10月15日より公開中の岡田准一(40才)主演の映画『燃えよ剣』。司馬遼太郎の代表作を映画化した本作は、幕末という激動の時代を駆け抜けた新選組の姿を描いたもの。この新選組において“鬼の副長”と呼ばれ恐れられた土方歳三に扮したのが岡田です。定評のある身体能力を活かしながら、熱き男たちの物語を率いています。本作の見どころについて、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説します。
“司馬遼太郎×原田眞人監督×岡田准一”のタッグ再び
本作は、司馬遼太郎の同名歴史小説を、映画『日本のいちばん長い日』や『関ヶ原』、『検察側の罪人』などの代表作を持つ原田眞人監督(72才)が映画化したもの。原田監督と岡田がタッグを組むのは、同じく司馬の小説を映画化した『関ヶ原』に続いて2度目のこと。
大きな話題を呼んだ同作に続き、再び“司馬遼太郎×原田眞人監督×岡田准一”のタッグが誕生したのです。新選組副長・土方歳三の生涯を描いた作品は、これまでにもテレビドラマ化や舞台化もされ、1966年に公開された同タイトルの作品に続いて2度目の映画化となりました。
舞台は幕末の京都。武州多摩の“バラガキ”である土方歳三は、近藤勇や沖田総司ら同士とともに「武士になる」という夢を追い、京都へとやってきます。ここで結成されるのが新選組。徳川幕府の後ろ盾のもと都の警護にあたり、不穏な動きを見せる浪士たちを次々と斬っていきます。
歳三は副長ではありますが、局長となる近藤を支え、実質の隊の指揮を執り、新選組を強力な武装組織に育て上げていきます。そうした中、歳三はある一人の女性と運命的な出会いを果たしもします。しかし、やがて時代の流れは“倒幕”へと傾いていくことになるのです。
新選組を調べてから観たほうがより楽しめる
恐らく誰もが一度くらいは耳にしたことがあるであろう、あまりにも有名な小説を映画化した本作。原作を読んだ上で、とまでは言いませんが、可能であれば多少なり新選組について調べてから劇場へ向かうことをオススメしたいところです。
というのも本作は、田舎の出の若者だった歳三が動乱の世で武功を立てて名を揚げ、時代から排されていくまでの生涯が描かれているのです。一人の人間の生涯を描くのですから、それなりの大作映画になって当然ですが、本作は148分の尺に収められています。
映画の148分というと長く感じてしまうかもしれませんが、歳三が経験する事象の数々は複雑かつ壮絶です。148分の中に膨大な量の情報が収められているので、ザックリとでも土方歳三について知っておいた方がより本作を楽しめるのではないかと思います。
鈴木亮平や柴咲コウ、山田涼介ほか注目のキャストが勢揃い
主演の岡田率いる本作は、豪華なキャスト陣によって支えられています。劇中で特にフォーカスされるのが、やはり歳三と同郷の士である近藤勇と沖田総司、それに歳三の想い人であるお雪です。近藤勇役は、救命救急の活躍を描いた『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)にて、主人公の頼れるリーダー役を好演していたことが記憶に新しい鈴木亮平(38才)。
彼のチャームポイントともいえる笑顔は近藤役にも活き、安定感あるリーダー像を作り上げています。
柴咲コウ演じるお雪が作品を豊かに
歴史上の人物の中でも人気の高い沖田総司を演じているのは山田涼介(28才)です。沖田といえば新選組きっての剣豪として知られる人物ですが、刀を抜いていない際の陽気な性格も有名。近藤と並び、厳格な性格の歳三に対して冗談を言える数少ない人物です。これを山田は愛らしく演じており、印象的な彼の笑顔は作品に柔らかさを与えていると思います。
岡田とのやり取りでは、彼らがジャニーズの先輩後輩関係であることも反映されているのかもしれません。そして、本作のヒロインであるお雪を演じているのが柴咲コウ(40才)。剣に生きた歳三が唯一愛した女性であり、彼女の存在が土方歳三というキャラクターに膨らみを与え、作品そのものをより豊かにしている印象があります。
この時代劇において“恋愛要素”を担う柴咲の演技に注目して欲しいところです。
その他、新選組の黎明期の活動に大きく携わった芹沢鴨役に伊藤英明(46才)、放送中のドラマ『最愛』(TBS系)で話題の松下洸平(34才)は、新選組の中でも特に剣の使い手だった斎藤一役を演じています。
ウーマン村本も新選組の監察をユーモラスに
さらに、新選組の後ろ盾となった会津藩主・松平容保役は、本作が映画初出演となった歌舞伎俳優の尾上右近(29才)が演じ、最後の将軍・徳川慶喜役には山田裕貴(31才)が扮しているほか、お笑いコンビ・ウーマンラッシュアワーの村本大輔(40才)が新選組の監察として大活躍した山崎丞をユーモラスに演じています。粒揃いのキャストによって新選組が、ひいては幕末の時代が立ち上げられているのです。