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犬や猫のダイエット事情|理想的な食事のあげ方は?「おやつは別腹」でOK?

太っていることで、体にあまりいい影響がないのは人間だけではありません。ご家庭で犬や猫を飼っている人の不安や疑問について専門家に聞くシリーズ。

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今回は、愛犬や愛猫のダイエットについて。病気になりにくい体型や、その測り方、ダイエットのコツについて教えてもらいました。

犬や猫も太りすぎ痩せすぎは疾患につながる

薄着の季節が近づくと、多くのメディアで取り上げられるダイエット特集。体重計に乗って日々の推移を見ながら自らの健康管理やダイエットをしている人も多いはず。人間の場合には、体重のほかに体脂肪率やBMI(ボディマス指数)など、肥満度を客観的に判定できる指標があります。

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犬や猫の場合は、そもそも病気になりやすい体型・なりにくい体型はあるのでしょうか。肥満や痩せが健康に影響を及ぼさないなら、多少太っていても痩せていても、ペットが好む食生活、運動量でのライフスタイルを続けたいのが飼い主さんの正直な気持ちかもしれません。

獣医師の山本昌彦さんによれば、「犬や猫も、やはり太っても痩せてもいない“ちょうどいい”体型が病気にかかりにくいといえます。太っていると糖尿病や関節炎などを患いやすくなりますし、痩せすぎていると心疾患や肝疾患、低血糖や免疫力の低下などのリスクが増します。ちょうどいい体型を保つことは、さまざまな病気の予防策の一つになります」とのこと。やはり、体重を管理し、体型を適切に保つ必要があるようです。

特別な器具不要、飼い主さんが体型をチェックする方法

犬や猫の「ちょうどいい体型」は、見極める方法があります。それは、上や横から見て、胸や腹部を触ること。犬種や猫種によって体高や筋肉のつきやすさなどが大きく異なるので、見て触って確かめながら、ある指標を用いて判定します。

「具体的には、BCS(ボディ・コンディション・スコア)という指標を用います。横から見ても上から見ても、腰に適度なくびれがあり、肋骨がゴツゴツと浮いているようなことはなく、触ってみると、適度な脂肪の下に肋骨が感じられるのが理想の体型です。

BCSではこの体型を『3』として、これより痩せているなら『2』『1』、太っているなら『4』『5』となります。飼い主さんでも測定可能ですので、なるべくBCS『3』を目指して愛犬、愛猫の食事や運動を工夫していきましょう」

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動物病院に備えている犬用の体脂肪計も

また、動物病院などでは犬用の体脂肪計を備えているところもあります。花王(東京都中央区)と大和製衡(兵庫県明石市)が共同開発したもので、動物病院向けに販売されているそうです。

「腰に当てて使うタイプで、測りやすいと思います。体脂肪率がいくつぐらいだと適正かというと、これは私の感覚になりますが、去勢していないオスで18~25%程度。メスや去勢済みのオスで24~30%程度だろうと思います。遺伝的に筋肉質な犬種ではもう少し低くてもいいですね。

弊社(アニコム)でもイベント時に体脂肪測定ブースを設けると長蛇の列ができます。飼い主さんにとっても関心事なのでしょうね」

おやつを“別腹”計算にしてはいけない

犬や猫のダイエットといっても、犬や猫が自分で体重管理することはできないので、飼い主さんが食事や運動を考える必要があります。

「ポイントはシンプルに、フードやおやつをあげすぎないことです。太っている子はおやつを多くもらっていることが多いので、そこを考え直していただきたいですね。1日に摂取すべきカロリーをフードで全部取った上におやつをあげてしまうと当然、カロリーオーバーです。おやつのカロリーも1日の摂取カロリーの計算に入れて、その分、フードを少し減らすなどの工夫が必要です」

キャベツなどの野菜をゆがいたもので代替もOK

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ダイエット中のおやつは、市販のジャーキーなどよりも、キャベツなどの野菜をゆがいたもので代替すると、効果的だとか。

「こうした野菜のおやつは、低カロリーでかさがあるので、たくさん口にできる、食べがいがあるということで、意外と喜んでくれる子もいます。ただ、喜ばない子の場合は、おやつをあげる意味がなくなってしまうので、元の種類に戻してあげてください」

目標体重に即した量のフードを与える

また、犬や猫のダイエット中の食生活では、目標体重を意識することもポイントです。

「フードのパッケージには、体重に応じて与えるべき量が記載されていると思います。基本的にはそれに従えばいいのですが、大事なことは、現在の体重ではなく、目標体重を基準にすることです。今、体重が7kgの子に、7kg分の食事をあげていると痩せません。5.5kgを目指すなら、5.5kg分の食事をあげるのが正しいやり方です」

2回以上に分けてあげるのもよい

与えるフードは、市販のもので量を調節するだけでも一定の効果あり。さらには、動物病院でダイエット食を処方してもらう方法もあります。

「食物繊維が多く含まれていたり、低カロリーだったり、痩せやすい食事がありますので、そういったものに切り替えるのもいいでしょう。フードは1回にどっとあげるよりは、もしも飼い主さんのライフスタイル上、無理がないなら2回以上に分けてあげるといいですね。食物繊維の多いダイエット食などを一度にたくさん食べると、胃腸にも負担がかかりますから」

犬は散歩をたっぷり、猫は上下運動を促して

食事の量や質の調節がダイエットの勘所ですが、運動もやはり大切です。

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「犬は散歩する距離・時間を無理のない範囲で段階的に延ばしていってください。猫は例えば、床の上をゆっくり歩き回る程度にしか運動しない子には、フードを高い場所に置いて、あえてジャンプを促すといった方法があります。猫は上下運動をさせると脂肪が落とせるといわれています」

痩せない場合は病気を抱えている場合も

食事を変え、運動もしているのに、なかなか痩せない場合は、人間でいう高脂血症など、病気を抱えている場合もあるといいます。

「ダイエットの効果がまるで見とめられない、逆にダイエットしていないのに急に痩せたなど、体重や体型の推移が不自然なときは、動物病院で検査を受けるようにしてください」

体重・体型をちょうどいい状態にキープして、かわいい愛犬・愛猫の健康寿命を延ばしていきたいですね。

教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん

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獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/

取材・文/赤坂麻実

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