物価が上がるにつれ、現預金の価値は低くなる
バブルが崩壊した1991年以降、ご存じの通り経済の低迷は今なお続いています。「失われた20年」とも「失われた30年」とも呼ばれ、平均賃金は一向に上がりません。このコロナ禍で、ボーナスがゼロになった企業も少なくないでしょう。
収入減と反比例するように、ここ数十年で郵便料金や鉄道運賃など商品の物価はじわじわ上がってきています。食品に至っては、内容量を減らし値段はそのままにする、一見値上げに気づきにくい「ステルス値上げ」たる実質値上げも横行。
物価の上昇率よりも高い利回りで運用する
「具体的にどれだけ物価が上がったのか、一例を出すと、1956年のあんパン1個は約12円。現在はその10倍となる約120円です。ここで強調したいのは、物価が上がるということは、その分お金の価値が下がるということ。例えば、物価が毎年1%上昇すると、金利がほとんどつかない銀行預金やタンス預金のお金の価値は、1%ずつ目減りするということです」
わかりやすく言えば、500万円を預けていたら、1年に5万円ずつ、10年後には50万円もお金の価値が減っていることになります。
生方さんは、「それを回避するには、投資して物価の上昇率より高い利回りでお金を運用しないと、損」だと断言します。
すべての金融資産を一つの銀行の普通預金や定期預金に集中させるリスクは、他にもあります。
銀行が倒産すると、資産凍結される!?
「銀行にお金を預けることで、お金を一時的に引き出せなくなるリスクも覚えていてほしい」と、生方さん。
「1989年から2019年までの平成の30年間だけで、2桁以上の金融機関が破綻しました。もちろん、自分が預けている銀行が万一倒産したとしても、『ペイオフ』によって一定額まで資産は保証されます。ペイオフとは、預金保険制度に加盟している金融機関が万一破綻した場合、預金保険機構が預金者に対して直接預金を支払う制度です。その限度額は、元本1000万円までと、破綻日までの利息です。
『自分は銀行に1000万円も預けていないから問題ない』と安心しているかたは多いでしょう。ただし、問題はそこではありません。もし銀行が破綻した場合、破綻に関する事務処理が終わるまで、口座は凍結されるため、お金を引き出すことはできなくなるのです。その間は、毎月の固定費も生活費も引き出すことができないことを頭の隅に入れておく必要があります」
分散して預けることでリスクヘッジ
預貯金が1000万円以下であったとしても、A銀行に100万円、B銀行に100万円、C銀行に100万円――などといくつかの金融機関に分散して預けておくことがリスクヘッジになるようです。
以上のことから、「利息より手数料によるマイナスの方が上回るリスク」、「物価上昇により現金の価値が低くなるリスク」を考えると、虎の子の資産を銀行だけに預けっぱなしにすることが、いかに大きなリスクかがわかるでしょう。
生方さんは、「お金は『残す』『預ける』のではなく『増やす』ことを考えた方がお得」だと考え、結果的に資産を2億円まで増やしてきました。
「同じ資産でも、銀行に預けっぱなしにすればほぼ確実にマイナスになります。片や、資産を運用すれば、元本割れのリスクはあれど資産を増やせる可能性があるのです。もちろん、全財産を投資するのではなく、使う予定のある生活費や万一に備えた予備費は手元に残し、小さく投資を始めることが鉄則です」
◆教えてくれたのは:生活コスト削減コンサルタント・生方正さん
明治大学サービス創新研究所研究員。高校卒業後に海上自衛隊に入隊。勤務の傍ら節約術を駆使しながら、国内株式、金の現物買い、在日米軍に対する不動産投資などを行い、40代で自衛隊を退職した際には2億円もの資産を築いていた。現在は生活コスト削減コンサルタントとして、メディアで活躍中。著書に、『高卒自衛官が実現した40代で資産2億円をつくる方法』(あさ出版)、『攻めの節約』(WAVE出版)など。