関節の動きが制限されている感じや初動がスムーズにいかない感覚を、よく「こわばり」と表現します。「最近、手指が痛む…」「朝起きたとき、指を動かしにくい」など、手指がこわばると日常生活に支障が生じてしまいます。寒くなるこの時期に増える手指のこわばりについて、原因やこわばりを和らげる生活のポイント、症状の改善が期待できる食べ物について、管理栄養士の小玉奈津実さんから教えてもらいました。
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手指のこわばりが起こる原因とは?
手指のこわばりの症状と原因はどのようなものでしょうか。
手指のこわばりの特徴
手指にこわばりが起こると、指が突っ張ったような感じや、関節がかたくなったような感覚になるといいます。手指の不調を訴える人の9割は女性といわれており、40代~50代の更年期世代が多いのも特徴です。
手指のこわばりが40~50代に多い理由
こわばりの原因は、関節リウマチなどの「疾患」や冬の寒さからくる「冷えによる血管収縮」、そして「女性ホルモンの減少」が関係するともいわれています。関節や腱のまわりにある「滑膜(かつまく)」には、女性ホルモンであるエストロゲンの受容体が存在し、滑膜で女性ホルモンを十分受け取ることによって、関節や腱の健康が保たれています。
エストロゲンの分泌が減ると、滑膜が十分に働かなくなり、関節まわりに痛みやこわばりが出やすくなってしまうのです。一般的に、更年期を迎えると、エストロゲンの分泌が急激に減少するため、更年期に手指のこわばりが出やすい要因の1つと考えられています。
手指のこわばりを楽にする生活のポイント
こわばりを楽にするためにできる、生活の中で意識したいポイントを2つ紹介します。
冷やさない
体が冷えると末端にある手指は、特に関節の血流が滞りやすくなり、痛みやこわばりが生じやすくなります。お風呂で体を温めて全身の血行をよくしたり、カイロや機能性インナーを活用して体温を上げたり、温活を意識した生活をしましょう。
手指の酷使を避ける
普段から指に負担がかかる使い方をしないように、注意して生活することも有効です。
たとえば、スマートフォンを片手で操作すると指に負担がかかりやすいため、両手を使って負荷を分散させることをおすすめします。
手指のこわばりなどの関節症状改善に有効な食べ物
日頃の食事で、栄養面からも手指のこわばりの改善にアプローチしましょう。献立に取り入れたい食材と栄養素について、解説します。
豆腐(大豆製品)
豆腐には、骨の枠組みを作る材料となるたんぱく質が豊富です。また、豆腐の原料の大豆に含まれる大豆イソフラボンから、エストロゲンに似た働きをする「エクオール」という成分が作られるといわれています。
エクオールを作る腸内細菌をもっている人は日本人の2人に1人といわれています。さらに、エクオールを作り出す「エクオール産生菌」が腸内にいても、しっかりと働ける環境でなければエクオールが作られない場合も。エクオール産生菌を元気にするには大豆製品を摂るといいといわれているので、寒い冬は豆腐を鍋や味噌汁などに入れて、意識して食べましょう。
ブリ(青魚)
青魚に含まれるオメガ3系脂肪酸(DHA・EPA)には、抗炎症作用があり、関節痛をやわらげる働きがあるといわれています。
オメガ3系脂肪酸はさまざまな魚に多く含まれていますが、酸化しやすいのが難点。しかし、青魚には酸化を防ぐビタミンEも豊富なため、効率よく摂取できます。栄養価が高いとされる旬の青魚として、冬ならブリをおすすめします。
生姜
関節の痛みは血行促進によって改善される場合があります。生姜に含まれるジンゲロールやショウガオールは血行促進作用が期待できる成分です。
また、生姜には炎症に関わるプロスタグランジンという物質の合成をおさえる働きもあるといわれています。
生姜を細かく刻んで普段の食事にトッピングしたり、生姜チューブを常備して味噌汁や紅茶に加えたりと、毎日の食生活に取り入れるのがおすすめです。
手指のこわばりには漢方薬もおすすめ
手指の不調には、医療機関でも使われている漢方薬を使うのも一手です。漢方薬の中には、鎮痛、血流促進、抗炎症といった作用をもつものがあり、これらは関節痛、神経痛、こわばりなどの改善に役立ちます。
さらに、漢方薬は医薬品として実績がありながら、自然由来の生薬から作られているので西洋薬に比べて副作用が少なく、体にやさしく働くといわれているんです。
漢方薬は体質改善を働きかけることから、繰り返す不調の根本改善ができるので、食事や運動では不調が改善しなかった人でも症状が改善する可能性があります。
手指のこわばりの改善におすすめの漢方薬2つ
・ 疎経活血湯(そけいかっけつとう)
体力中等度(通常の生活をするのに差し障りのない位の体力)で、関節に痛みがあり、ときに指先にしびれがある場合に使われます。冷えている部分を温めたり、部分的に過剰な水分を取り除いたりすることで、しびれや痛みを改善します。
・桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)
胃腸虚弱で体力の乏しい冷え症の人に使われる漢方薬で、体を温め、痛みを発散させる作用があります。手足のしびれやこわばりのほか、関節痛や神経痛、冷えによる痛みに用いられます。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こる場合もあります。自分に合う漢方薬を見つけるためにも、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
手指のこわばり悩んでいるかたは、改善につながる生活習慣や食材を取り入れて見ましょう。
ただし、手指のこわばりが慢性化している場合や腫れや痛みが気になる場合は、関節リウマチなどほかの疾患の疑いがあるので、早めに医療機関を受診しましょう。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小玉奈津実さん
管理栄養士資格取得から食に関する職務に携わってきて15年目。サプリメントの商品開発・外食のメニュー開発・高齢者施設の栄養価計算や献立作成などに従事。現在はサプリメントの監修や食に関する記事の執筆、オンライン栄養指導などフリーの管理栄養士として活動中。さらに、オンラインで漢方を購入できる「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで情報発信もしている。