冬場のかかとのガサガサは靴下やストッキングで隠すことができるので、つい放置してしまう人も多いかもしれません。でも、ガサガサの状態を放っておくと、悪化して治りにくくなってしまうこともあります。さらに、出血したりやニオイの原因になったりと、さらなる悪影響を及ぼす可能性も。そこで、かかとがガサガサになる原因や改善するための方法を生活面でのケア、有効な食べ物や漢方という切り口で、あんしん漢方の管理栄養士・小玉奈津実さんに教えてもらいました。
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かかとのガサガサ(乾燥)の原因と症状をチェック
かかとがガサガサになる原因は主に3つあります。さらに、悪化して痛みが出ると体にも悪影響が出てくる可能性もあるんです。
かかとのガサガサの原因3つ
かかとがガサガサしてしまう原因には、「摩擦」「乾燥」「ターンオーバーの乱れ」の3つがあげられます。
・摩擦
かかとは全身の体重がかかる部位のため、摩擦や圧迫を受けやすくなっています。加えて、かかとは刺激を受けると、皮膚を守るために角質層が厚くなる性質があるといわれています。そのため、過度な摩擦が加わることでより角質に厚みが増し、ガサガサしやすくなります。
とくに、高いヒールや硬い靴を普段から履くことの多い人は、かかとに摩擦や圧力が加わりやすく、かかとの角質が厚くなりやすいため注意が必要です。
・乾燥
かかとは皮脂腺がなく、油分が少ない部位。そのため、乾燥の影響を受けやすいといえます。外気が乾燥する冬は、ガサガサが悪化しやすい季節なのです。
・ターンオーバーの乱れ
冬は冷えなどで血行不良になりやすく、肌のターンオーバーが正常に機能しないこともあります。ターンオーバーがうまくいかず、かかとに古い角質が蓄積することで硬くなり、さらに乾燥しやすくなるという悪循環に陥ってしまうことがガサガサの原因になりえます。
かかとのガサガサが悪化すると体の不調にもつながる
悪化がすすむと、かかとの皮膚にヒビが入って割れて、強い痛みや出血を生じる可能性があります。そこまで悪化してしまうと、自力では治りにくくなってしまいます。かかとが痛むと、それをかばうために、腰やひざに負担がかかってしまうことも。さらに、かかとの角質にひそむ雑菌と汗が混ざり、ニオイの原因になる可能性もあります。
人目につかない部位だからといって放置せずに、毎日少しずつでも、かかとをケアすることが大切です。
かかとのガサガサを改善するケアのポイント
かかとのガサガサを改善するためには「血行をよくして保湿する」「かかとに刺激を与えないこと」の2点が重要です。
かかとを温めて、しっかり保湿
かかとの角質を柔らかくするには、温めることが効果的です。40℃くらいの湯温で入浴や足浴をするのがおすすめですが、時間がないときは蒸しタオルで温めてもOKです。温めながらガサガサの気になる部分をやさしくマッサージすると、肌のターンオーバー改善にもなるので、あわせて行うといいでしょう。
入浴後はとくに乾燥しやすいので、十分に保湿するのが大切です。 保湿効果の高い尿素入りのクリームやワセリン、オリーブ油などを塗って、乾燥を防ぎましょう。
かかとに刺激を与えない
角質層の蓄積はガサガサの原因となります。角質層を厚くしないためには、かかとになるべく刺激を与えないことが大切です。
裸足で冷たいフローリングを歩いたり、合わない靴を履いて負担をかけたりすると、かかとへの刺激になってしまいます。冬は裸足を避け、靴は自分に合ったものを選び、クッション性の高いインソールを使って刺激への対策をしましょう。
かかとのガサガサに有効な栄養素・食べ物とは?
