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【64歳オバ記者 介護のリアル】93歳母の介護を始めて感じた「小さな喜び」とは?

バツイチ独身のライター・オバ記者こと野原広子(64歳)が、“アラ還”で感じたニュースな日々を綴る。

茨城の夕暮れ
茨城の実家でオバ記者が見た夕暮れ
写真5枚

連載261回目となる今回は、オバ記者が茨城の実家で続ける93歳「母ちゃん」の介護について。

* * *

朝4時半に起こされた

午前4時半、「ひろこぉ~、トコロテーン」と起こされた。1週間前から母ちゃんの介護をしている私は、ガバッと起きあがって台所に向かう。イヤもおうもない。体が勝手に動くのはどうしたこと?

8月初旬、2か月入院していた病院から退院した母ちゃんは、標本にしたくなるほどの人間の抜け殻で、話しかけてもほとんど反応しない。病院でどれほど寂しい思いをしたのか、眉間には深いシワが刻まれていた。

介護タクシー
介護タクシーで実家に帰ってきた母ちゃん
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意味不明のことを絶叫するわ、処方された薬は固く口を閉ざして飲まないわ。そのくせ訪問看護師さんが点滴をすることになったらなったで大騒ぎ。

「痛てーよ。はぁ(もう)、何回刺してんだよ! いで~ええ(痛え)」

老いて血管が硬くなっているせいで針が入らないんだって。

「でも反応は正常じゃね?」と、思わず弟と顔を見合わせちゃった。

その点滴が効いたか、翌日の夕方から階段状に覚醒してきて、断片的だけど以前と同じ調子で「冷てえ水、飲みてえ」とか、ごく普通の声に戻り、水曜日には見舞いに来た近所の同い年の友達と話したりと、順調な回復ぶり。

表情が柔らかくなってきた母ちゃん

弟の飼い猫、チョビを連れてきて母ちゃんに見せたら手を伸ばして触ったりして、少しずつ表情が柔らかくなってきた気がするわ。

ある夜のこと。トイレ介助をし終えた私に「はあ(もう)、病院は行きたぐね」と言うの。「行くごどねぇよ」とニワトリみたいになった手の甲をなでてやったら、

「そうか~ぁ。じゃあ、まだヒロコといっしょにいられんな~」ってぬかしやがったのよ。ここで殺し文句を決めるとはホント、食えねえ、ばあさんだわ。

母ちゃんのベッドの横に薄い布団を敷いて寝るようになって感じたんだけど、私って母ちゃんの”囚われ人”みたいなものよね。無期懲役? あ、私の場合、志願してやっているから、介護キャンプに入隊?

ボスである寝たきりの母ちゃんに「冷てぇ水」と言われたら、用意して、「オシッコ」と言われたら体を起こして、ポータブルトイレに座らせる。その間に3度のご飯を用意して食べさせながら、けっこうなボリュームの薬を飲ませたり、体温を測ったりしているとあっという間に夕方だ。

空いっぱい、圧巻の夕焼けが広がっていた

とはいえ一日一日、介護に明け暮れていると、田舎なりの小さな喜びもある。

「姉ちゃん、外見てこうよ(来なよ)」と弟から家に入るなり言われて外に飛び出したら空いっぱい、圧巻の夕焼けだ。

田舎ってこういうことに不意をつかれるんだよね。しばらく前のこと、弟の妻・N美が車を運転しながら「お姉さん、空!」と言うの。見ると空いっぱいの乳白色の雲に紫色の光が差し込んで、美しいったらない。

オバ記者
家の外に出ると夕焼けが
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「板谷波山(いたやはざん・陶芸家)の色だよね~」と、インスタのフォロワー数1万人超えの華道家・N美は言う。なるほどな~。

先日は弟が夏休みをとって、「姉ちゃん、午後から遊んできていいど」と言ってくれたので、幼なじみのE子と山向こうの温泉『ゆりの郷』へ。翌日から休館するせいか、館内はガラガラだ。

「ゆりの郷」
「ゆりの郷」でしばしリラックスタイム
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で、誰もいないサウナに入った後、外の椅子に座って裸で風に吹かれながらおばさんふたり、時事放談。

秋の衆議院議員選挙のこと、コロナ禍が落ち着いたあとの日本はどうなる話。かと思えば家族の話や、保育園のときの思い出話など、地元で市議会議員をしているE子とのおしゃべりは自由自在。しばしの開放感を味わった。

来週になったら訪問看護師さんや介護ヘルパーさんも来てくれるから、弟夫婦と私の負担はずっと軽くなるハズだ。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
オバ記者ことライターの野原広子
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1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。同誌で、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。一昨年、7か月で11kgの減量を達成。

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