スキンケアを頑張っているのに乾燥肌や肌荒れがなかなか治らない、という悩みには、漢方薬が役立つ可能性があるそうです。
乾燥肌は紫外線や空気の乾燥などの外部からの刺激のほか、肌の角質のバリア機能の低下や全身の栄養状態の低下などが原因になっているといいます。
薬剤師の道川佳苗さんによると、乾燥肌に効果が期待できる漢方薬はいくつかあり、乾燥肌のタイプに応じた漢方薬を用いることで、乾燥肌の予防や緩和が期待できるそうです。そこで、道川さんに教えてもらった「乾燥肌タイプのセルフチェックリスト」から、自分に合っている漢方薬を見つけてみましょう。
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「乾燥肌」の症状と原因
乾燥肌とは、肌の皮脂や水分が不足して肌がカサカサと乾燥した状態をいい、ドライスキンとも呼ばれます。全身がカサカサする、洗顔後に顔がつっぱるなどの症状のほか、乾燥がひどくなると白く粉を吹いたような状態になることもあります。
乾燥した状態を放っておくと、皮膚の知覚神経が敏感になり、少しの刺激でもかゆみが起こりやすくなります。
乾燥肌の原因
乾燥肌の原因は大きく、内的な原因と外的な原因に分けられます。
外的な原因
・季節による空気の乾燥やクーラーや暖房による乾燥
・紫外線による影響
・洗いすぎやタオルによる摩擦などによる刺激
外的な原因による乾燥肌は、空気の乾燥やこすれ、紫外線などを避けることで対処できます。
内的な肌による原因
・角質のバリア機能の低下
・肌のターンオーバーの乱れ
・加齢による皮脂や潤い成分の低下
内的な原因は、体質など肌自体の問題です。加齢や生活習慣などによって肌のバリア機能が低下したり、ターンオーバーの乱れが引き起こされたりして、肌の状態が悪くなっています。内的な原因については、生活習慣を整えることなどが大切になりますが、漢方薬を用いて体質を改善することで、肌の不調も整えることができます。
漢方医学的にみる乾燥肌の原因
漢方医学では主に以下の3つが乾燥肌の原因となると考え、状態に合わせた漢方薬を服用することで対処します。
<漢方的な乾燥肌の原因の分類>
・「血虚(けっきょ)」…全身に栄養や潤いを運ぶ「血(けつ)」の不足によるもの
・「気・血両虚(き・けつりょうきょ)」…「血」の不足だけでなく、「気」の不足によるエネルギー不足のために肌に「血」が届けられていない状態
・「腎虚(じんきょ)」…加齢による「腎精(じんせい)」の低下が原因で潤いが不足しているもの
漢方薬は心と体全体のバランスを調整することを目的としており、原因がわからない不調や繰り返す不調を根本から改善することを得意としています。そのため、加齢や生活習慣によって「血」や「気」などのバランスが乱れて生じる「乾燥肌」にも、体の内側からアプローチが可能です。
自然の生薬から作られている漢方薬は医薬品として効果が認められており、西洋薬よりも副作用が比較的少ないことも特徴です。
あなたの乾燥肌は何タイプ?肌質チェック
漢方薬はタイプに合ったものを服用することで、より効果が現れやすくなります。
漢方では、人の健康を「気・血・水(き・けつ・すい)」3つの巡りの状態で考えます。そのため、漢方薬を選ぶときには、気・血・水の状態によるタイプ分けが必要です。
そこで、これから紹介するチェックリストで、あなたの乾燥肌タイプを診断してみましょう。
血虚タイプ
以下のチェック項目に当てはまる人は、肌の栄養や潤いが低下した「血虚タイプ」の可能性があります。
・シミが気になる
・冷え症である
・冬になるとしもやけができる
・抜け毛や白髪などの髪の毛のトラブルがある
・爪が割れやすい
「血」は全身に栄養分や潤いを運ぶ役割があります。「血」が不足した「血虚」状態になると、肌の栄養が不足し、潤いも低下するために乾燥肌を引き起こします。
気・血両虚タイプ
以下のチェック項目に当てはまる人は、栄養だけでなく生命エネルギーも低下している「気・血両虚タイプ」の可能性があります。
・疲れやすく、体力が低下している
・食欲がない
・手足の冷えがある
・貧血である
「血」だけでなく、生命活動を営むための生命エネルギーである「気」が不足していることで、肌に十分な栄養が届かないために乾燥肌になります。
腎虚タイプ
以下のチェック項目に当てはまる人は、加齢によって腎が衰えた「腎虚タイプ」の可能性があります。
・疲れやすく、体力が低下している
・腰から下が冷えやすい
・むくみがある
・皮膚の乾燥がすすみ、かゆみもある
・夜間の頻尿がある
漢方で言う「腎」とは、泌尿器・生殖器・腎臓などの、人の成長や発育、生殖、老化などと深く関わる機能のこと。腎は命を守る大切な働きをしています。
腎の最も大切な働きは、命の根本となる「腎精」を貯蔵することで、腎精には器官や肌を潤す働きがあります。そのため、腎精が不足した「腎虚」であると、乾燥肌やかゆみを引き起こすと考えられています。
乾燥肌の悩みを改善する体質別の漢方薬
乾燥肌に対する漢方の治療では、不足した血や気を補うとともに、乾燥した皮膚を潤す効果のある漢方薬を用いて対処していきます。以下に、タイプごとにおすすめの漢方薬を紹介します。
血虚タイプにおすすめの漢方薬「四物湯」
四物湯(しもつとう)は、「血」を補う代表的な漢方薬で、血虚タイプに用いられます。乾燥した皮膚を潤す効果があり、乾燥による肌荒れや、乾燥が目立つ皮膚炎にも用いられます。
気・血両虚タイプにおすすめの漢方薬「十全大補湯」
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)は、「気」「血」両方を補う漢方薬で、気・血両虚タイプに用いられます。血行を促したり、滋養強壮作用のある生薬の働きにより気力・体力を補い、肌に潤いを与えます。
腎虚タイプにおすすめの漢方薬「牛車腎気丸」
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)は、腎精を補う漢方薬で腎虚タイプに用いられます。「血」を補う生薬も含まれており、肌に潤いを与え、乾燥肌の改善に役立ちます。
自分に合ったタイプの漢方薬で乾燥肌の改善を
乾燥肌は、空気の乾燥や外部からの刺激が原因となる以外に、全身の栄養状態(血)や生命エネルギー(気)とも関係しています。心と体の状態を正常に整える漢方薬を用いれば、慢性化した肌荒れも解消できる可能性があります。スキンケアももちろん大切ですが、内側からのケアとして漢方薬を用いると、体質からの改善を目指せます。
漢方薬は自分の体質やタイプに合ったものを選ぶことにより効果が発揮されるので、まずは専門家に相談しましょう。
教えてくれたのは:薬剤師・道川佳苗さん
みちかわ・かなえ。漢方薬・生薬認定薬剤師。調理師。薬膳アドバイザー。大学卒業後、薬局にて従事し服薬指導をする中、病気の予防、健康維持には食育が大切であると感じ、服部栄養専門学校に入学し卒業する。現在は、AI(人工知能)を活用した「オンライン個別相談」で、自宅まで個人にあった漢方を手頃な価格で届けてくれるサービスが好評の「あんしん漢方」などで、今までの経験を活かし、健康相談や薬膳や漢方に関する情報発信をしている。
・あんしん漢方:https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/