少しずつ暖かくなってきて過ごしやすい季節になってきましたが、ペットにとっては快適であるとは限らないようです。愛犬や愛猫の健康について、飼い主さんが気になるテーマを、専門家である獣医師に聞くシリーズ。
今回は、春先から初夏にかけて注意しておくべき犬・猫の病気や健康トラブルについて、教えてもらいます。
犬は暑さに弱い。熱中症はゴールデンウィークから
獣医師の山本昌彦さんによれば、4月末頃から特に注意したいのが、犬の熱中症だと言います。実際に、この時期に熱中症で動物病院を受診する犬の数が増えてくるそうです。なぜなのでしょうか。
「日中の気温が急に高まるので、体がついていけないのが1つ。もう1つは、人間にとっては気持ちのいい気候だったりするので、飼い主さんの感覚で日中にゆったり散歩していると、犬は暑さでバテてしまうといったことがあります」(山本さん・以下同)
犬は全身を毛で覆われている上に、体温調節のための汗腺が足の裏など、一部にしか分布していないので、人間に比べると放熱がしにくく、暑さに弱い動物だといえます。
◆散歩時、アスファルトの放射熱に注意
「散歩時に気をつけたいのは、コンクリートやアスファルトの放射熱です。犬は地面との距離が近く、日光で熱せられた地面からの照り返しをまともに浴びてしまいます。ダックスフントなど脚の短い犬種は、特につらい思いをすることになります」
深刻な脱水症状も…水分摂取、犬用の経口補水液も◎
体温が高くなりすぎると、体を作っているたんぱく質が破壊されてしまいます。また、脱水症状で体内に水分や塩分が不足すると、さまざまな臓器に障害が起きます。身近な病気でありながら、被害は深刻になることもあるので、対策は万全にしたいところです
◆暑い時間を避ける、散歩時間を短く
「水分をしっかり取ることが、熱中症で最も大切な予防策になります。今は犬用の経口補水液も市販されていますね。病院でも、水に溶かして飲ませる経口補水液粉末を処方することがあります。
他に予防措置として、暑い時間帯を避けて散歩したり、散歩時間を短くしたりするのも効果的です。保冷剤を入れられるバンダナなど、いわゆる冷感グッズを身に着けるのもいいですね」
屋内の熱中症にも注意!犬が快適な室温は人間より少し低い
夏になってさらに気温が上がると、屋内でも熱中症リスクが高まるので注意が必要です。
「梅雨明けには、飼い主さんが外出するときもエアコンはつけたままにしたり、愛犬が涼しい場所を選んで移動できるように、部屋のドアを開けておいたり、配慮してあげてください。たとえエアコンで部屋が冷えすぎたとしても、ドアを開けておけば、犬は自分で適宜、快適な場所へ行き来します」
◆部屋の設定温度の目安は26~27℃
犬が快適に感じる室温は、人間より少し低い温度と考えていいそう。
「設定温度は26~27℃程度でいいのではないでしょうか。シベリアンハスキーやアラスカンマラミュートのような寒冷地が原産の毛深い犬種であれば、もう少し下げてあげるといいでしょう」
ちなみに、猫にも熱中症はありますが、犬に比べると発症率は低いそうです。猫の祖先は砂漠に生息していたといわれていて、犬より暑さに強い傾向にあるといいます。
気温と皮膚病リスクは比例…ノミやダニは13℃超えると活動!?
熱中症の他に、春はペットの皮膚病も発症率が高まります。かゆそうにしていたり、フケが多くなったりしたら要注意。被毛の下にかさぶたができていたり、湿疹が出ていたりするかもしれません。
「日本は高温多湿の環境なので、気温の上昇に伴って、被毛の中で皮膚がむれてしまって細菌感染を起こしやすくなります。また、夏になるとアトピー性皮膚炎での(動物病院)受診が増える傾向がみられます」
◆行楽シーズンは特に要注意
実は、春から初夏にかけて、私たち人間にとって行楽シーズンが、犬の皮膚病リスクが高まる遠因なのだとか。
「気候がいいと、飼い主さんとしても犬をキャンプに連れて行って、思い切り遊ばせてあげたくなったりすると思います。ですが、水遊びをしたあとによく乾かさないと皮膚炎につながります。草むらにはいることがあれば、ノミやダニにも気をつけましょう。ノミやダニの多くは13℃を超えると活動が活発化します」
ノミやダニについては、「室内飼いの猫であっても用心したほうがいい」と山本さんは言います。
「飼い主さんや一緒に住んでいる犬が、外からノミやダニを持ち込んでしまうことがあるためです。ノミやダニは皮膚炎を起こしたり血を吸うだけでなく、細菌やウイルス、寄生虫を媒介することもあります。瓜実条虫や重症熱性血小板減少症候群など、人に感染し症状がみられるケースもあります。見つけたらしっかり駆除して、清掃や洗浄を徹底しましょう」