バツイチ独身のライター・オバ記者こと野原広子(64歳)が、“アラ還”で感じたニュースな日々を綴る人気連載。257回目となる今回は、開催が迫る東京五輪について。
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東京五輪のトーチキスに行ってきた
「夫が東京競馬場で行われるトーチキスに出場するんですけど、行きませんか?」
ライター仲間でかつて「オバコバ7」というコンビを結成して、『キングオブコント』の予選にチャレンジした“相方”氏家裕子さん(41歳)から、“身内のひとり“として誘われた私は、「行く、行く」とふたつ返事。
7月14日、府中市の東京競馬場で、聖火ランナーが次のランナーに聖火を移す「トーチキス」が行われ、西東京、小金井、府中など5市で公道を走る予定だった人たちが参加して、聖火をつないだ。で、こんな写真を撮っていただいたわけ。
コバの夫のG氏は建設会社に勤務する33歳で、聖火ランナーに応募して見事、採用された。なぜランナーになりたいか熱い思いを作文にして認められたのだそう。
前回の東京五輪を知る人から聞く否定的な声
いいなぁ。こういう真っ直ぐな若者の気持ちに触れると、思わず涙ぐんでしまう。というのも、最近、私の耳に入って来るのは否定的な意見ばっかりなんだもの。
「東京五輪、ホントに始まるんだね」
「こんな状況で開催したって仕方がないじゃない。ヤメ、ヤメ」
「政府もどうかしているよ」
そう言う人って、前回の東京五輪を知っている人ばかりなんだよね。私だって東京五輪というと、反射的に青い空にあのファンファーレがよみがえってくるもの。なんなら三波春夫の『東京五輪音頭』も。
思えば前回の昭和39年の五輪の時、私は小学2年生で、その次がメキシコシティ、ミュンヘン、モントリオール、モスクワはパス。次のロサンゼルスの開会式では、背中に小型ロケットを背負った人がスタジアムを飛んだんだよね。
まさに右上がりに派手になっていくのを目の当たりにしてきた世代が“コロナ禍の五輪”を見たら、気に入らないことばかりなんだよね。だから「2度目はいい」と言えるわけ。
でも世代が違うと考えも違う。コバもG氏も東京で五輪が開催されるのは、今回が「生涯一度」なんだよね。
コバが言う。
「きっと二度と見られないですよね。でも、無観客ならしなくてもいいかなとも思うんですよね。選手が気の毒っていうのもあるけど、観ているほうのテンション、上がらないもの」と。
歓声もなくただ引き継がれる聖火
あ、セレモニーが始まった。府中市市長の挨拶の後、聖火が点火された。
しかし、50代初めまでギャンブラーだった私だけど、こんな東京競馬場は初めてよ。人もまばらで、馬のいいなきもなければ、泡銭の泡を少しでも大きくしようという欲で目がくらんだ集団もいない。そういえば何度もここに来たけど、いつも財布はすっからかんにして帰ったっけ。行きは良い良い、帰りは怖い、ばっか。
そんなしょうもない過去を思い出しながら、曇り空とセレモニーを交互に見ていた私の目の前で、キャ〜も、ワ〜ッもなく、次々とトーチキスをしては聖火のついたトーチを掲げ、空いた手を振るランナー志願者たち。それをスマホで写真撮影をする家族。静かなスポーツイベントを見ていたら次世代の日本、これからの世界を見たような気になった。
さて、聖火ランナーであるG氏は今回のことをどう思っているのか。
「そりゃあ、公道を走れなかったのは残念ですよ。でも少しでも東京五輪に触れられて、すごく嬉しいです。ユニホームは今日いただきました。ト-チは有料でしたが、もちろん買いましたよ。見ますか?」
こうして私までちょっとだけ五輪に触れさせていただいたのでした。
ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。『女性セブン』での体当たり取材が人気のライター。同誌で、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。一昨年、7か月で11kgの減量を達成。
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