食べ物に含まれる栄養素の中には、肌の健康維持に役立つものがあります。薬ではないので即効性は期待できませんが、肌にいい食べ物を普段から食事に取り入れることで、乾燥しづらい体を目指せます。
アボカド
アボカドが美容や健康にいいのは有名ですが、実は、かかとのガサガサの改善にも役立ちます。それは“森のバター”とも呼ばれるほど、良質な脂質が多く含まれているからです。果肉の約20%を占める脂質のほとんどが、リノール酸やα-リノレン酸などの不飽和脂肪酸です。
不飽和脂肪酸は、肌の潤いを保つ働きを担うセラミドの産生をサポートするといわれており、かかとの乾燥改善に役立つと考えられます。また、アボカドには肌の血行促進やターンオーバーを正常に保つのに役立つビタミンEも豊富に含まれています。
春菊
冬に旬を迎える春菊は、栄養価が高い緑黄色野菜の1つです。肌の健康に役立つビタミンA、C、Eの3つのビタミンが豊富に含まれており、ガサガサの改善にも効果が期待できます。
ビタミンAは肌に潤いを与え、ターンオーバーのサイクルを整えるといわれており、ビタミンCは肌の弾力を保つコラーゲンの生成を促すといわれています。また、肌の血行促進効果があるとされるビタミンEは、市販のかかと用クリームにもよく配合されています。
春菊の香り成分の「αピネン」は胃腸の調子を整える効果が期待でき、潤いに必要な栄養素の消化吸収のサポートもします。
牡蠣
牡蠣には鉄、銅、マンガン、カルシウムなどのミネラルが豊富に含まれていますが、その中でも注目したい成分が「亜鉛」です。牡蠣の亜鉛の含有率は、全食品中トップといわれています。
亜鉛は、細胞の新陳代謝を促進し、皮膚の再生をサポートするはたらきがあるため、かかとのガサガサの改善に効果的と考えられます。また、皮膚の材料となるたんぱく質も豊富に含まれています。
かかとのガサガサには皮膚の乾燥に効く漢方薬もおすすめ
かかとのガサガサの原因となる皮膚の乾燥には、皮膚科の治療でも使われている漢方薬がおすすめです。
漢方では、血の巡りが悪くなると、皮膚に栄養が行き渡らなくなり、皮脂や汗の分泌低下が起こり、皮膚の乾燥をもたらすと考えます。そのため、血や気の巡りを整えて乾燥肌に作用する漢方薬をかかとのガサガサ改善に用います。
さらに、漢方薬は自然由来の成分でできているので体への負担が少なく、不調の起こりにくい体質へナチュラルに改善していくことができるのです。
かかとのガサガサにお悩みの人におすすめの漢方薬2つ
皮膚の乾燥に用いられるおすすめの漢方薬は主に2つあります。
・当帰飲子(とうきいんし)
当帰飲子は乾燥肌の定番ともいえる漢方薬です。肌を整えるための栄養を補い、血(けつ)や水(すい)の巡りをよくする働きをします。
・四物湯(しもつとう)
四物湯は血と水の巡りを整え、さまざまな組織に栄養を届けるのを助ける漢方薬です。冷えを感じる、疲れやすい、肌が炎症を起こしているという場合にも用いられます。
漢方薬を始めるときの注意点
体質に合っていない漢方薬をのむと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こる場合もあります。自分に合う漢方薬を見つけるためにも、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
かかとは見えない部位ということもあり、ケアも怠ってしまいがちですが、悪化するとかかと以外のところにも悪影響を与えてしまいます。早めの対策を心がけましょう。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小玉奈津実さん
管理栄養士資格取得から食に関する職務に携わってきて15年目。サプリメントの商品開発・外食のメニュー開発・高齢者施設の栄養価計算や献立作成などに従事。現在はサプリメントの監修や食に関する記事の執筆、オンライン栄養指導などフリーの管理栄養士として活動中。さらに、 漢方のプロがAIを活用して選んだ自分に合う漢方をオンラインで購入できる「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで情報発信もしている。