治療法は手術や抗がん剤などから“最適”を探る
がんの治療方法には、外科手術、抗がん剤治療(化学療法)、放射線治療などがあり、単独で実施することもありますが、複数の治療方法を組み合わせることもあります。
外科手術は、がんを完全に摘出できれば短い時間で大きな治療効果が得られて、根治も望めますが、麻酔による事故や術後合併症のリスクがあります。また、手術によってがんを切除できても、がん細胞が血液やリンパを介して他の臓器などに転移しているケースもあります。転移していた場合には、数カ月~数年後に再発してしまうこともあります。
放射線治療という選択肢も
抗がん剤治療は、外科手術と合わせて実施したり、リンパ腫や血液のがん、外科手術を適用しにくいがんなどに対し実施します。ただし、抗がん剤治療単体で根治できるがんは少ないのも事実です。また、よく知られているように吐き気や下痢、貧血や白血球減少などの副作用が起きることもあります。
放射線治療は、手術で除去しにくいがんの細胞を放射線の照射で死滅させられる可能性があります。ただし国内で行える施設がまだ少なく、費用も高額で、麻酔も必要なのでそのリスクもあります。
「アプローチの異なる治療法がそろっていて、それぞれに強みとリスクやデメリットがあります。また、がんに対する積極的な治療は実施せず、がんによって起こっている症状(食欲不振や吐き気など)の治療のみをするというのも、しっかりとした治療のひとつです。
常にこれが最善という治療法があるわけではなくて、がんの種類や進行の度合いなどによって、最適な治療法は変わってきます。獣医さんとよく相談して選んでいただきたいと思います」
愛犬ががんと診断されたとき、飼い主がすべきこと
また、がんと診断された時点である程度、がんが進行していた場合には、病気の根治を目指すのか、苦痛を取り除くのか、一緒にいる時間を長く取ることを優先するのか、治療方法の前に治療の方向性を決めなければいけません。
「ご家庭でよく話し合うことが大切です。ひと昔前までは、<がん=治らない>というイメージもあったかと思いますが、今は実施できる治療方法も増え、根治が目指せることもありますので、悲観しないことが大切です。治療方法や予後について、獣医師としっかり相談し、前向きに考えていきましょう。
その際、具体的な方法や費用、期待できる効果、起こりうる副作用などについて話をしてもらい、その内容をもとに、ご家族で話し合ってほしいと思います」
◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん
獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/
取材・文/赤坂麻実
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