50代になると、子育てが一段落したり、仕事が落ち着いてきたりして、時間を持て余す人もいます。人生100年時代と言われる昨今、そんなかたは趣味を始めることで人生が豊かにになるかもしれません。耳鼻科医の鈴木香奈さん(49歳)は、夫婦で同じ趣味を楽しみ、夫婦仲が深まっていると言います。
始めたきっかけは白馬に乗った“マツケン”
「時代劇のドラマ『暴れん坊将軍II』のオープニングで、松平健さんが白馬に乗って海岸を駆けている姿を見て、なんて素敵なんだろうと胸がトキメキました。13年ほど前、娘が受験勉強のために塾に通い始めて時間ができたので、ちょうどいい機会だと思って夫を誘い、乗馬をすることにしたんです」(鈴木さん・以下同)
乗馬のレッスンには、馬をいかに正確かつ美しく運動させることができるかを競う馬場馬術や、オリンピックでも採用されている障害馬術などがあり、鈴木さんは馬場馬術をやっているそうです。
◆心身ともにリフレッシュできる
「実は、乗馬を習い始めて2、3年目に馬が暴走して落馬してしまったんです。そのときは障害のレッスンをしていたのですが、腰椎の骨折をして1か月入院しました。さすがに乗馬が怖くなったのですが、やっぱり馬を忘れられなくて、無理をしない程度の馬場馬術を続けることに決めました。
乗馬の魅力は、なんといっても愛らしい馬に癒されて、心身ともにリフレッシュできることです。動物と接していると穏やかな気持ちになれて、全身運動なので体も引き締まります。野外スポーツなので天候が悪いとレッスンに行きたくなくなる日もありますが、馬に会えるのでモチベーションを保てます」
鈴木さんが週に1回通っている乗馬クラブは、海の近くにあるそうです。
「憧れていた“海岸を馬で走ること”ができたので、夢が叶いました。広い草原を走ったりもして、爽快な気分です」
乗馬のおかげで夫婦仲は良好
鈴木さんは一家で乗馬をしていることから、イギリス旅行をしたときにロンドンのハイド・パークで家族で乗馬を楽しんだそうです。
「イギリスは乗馬が盛んですから、馬に乗れる場所があるだろうと探したら、ハイド・パークの近くに乗馬クラブがあったんです。イギリスの素敵な景色を見ながら、家族で乗馬ができたのはいい思い出です」
◆同じ趣味があると休日を共有できる
今でも鈴木さんは、夫婦で乗馬クラブに通っています。
「娘は大学に入学するタイミングで乗馬をやめてしまいましたが、夫と2人で続けています。今年は結婚25年の銀婚式なのですが、同じ趣味があると休日を共有して出かけられたり、趣味の話が盛り上がって、夫婦で楽しめるのはいいですね。夫婦仲は趣味のおかげもあって良好です。
乗馬は体力が必要なように見えますが、そんなことはありません。定年後から始めたという高齢のご夫婦も多いです。お子さんが巣立ってしまって淋しいと思われていたら、ご夫婦で自馬のお世話するのも、子育てのようで楽しいと思います。馬のお世話をして、調教して騎乗していると、夫婦の共同作業になるので夫婦関係が深まると思います。愛情をもって接していたら、馬も愛情を返してくれますから楽しいですよ」
趣味が広い視野を与えてくれた
「乗馬クラブに入ると馬に乗るだけではなく、朝の5、6時にクラブに行って馬の世話をすることもあります。動物とコミュニケーションをとることで心が穏やかになりますし、それが患者さんと接するとき、気持ちをくみ取れたり、忍耐強く話を聞けることにつながって、仕事にもいきています。乗馬をやっていたよかったと思います。
馬とは会話ができないのですが、コミュニケーションをとるうちに機嫌や体調がわかってきます。毎週同じ馬に乗っていると、馬も私の機嫌を取ったり、こちらも馬の機嫌を取ったり、コンタクトを取れるようになるんです。心を探る力は強化されたと思います」
◆爽快感と馬と気持ちが通じ合う感覚
乗馬の競技は、人間と馬が一体化して初めて好成績につながるそうです。
「自分だけの実力ではどうにもなりませんし、馬の調子でもレッスン内容が変わります。そこが乗馬ならではの面白いところ。そもそも馬はとても可愛くて、接しているだけでとても癒されます。
乗馬は趣味の中では費用がかかる部類かもしれませんし、乗馬クラブまで足を運ばなければいけないので、手軽な趣味ではありません。しかし、乗馬の爽快感や馬と気持ちが通じ合う感覚を一度味わっていただきたい。何才からでも始められる趣味です。病みつきになるかもしれませんよ」
この人に聞きました:耳鼻科医・鈴木香奈さん
1971年8月3日生まれ。石川県出身。1996年に金沢医科大学卒業。北陸では初となる睡眠時無呼吸症候群SAS専門クリニックとして、2003年金沢駅前ぐっすりクリニックを開院。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医、日本睡眠学会会員。http://www.gussuri.jp/kanazawa-index.html
取材・文/小山内麗香
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