して、『汗が出たら着替えればいい』と切り替えてみてはどうでしょう? 心に余裕を持って、ストレスを減らす工夫をしてみてください。
◆体を冷やすのはNG
体温を調節する機能が乱れると、末梢血液の循環が悪くなるため、上半身はのぼせているのにもかかわらず、下半身や手足が冷えてしまうことが多いのです。
暑いからといって、体を冷やすのはNG。下半身を温めて体温調節をすることが、症状の予防や緩和につながります。お風呂にゆっくり入ったり、しょうがやはちみつなど冷えに効く食材を摂ったりするのもおすすめです。
◆漢方薬で症状が軽くなることも
さまざまな症状や体質に合わせて生薬を組み合わせた漢方薬は、人によって症状が異なる更年期障害にぴったり。ホットフラッシュ、冷えのぼせなど、血管運動神経症状と呼ばれるものに効果が期待できるのは、自律神経を調整して血行を促進する『加味逍遥散(かみしょうようさん)』。肩凝り、イライラなど他の更年期の不調にもよく使われます。
また、漢方薬治療は、この後紹介する「ホルモン補充療法」と組み合わせることも可能です。
◆ホットフラッシュはホルモン補充療法が効果的
頭痛や不眠、イライラなど、さまざまある更年期症状。自律神経を整える生活をすることが基本ですが、ホットフラッシュのような、典型的な更年期症状には、ホルモン補充療法が比較的よく効きます。
乳がんのリスクが高まるのでは、と心配する人もいますが、最近の研究ではホルモン補充療法による発がんリスクは、肥満や飲酒による発がんリスクと同じ程度かそれ以下であることが明らかになっています。強い症状に悩む人は、検討してみるといいでしょう。
更年期症状に似た他の病気に注意
また、女性がかかりやすいと言われる甲状腺疾患のバセドウ病は、更年期と似たような症状が出るため、注意が必要です。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、動悸、息切れ、多汗などの症状が出るため、更年期症状と混同されやすい病気です。バセドウ病は、血液検査とエコーで診断されます。また、婦人科検診や人間ドックのオプションとして甲状腺の検査を追加できる場合も多いですよ。
教えてくれたのは:成城松村クリニック院長・松村圭子さん
まつむら・けいこ。1969年生まれ。日本産科婦人科学会専門医。成城松村クリニック院長。広島大学医学部卒業。広島大学附属病院などの勤務を経て、現職。若い女性の月経トラブルから更年期障害まで、女性の一生をサポートする診療を心がけ、アンチエイジングにも精通している。生理日管理を中心としたアプリ「ルナルナ」の顧問医。西洋医学のほか、漢方薬やサプリメント、各種点滴療法なども積極的に治療に取り入れている。著書に『10年後もきれいでいるための美人ホルモン講座』(永岡書店)、『これってホルモンのしわざだったのね』(池田書店)など多数。https://www.seijo-keikoclub.com/
構成/森冬生
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