秋の終わりから冬まで、りんごは長い期間楽しめるフルーツ。せっかくなら、なるべくおいしい状態をキープしたいもの。そこで、野菜ソムリエプロの福島玲子さんが、りんごをより楽しめる正しい保存方法と豆知識を伝授! りんごの追熟を促す方法や定番の塩水以外でりんごの変色を予防する方法、蜜りんごの秘密などを教えてもらいました。
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りんごをカットして保存するとき、塩水以外の方法は?
りんごをまとめて買ったり、もらったりしたとき、また1個丸々は食べ切れないというときに試していただきたい保存方法がこちらです。
カット前のりんごは常温保存でOK
りんごをそのまま保存するときは、冷暗所ならば常温で置いておいてOKです。ネット(フルーツキャップ)をつけたままでもよいですが、表面がかたく傷みにくいフルーツなので、基本的にはそのまま保存してもかまいません。
また、りんごは追熟する果物です。ビニール袋などに密閉しておくと、自身から出るエチレンガスで熟すスピードが早くなりますよ。逆に、熟すのを遅らせたい場合は、袋に入れたままにしないようにしましょう。エチレンガスの影響で、近くの野菜やフルーツが早く腐ってしまうなど影響を与えてしまうことがあるので、置き場所には注意してください。
カットしたりんごは酸化を防いで変色防止
カットしたときは、変色を防ぐために塩水につけておくのが定番ですが、レモン水や砂糖水などに浸してもいいんです。塩水につけるのは、りんごの表面が空気に触れて酸化するのを防ぐことが目的で、レモン水や砂糖水でもそれは可能です。
塩水でりんごに塩を感じられるのが嫌な人は、ほのかにさっぱりとした風味を味わうことができるレモン水はおすすめです。また、スイーツに使うときなどは砂糖水に変えてみてはいかがでしょうか。
りんごの蜜そのものは意外にも甘くない!
りんごといえば、カットしたときに芯の周りに黄色い半透明な色が広がった、蜜が目に見えるものがおいしいイメージがありますよね。けれど、中心の蜜の部分だけを食べたとき、思ったよりも甘くなかった、という経験はありませんか? 勘違いしがちなのですが、りんごの中心に広がる蜜そのものは甘くないんです。
蜜入りはりんごが完熟している証
この蜜の正体は、ソルビトールというもので、糖質アルコールの一種です。ソルビトールは葉の光合成によって作られ、葉から軸を通り、りんごの実の中に運ばれます。そしてソルビトールは実の中で、りんご本来の甘みとなる果糖やショ糖に変換されて蓄積されます。
こうしてりんごの成熟が進み果内に糖が多くなると、ソルビトールを糖に変える能力が低下するため、糖に変化せずソルビトールのまま周りの水分を吸収し、半透明な黄色になって果肉の細胞の隙間に溢れ出していきます。これが蜜と呼ばれる部分です。
つまり、カットしたとき、中心に黄色く半透明の蜜のようなものが出ているりんごは、ソルビトールが果実の中に蓄積され、完熟している証拠ということなんです。だから、蜜入りりんごはおいしいと言われているんですね。
蜜自体が甘く感じない理由
けれどなぜ、ソルビトールが表面に現れた蜜そのものの部分が甘くないのかと言うと、実はソルビトール自体はショ糖や果糖の5~6割程度の甘さしかないからなんです。だから、蜜入りのりんごは甘いけれど、蜜自体はそれほど甘く感じないんですよ。
◆教えてくれたのは:野菜ソムリエプロ・福島玲子さん
ふくしま・れいこ。野菜ソムリエプロのほか、アスリートフードマイスター2級、ジュニア食育マイスター、食の検定1級、ベジフルカッティングスペシャリスト、エコクッキングナビゲーターなど多数の資格を持つ。現在は、“野菜や果物から健康に”との考えを大切に講演・セミナー講師、イベント・セミナー運営サポート、コラム、料理教室、レシピ開発や監修・ジュニアアスリートの栄養指導など、多岐にわたって活動している。https://ryufrei.com/
構成/イワイユウ